バブル (2022):映画短評
バブル (2022)ライター4人の平均評価: 3.3
“企画・プロデュース:川村元気”が裏目に出た
世界戦略的に、「人魚姫」モチーフというのは悪くないのだが、なにしろ虚淵玄とは思えぬほどの脚本の薄っぺらさが目立つうえ、『天気の子』を筆頭に過去作の寄せ集めという印象が強すぎて、インパクトに欠ける。ただ、躍動感溢れるパルクール・アクションに関しては、荒木哲郎演出が炸裂しまくりということもあり、映画館で体感する価値アリ。そのため、そんな欲張らずにスポ根縛りにするか、キャラクターに深みが出るTVシリーズにした方が良かった感もするが、「これだけのクリエイターを集めながら、この程度の仕上がり!?」という驚きはデカい。“企画・プロデュース:川村元気”が裏目に出た一作だ。
超美麗なビジュアルで描かれる廃墟東京のボーイ・ミーツ・ガール
世界に降り注いだ謎の泡によって崩壊&水没&重力異常を来した東京を舞台に、パルクールのような競技「バトルクール」のクールなエースと猫みたいな謎の少女のボーイ・ミーツ・ガールが超美麗なビジュアルで描かれる。アフター『天気の子』のような世界で「人魚姫」を骨子としたストーリーが繰り広げられるのだが、バトルクールのようにストレスフリーで軽やか。それでいてエモーショナルなラストは、きっと制作陣の狙い通りなんだろう。Nintendo Switchでこの世界をベースにしたゲームが出たらプレイしてみたい。ヒロインのデザインが80年代テイストなんだから、もっとヴェイパーウェイヴみたいな曲も聴きたかった。
大空間の中を跳躍し疾走する快感を映像化
重力が異常な状態になった廃墟の東京で、少年たちが、建物や地形を活かして走り、跳び、登って障害物を乗り越えて進むスポーツ、パルクールに興じる。彼らが、空中に浮かぶ物体を蹴りながら、空間を自在に高速で移動してく時に感じている、開放感、疾走感、速度の快楽が、映像で表現されて、伝わってくる。色調やキャラデザインは個人的には好みではないが、それらがこの運動の描写の気持ちよさを損なうことはない。
さらにこの映画は、そうした身体的な快感を、宇宙の膨張と収縮という時間的にも空間的にも巨大なものと、粒子という微小なもの、そして渦という運動と結び付けようとする。その壮大なイメージが心地よい。
弾け、跳び、駆ける
ある有名な童話をもとにした青春ラブストーリーにして、SFアクション大作。
重力に異常を来している東京でのパルクールという、アニメーション以外では表現しようがない世界観を作り上げられたことがまず大きいです。
監督・脚本・企画・キャラクター・音楽などなど見渡せば現在の日本のアニメーションのトップを担う名前がズラリとそろっているので、当たり前と言えば当たり前ですが、作品のスピード感とリズム感がとても感情移入しやすくて流石の一言です。
見たことがある東京がどう変わっていくかを、できるだけ大きな画面で、是非。