ザ・ウォッチャーズ (2024):映画短評
ザ・ウォッチャーズ (2024)ライター4人の平均評価: 3
父とは違う視点を持った楽しみな才
シャマランの愛娘イシャナの監督デビュー作と聞くと、いろいろと想像は広がるところだが、ひとまずそんな先入観を忘れて観て欲しい。
スリラー演出の点では確かに父譲りで、クリーチャー描写をはじめ絵的にハッとさせられる部分もある。そこに寓意を宿らせ、きちっとオチを付けるのが本作の強み。ヒロインのトラウマの深さをジャンル映画に転化し、探求した作品というべきか。
いずれにしても、主人公の視点と監督の視点がシンクロしているのは、シャマラン父の作品では滅多に起こらない事象。作家性を語るにはもう少し時間が必要だが、とりあえずイシャナの今後の作品を観てみたくなった。
父の「センス」を受け継ぎ、見せ方、ドッキリ仕掛けはすでにプロ
父親の作品でセカンドユニットの監督も務めただけあって、映像の切り取り方、音の入れ方、衝撃の与え方など基本は万全。ベテランの作品を観ている安心感。森のムードも重厚で不気味。強いられる異常なシチュエーション…と雰囲気作りは長けている。ドンデン返しというより、一瞬、一瞬、まっさらな体験に向き合う感覚。
ただ題材(原作)が映画化にかなりハードルが高かったように察せられる。父の作品にも、説得力はないがネタとして面白く、ゆえに演出が突っ走っても許せるものが多かったが、本作は登場人物の行動原理や、相手の目的、時間の経過、核心となる恐怖など描き方の粗っぽさが際立ち、まぁそこも父のテイストを継いでる…とも。
新たな血脈
M・ナイト・シャマランの娘イシャナ・ナイト・シャマランの長編デビュー作ということで、どんなモノかと思いましたが…。血は水よりも濃いと言いますが、まさにこの父親にしてこの娘ありということを強く感じさせる一本でした。イシャナ・ナイト・シャマラン自身もダークファンタジー路線がお好みということで、ジャンルを楽しんでいるのが伝わってきます。2世監督も珍しくなくなりましたが、ジャンルの新陳代謝にもなりますので、イシャナ・ナイト・シャマランもこれからどんどん映画を撮って欲しいなと思うところです。
イシャナ・ナイト・シャマラン監督がサプライズ・ホラーに挑む
監督・脚本は、M・ナイト・シャマランの娘、イシャナ・ナイト・シャマラン。彼女はこの監督デビュー作で、父の映画を超えることに挑んでいるのではないか。
原作小説はあるが、父の映画との共通点は多い。ホラーであり、サプライズがあり、映像が美しい。アイルランドの深い森は、異色ホラー『LAMB/ラム』のイーライ・アレンソンが撮影している。しかし、物語が最後に行き着くところ、映画を見終わった後に残るものの感触は、同じではない。父の映画はサプライズの切れ味が印象に残るが、この映画は人間が抱く希望のようなものの気配を残す。よく似ているのに違う----それがこの監督が目指したものなのかもしれない。