SUPER HAPPY FOREVER (2024):映画短評
SUPER HAPPY FOREVER (2024)ライター2人の平均評価: 4.5
凝視され呈示される、忘れられぬ「永遠と一日」
伊豆のリゾートホテルで展開する、5年間のタイムラグを立体化した人間交差点。主人公然としている佐野弘樹を筆頭に、蠢き、まろぶ登場人物たちの“心の空白”は、何かで埋められたり埋められなかったり。五十嵐耕平監督はその5年の時間を通して、忘れられぬ「永遠と一日」を凝視し、我々に呈示する。
無くなってしまった「赤い帽子」。「La Mer(海)」が元歌の「Beyond the Sea」。そんなディテールでもって時空間が繋がってゆく面白さ。青い海と空がもっぱら視界を覆うのだが、例えば深夜のカップル、コンビニ前で座って食すカップ麺にHAPPY FOREVERは宿る。SUPERな共体験に変えるのは……あなた。
海とヴァカンスと諸行無常
2023年から2018年へ。どこかリンクレイター監督『ビフォア』シリーズの遡行版の如き連作的な二部構成。『泳ぎすぎた夜』で青森の雪の風景を捉えた五十嵐耕平監督が、今作では伊豆のリゾートで波にさらわれた様な恋の次第を見つめる。コロナ禍の空白を挟み、喪失から出会いに立ち戻る異色のヴァカンス映画。やはり「時間」が主題として浮かび上がる。
より劇映画としての明瞭な輪郭を備えた後半部が驚く程素晴らしい。山本奈衣瑠演じる凪――「赤い帽子の女」は神代辰巳ならぬC・クロウの『エリザベスタウン』がイメージソースか。彼女が歩く姿はあのキルスティン・ダンストにも、『緑の光線』のマリー・リヴィエールにも見えてくる。