マミー (2024):映画短評
マミー (2024)ライター2人の平均評価: 4
問題提起のドキュメンタリーでありながら犯罪映画を見る気分に
マスコミ(と一般人)の異常なほどの過熱ぶり、地方都市の閉鎖性、一方的な捜査と化学的な検証によって覆る証拠、証言を拒否する関係者たち……。「毒婦」とまで称されてセンセーショナルに報じられた林真須美被告は冤罪じゃないのか。そう思わせる一方で、林夫婦の保険金詐欺の実態が描かれると思わず絶句してしまう。そして事件にのめりこんでダークサイドに足を一歩踏み込んでしまう二村監督。問題提起を行うドキュメンタリーでありつつ、強いストーリーテリングと映像によって思わず犯罪と家族をテーマにした韓国映画を見ているような気分になる。エンターテイメントとして成り立っているからこそ、本作は力が強い。
有罪/無罪、死刑にすべきか…など迷路に誘う必見の問題作
いくつもの側面で「恐ろしい」と戦慄をおぼえる一作。
まず、当時リアルタイムでニュースを見聞きしてた人は改めて事件の異様さが甦ってくる点。カレー事件はもちろん、そこに至る前の保険金詐欺の部分はちょっと呆気にとられる衝撃度だ。
そしてもうひとつ、「林眞須美は絶対的に犯人」という思い込みが、激しく揺さぶられる点。死刑を確定させた国、および証拠を示した科学者に対し、あくまで冷静に疑問が積み重ねられ、あのホース放水の印象もふまえ「やっぱ有罪」「いやもしかして無罪」と心の振幅が止まらない。
一部、長すぎるシーンもあり、全体的な整理の必要も感じつつ、問題提起という本作の意義、および監督の執念が上回る。必見。