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ポゼッサー (2020):映画短評

ポゼッサー (2020)

2022年3月4日公開 103分

ポゼッサー
(C) 2019,RHOMBUS POSSESSOR INC, / ROOK FILMS POSSESSOR LTD. All Rights Reserved.

ライター5人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.6

相馬 学

暴力やエロ以上に、内面の崩壊が強烈!

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 バイオレンスとセックス。ビジュアル的に強烈なインパクトがあるが、ダリオ・アルジェント作品に影響を受けたという前者は血のりの量もハンパなく、その手の描写が苦手な向きは閲覧注意。

 とはいえ、これは単なるジャンル映画ではない。ひとりの人間に宿るふたつの人格。SF的な設定だが、人にはこのような狂い方もあると納得させるだけの凄みが宿る。クローネンバーグJr.の才腕の深化。

 父デビッドの作品を例に出すと、『戦慄の絆』と『イースタン・プロミス』の融合のよう。クローネンバーグ遺伝子が狂い咲く逸品。感情がどんどん死んでいくヒロインの表情も鮮烈で、その内なる崩壊に、見ているこちらも打ちのめされる。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

父クローネンバーグの影響も色濃いカルトなSF映画

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 お久しぶりとなるブランドン・クローネンバーグ監督の長編映画第2弾。とあるハイテク企業に所属するヒロインは、特殊デバイスを用いて他人の脳内へ侵入し、その人物の意識を支配してターゲットを殺害する暗殺者。だが、重大なミッションで原因不明の不具合が発生し、彼女は他人の体から出ることも意識を支配することも出来なくなってしまう。シュールな演出とスタイリッシュな映像美、そして徹底した人体破壊描写は、さすがクローネンバーグ・ジュニア。設定は『イグジステンズ』にちょっと似てるが、しかし雰囲気は『ビデオドローム』を彷彿とさせる。恐らく好き嫌いは極端に分かれるだろうが、脳内意識世界の描写など非常に面白い。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

父親のDNAを受け継いた、あざとさ

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

特殊なデバイスで他人の人格を乗っ取り、暗殺ミッションを遂行するSFノワール。『攻殻機動隊』『インセプション』など、至るところに既視感はあるものの、そこはブランドン・クローネンバーグ監督作。過激なバイオレンス&セックス描写に、まるでフランシス・ベーコンの絵画のような衝撃的なイメージショット。そして、寒々しく無機質な空気感……。前作『アンチヴァイラル』よりも しっかり父親のDNAを受け継いだカットが連続する。ただ、あえて組織の上司役に『イグジステンズ』のジェニファー・ジェイソン・リーを配したり、どちらにも受け取れるラストなど、“あざとさ”が鼻につくかどうかで、評価は変わってくるだろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

ダークでねじれた悪夢体験

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

監督2作目にして、ブランドン・クローネンバーグはますますフィルムメーカーとしての腕を上げた。だが、父デビッドのDNAも明らか。クリストファー・ノーランが手がけたらスマートな娯楽大作になりそうな、テクノロジーが絡むこの画期的なコンセプトは、彼の手により、ニヒリズムを感じさせるねじれた映画になった。バイオレンスも強烈なら、セックス描写も遠慮がない。とくにラストは身も蓋もないほど残酷で、誰にでもおすすめできる作品とは決して言えない。コンセプト同様、ビジュアルも斬新。自分までもが悪夢を見ているような感じになる。アンドレア・ライズボローの名演技が、この独特の世界を完成させる。

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平沢 薫

物質と非物質が溶け合っていく

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 特殊な装置を使い、自分の意識を他人の身体に侵入させて意識を乗っ取り、その身体で殺人を行う特殊技能者。彼女は、支配したはずの他人の意識と自分の意識の境界を見失っていく。"意識"という非物質的なものを扱いつつ、それを"身体感覚"と"奇妙なデザインの装置"に関連づけて描く志向性、有機物と無機物が溶け合う感覚が、デヴィッド・クローネンバーグ監督作を連想させるが、監督は彼ではなく、その息子ブランドン。大掛かりなセットを使うことなく、ただ椅子があるだけの空間を、その椅子の造形と照明と構図で異空間に変貌させる。背景の説明などの不要なものをすべて廃し、自分のスタイルのみ厳守して、独自の世界を構築している。

この短評にはネタバレを含んでいます
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