高梨臨、女優は本物の夢…全て変えた巨匠との出会い
NHK連続テレビ小説「花子とアン」の社長令嬢、今年放送されたドラマ「不機嫌な果実」では不倫にはまっていく悪女を演じるなど、近年、幅広い役柄で人々を魅了している女優・高梨臨が、自身の女優人生や私生活を語った。
最新映画『種まく旅人~夢のつぎ木~』では、兄の夢だった新種の桃「赤磐の夢」の品種登録を成し遂げるために、ひた向きに生きる女性を好演。日本の第一次産業を応援する『種まく旅人』シリーズ第3弾となる本作は、岡山県・赤磐の桃農家を舞台に、夢を持つことの大切さや、持ち続けることの難しさが描かれている。
高梨が演じる彩音は、女優を目指し上京したものの、他界した兄の夢をつなぐために、新たな夢に向き合う女性だが「わたしも小さいころから色々夢がありました。最初は(『美少女戦士セーラームーン』に登場する)セーラーマーズになりたくて、そのあとは漫画家にもなりたいって思ったんです。諦めては、また新しい夢を見つけるという感じでした」と自身が演じたキャラクターとの共通点を述べる。
幼少期に色々な夢を持っていたという高梨は、スカウトをきっかけに女優の道へ。「芸能界は華やかな世界なので、ときめきや憧れはあったのですが、夢なんて立派なものではなく最初は興味本位でした。当然『こうなりたい』と思い描いていたビジョンもなかったし、作品に出演できることがただうれしいというだけだったんです。でも続けていくうちに責任感や、やりがいも出てきて、色々な目標や夢を持てるようになりました」。
女優という仕事にやりがいを見出すにつれ、出演作品も増えていった。さらに演じるキャラクターも多岐にわたり、どんな役でもしっかり演じ切れる若手実力派女優という評価を得る。そんな彼女が、ターニングポイントになったという作品が、イランの巨匠アッバス・キアロスタミ監督がメガホンをとった『ライク・サムワン・イン・ラブ』だ。
「価値観が変わった作品です。それまでハリウッド映画や邦画しか観てこなかったのですが、この作品でカンヌ国際映画祭に連れて行ってもらい、幅広いジャンルの映画に興味を持つようになりました。またキアロスタミ監督は、究極にナチュラルな芝居を求める方。お芝居をするのではなく、そこで呼吸できているのか……。そうしたことを時々思いださせてくれるんです」。
女優として着実にキャリアを積む一方で、フルマラソンを完走するなど、アクティブな活動も目立つ。「好奇心が旺盛なので、やったことないものにチャレンジするのは好きですね。すごくプライベートなことを言うと、いまは富士山に登りたいというか、ご来光をどうしても見たいんです」と目を輝かせた。
「今回は農業に従事する役をやらせてもらいましたが、自分が出会ったことがない世界に接することができるのはうれしいです。漫画家になりたくて諦めた過去があるので、漫画家の役なんかもやってみたいです」と語った高梨。公私ともに高いアンテナを張り、色々なものを吸収しようとする力こそ、彼女の最大の魅力なのかもしれない。(取材・文:磯部正和)
映画『種まく旅人~夢のつぎ木~』は全国公開中