4時間半上映の黒沢清監督「贖罪」ベネチアで拍手喝采!全てが詰まった作品と自信!
第69回ベネチア国際映画祭
黒沢清監督のWOWOWドラマ「贖罪」が、現地時間30日、イタリアで開催中の第69回ベネチア国際映画祭で公式上映された。ドラマ5話分を一挙270分に再編集して上映し、黒沢監督は共に濃密な時間を過ごした観客たちから拍手喝采を浴びていた。また上映後には、同映画祭オリゾンティ部門で審査員を務めている映画『CUT』のアミール・ナデリ監督が駆け付け、黒沢監督を祝福していた。
上映後、黒沢監督の顔は紅潮していた。270分版「贖罪」は、音響や色調を映画用に新たに調整したもの。黒沢監督も客席数1,700の大スクリーンで観るのは初めてだったそうで「全てデジタルでの編集はまだフィルムより安定していないのでドキドキしながら観ていましたが、音も映像もテレビで観るよりずっと素晴らしく、『映画だとこうなるのか』とうれしくなりました」と声を弾ませた。
黒沢監督が同映画祭に参加するのは『大いなる幻影 Barren Illusion』(1999)、『叫』(2007)に続いて3度目。前回の『叫』でベネチア入りした際に、『トウキョウソナタ』(2008)の企画を持ち掛けられ、その後同映画がカンヌ国際映画祭ある視点部門で審査員賞受賞など映画祭を総ナメにした経緯がある。その『トウキョウソナタ』で夫婦を演じた小泉今日子と香川照之が、「贖罪」で再共演しているとあって黒沢監督も感慨深げだ。
「二人が共演する5話目が原作から離れて対決するわけですが、どこか僕自身の、これまでの作品の先を探るような作品になったと思います。それに『大いなる幻影』の唯野未歩子も出演していますし、(自身の作品の)全てがこの作品に詰まっていますね」
「贖罪」は今後、トロント、サン・セバスチャン、釜山、ナント3大陸と国際映画祭を巡回することが決まっている。黒沢監督は「『トウキョウソナタ』からブランクができてしまい、肩慣らしにと挑んだのが『贖罪』でした。そのテレビ作品がここまで大きくなるなんて感無量です。これで堂々と僕のフィルモグラフィーに『贖罪』を入れてもいいのかなと思っています」と胸を張った。(取材・文:中山治美)
「贖罪」はDVDが発売中(税込み価格:8,990円) また9月7日まで東京・渋谷ユーロスペースで特別上映開催中 270分版は第34回PFF招待作品部門で上映