ブロンド (2022):映画短評
ブロンド (2022)ライター2人の平均評価: 2
演技は大健闘…も、ひたすら沈痛な気分へと陥ってしまう
スカヨハが降りたモンロー役を果敢に受け継いだだけあり、アナ・デ・アルマスの“そっくり演技”は異常レベル。有名シーンや写真の再現度も驚く。メイクの薄いシーンはそれほど似てないが、表情でカバーしており、まさに「憑依」の名演技。ただ不必要にヌードが多いのは大きな謎。文字どおり裸のモンローを監督は描きたかったと推察されるも、ハリウッド伝説スターの光と闇、その闇の部分だけがどんどん強調される作り。実際の彼女は闇に囚われ続けていたかもしれないし、原作に忠実なのだろう。だからこのアプローチも理解するが、それで2時間47分は明らかに長すぎ。現実と妄想、幻が交錯する演出も、要所でやってくれれば効果的だったはず。
長い夢を見ているよう
アンドリュー・ドミニクが普通の伝記映画を作りたくなかったのは明白。印象派的な構成である原作本をビジュアルで表現してみたかったのだろう。そんな今作は、モノクロとカラーが入り混じり、時には映像が溶けたり、ぼけたり、さまざまなシーンのコラージュのよう。最初から最後まで夢を見ているような感じだ。そこで描かれる主人公マリリン・モンローも、ふわふわして芯がない。今作でわかるのは彼女が不幸で惨めだったことと、男たちが最悪だということだけ。そこもドミニクの目的ではなかったのだろうが、彼女が搾取されたことや、ミステリアスな最期についても立場を取ることをしない。スタイルが重視された、欲求不満を感じさせる映画。