白人だらけのアカデミー賞に怒りの声
第88回アカデミー賞
第88回アカデミー賞のノミネーションが発表された現地時間14日、「#OscarsSoWhite」というハッシュタグがTwitterのトレンドに入った。同ハッシュタグと共に投稿されたツイートは、「俳優部門にノミネートされているのは白人だけ」「黒人や黒人についての映画はノミネートできないのか……」と怒りをあらわにしている言葉であふれている。
アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーに関しては、女性監督や黒人がノミネートされづらい古い体制を変えるべきだと、以前から言われ続けてきた。第86回アカデミー賞で映画『それでも夜は明ける』(スティーヴ・マックィーン監督)が作品賞を受賞した際には、初めて黒人監督が作品賞を受賞したと話題になったほどだ。まず80年以上も続けてきた歴史の中で、“初めて”ということ自体が異様なことのように思われる。しかし、映画芸術科学アカデミー側も意固地になって体制をそのままにしようとしていたのではない。次こそはさまざまな人々がノミネートできる多様なアカデミー賞にしたいと、昨年には300人を超える映画関係者をアカデミー会員として招待していた。
しかし結果ノミネートされたのは、昨年に続き監督賞は男性のみ。主演男優賞、主演女優賞、助演男優賞、助演女優賞は白人のみに。特に今年はアカデミー賞の前哨戦と呼ばれる英国アカデミー賞やゴールデン・グローブ賞でノミネートされた『ビースト・オブ・ノー・ネーション』のイドリス・エルバや、『コンカッション(原題)』で高い評価を浴びているウィル・スミス、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』が公開され波に乗っている『エクス・マキナ(原題) / Ex Machina』のオスカー・アイザックなど、海外映画サイトで候補入りが確実視されていた俳優陣が軒並みノミネートを逃したことに、インターネット上で悲嘆の声が上がっている。
この事態に Washington Post や The Hollywood Reporter などの各メディアも反応。アフリカ系アメリカ人批評家協会(AAFCA)のジル・ロバートソン会長は「全く同じシナリオを見ているようです。しかしより攻撃的になった気がします。……協会には変革が必要です。毎年同じ老馬に鞭を打つのではなく」と USA TODAY などに語っている。
Los Angeles Times は、女優デイジー・リドリーと黒人俳優ジョン・ボイエガのコンビが中心となった『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』が、社会現象を巻き起こすほど大ヒットし、ラップで黒人差別に立ち向かったヒップホップグループN.W.A.の姿を描いた『ストレイト・アウタ・コンプトン』が音楽伝記映画としては歴代1位の全米興行収入をたたき出すヒットを生んだことに触れ、「映画業界は白人男性だけが観客を劇場に呼び込んでいると勘違いしている。またその現状の認識を変えることに興味がないのだ」と主張。また『ストレイト・アウタ・コンプトン』が白人の脚本家が書いた脚本は脚本賞にノミネートされたものの、作品賞では候補入りできなかったことに、人種差別の背景が見えると指摘している。
だが、今回ノミネートされた俳優や作品が、質の悪い演技やものだったかといえば全くそうではない。『クリード チャンプを継ぐ男』で第73回ゴールデン・グローブ賞助演男優賞に輝いたシルヴェスター・スタローンや、『キャロル』で各映画賞を席巻しているケイト・ブランシェット&ルーニー・マーラなど素晴らしい俳優たちがノミネートされている。悲願のオスカー初受賞を期待されているレオナルド・ディカプリオも、自身5度目となる男優賞ノミネートを達成した。現地時間2月28日にロサンゼルスで行われる授賞式で、どのようなドラマが起こるのか楽しみだ。(編集部・井本早紀)