きみの色 (2023):映画短評
きみの色 (2023)ライター2人の平均評価: 4
名曲「水金地火木土天アーメン」の生成。青春の生成過程!
劇中の(青春の片隅で揺らぎ悩む)少女たちと少年のごとく、監督:山田尚子、脚本:吉田玲子、音楽監督:牛尾憲輔がその総意を代表しスリーピースバンドを組んで互いの「唯一の個」を重ね奏でたかのような作品。それは言の葉にぴったりとは包むことのできぬ感情を、人肌の声を出す電子楽器テルミン同様、波動の音色で紡いでゆく。
丁度、配信が始まった山田監督の短篇『Garden of Remembrance』もそうなのだが、心のやわらかい部分に触れてきて、いつまでも浸っていたくなる。それにしてもシスター役のキャラクターボイス、『違国日記』に続いて“彷徨う子供の時間”を見守る新垣結衣のマスター感溢れるあの声の肌理よ!
音色の映画
音”色”という表現がありますが、本作はまさにそんな音の色を描いた映画。主人公はいわゆる共感覚の持ち主ということで良いのだと思います。共感覚の持ち主の視点から見えている世界を映像化するのはなかなか難しいところだと思いますが、そこでアニメーションという手法を選んだのは良策でした。ストーリーは青春という大きな物語の一ページのほんの欠片の部分のお話です。しかし、何事にも代えがたく、将来、振り返って見た時にとても大切だったと思う事柄でもあります。新垣結衣演じる先生も素敵でした。劇中歌も耳に残ります。