ブルー きみは大丈夫 (2024):映画短評
ブルー きみは大丈夫 (2024)ライター3人の平均評価: 3.3
オリジナル吹替キャストが豪華すぎる
原題「IF」が示すように、『屋根裏のラジャー』にも似たイマジナリー・フレンドとパートナーを繋ぐファンタジー。悪人が出てこない、紛れもない“いい話”で、ヤヌス・カミンスキーの撮影が冴えわたり、ラストのオチも効いている。しかも、ブルー役のスティーヴ・カレルや本作が遺作となる老いたクマ役のルイス・ゴセット・ジュニアのほか、オリジナル吹替キャストが豪華すぎるのだが、キャラちょっと多すぎる問題が勃発。芸達者な役者を集める強い人脈はあっても、それをフルに使いこなせないあたり、ジョン・クラシンスキー監督は『最高の家族の見つけかた』の頃から、あまり変わっていない気もする。
大きなモフモフに癒される
子供時代にその子供だけに見えていた"お友だち"は、子供に忘れられると恐ろしいモノになってしまうのがホラー映画の定番だが、発想を転換、そんな存在を思いっきり全面肯定する映画を撮るところが、監督・脚本のジョン・クラシンスキーの個性であり価値観なのだろう。そういう映画なので、「トゥルー・ディテクティブ ナイト・カントリー」でも「キリング・イブ/Killing Eve」でも怖い人を演じたベテラン女優フィオナ・ショウが、カワイイ人に見えてくる。
ブルーのもふもふ感は、見ているだけで癒し効果抜群。ユニークなお友だち達の愉快なデザインも楽しく、彼らの声を演じるのが人気俳優なのでそこも要チェック。
「大人こそ泣ける」の宣伝文句に偽りナシ
トトロを連想させるブルーをはじめ、IF(イマジナリー・フレンド)のキャラクターデザインからして、カラフル&ポップな楽しさを予想させ、実際にそんなムードを基本にしつつ、中盤、後半と人生経験豊富な大人の観客のツボを突いてくる。不覚な瞬間に感動させる作劇に、監督クラシンスキーのセンス炸裂。ホラーもうまく撮ったが、王道のエンタメにむしろ本領があるような。
ミュージカル黄金期など名作へのオマージュ、美術やアイテムにノスタルジーの香りを濃厚にまぶすあたりも通好み。俳優では、デッドプールとは逆方向の“ちょっと変な感じ”を出すライアン・レイノルズに注目しながら観ると、ひときわ深く、優しく、美しい逸品と化す。