インサイド・ヘッド2 (2024):映画短評
インサイド・ヘッド2 (2024)ライター4人の平均評価: 5
思春期の物語だけど、私たちの物語でもある
今度のテーマはズバリ「思春期」。感情の数が一気に倍になることで思春期の複雑さを表現している。ティーンの揺れる感情と行動の裏側を見事に絵解きしているが、これは同時に私たちの物語でもある。人はあるとき突然、友情や人としての優しさを忘れ、打算的な行動や利己的な行動を取ったり、他人を貶めたりすることがある(よくいるでしょ?)。それはある一つの感情に支配されて行動してしまうからだということが、この作品を見るとよくわかる。物語を盛り込みすぎず、シンプルにしているので非常に見やすく、同時に心の問題についても考えをめぐらすことができる。高難度の役割を見事に果たした日本語吹替版の小清水亜美にも拍手。
はたらく感情、心のマネジメント
「心のモデル」を擬人化により可視化する着想の点で、前作(2015年)は日本の『脳内ポイズンベリー』に少し先んじられていた皮肉があった。だがアップグレードを果たした今作は圧巻の出来。少女ライリーがハイスクール入学を控えた13歳という思春期到来の設定になり、心を構成する要素=キャラクターは突然ほぼ倍に!
今回、心の司令塔で操縦桿を握るのはシンパイ(Anxiety)。次々と不安なヴィジョンを発信して自意識過剰な状態に。こういった混乱との付き合い方など我々にも学びがたくさんある。さすが米国は心理カウンセリングの国。メンタルヘルスの自己管理問題が根付いた文化の上にこの傑作も、メガヒットもあるのだろう。
大人も共感でき、いろいろ気づかされる傑作
やはり13歳の少女についての「私ときどきレッサーパンダ」や、やや下の年齢の少年が主人公の「あの夏のルカ」も素晴らしかったが、心理学者にしっかりリサーチをして挑んだというこの映画もまた、思春期を迎えた少女の心理を見事につかんでいる。新たな感情のキャラクターはどれもユーモラスで魅力的。トラブルメーカーである「シンパイ」を完全な悪者にしていないところも良い。現実として、私たちは不安という感情ともうまくつきあっていかなくてはならないのだから。歳を取るにつれて「ヨロコビ」の出番が減っていくということにも気づかされ、自分で積極的に見つけていくべきなのだと思った。そんなふうに大人も共感できる傑作。
高難度チャレンジをシンプルドラマで成功に。映像クオリティ究極
主人公ライリーが高校入学前という微妙なお年頃なので、感情キャラの数もほぼ倍増。おなじみ面々のマシンガントークもあって冒頭こそ面食らうも、こちらの頭で整理された瞬間からスムーズに展開に没入できる。その最大の要因は、ライリーのドラマを前作と比較できないくらい「シンプル」にしたからか。感情の複雑化との計算されたバランス感覚に脱帽。
思春期の葛藤を描きながらも、新たな感情によって、さらに上の世代も自身に思い当たる過去、経験をどこかで重ねてしまう。そして自分の性格を検証する…。そんな魔力も前作以上。
現実パートの映像では、人物たちの表情などで信じがたいクオリティが達成され、素直に目で陶酔できるのも美点。