キングスマン:ゴールデン・サークル (2017):映画短評
キングスマン:ゴールデン・サークル (2017)ライター9人の平均評価: 3.9
ただの本人ゲストに収まらないエルトン・ジョンの大活躍が必見
労働者階級の若者が一流の英国紳士スパイへと成長する姿に、現代の格差社会に生きる若者への応援メッセージが込められた前作。悪役の設定も世相を的確に捉えていた。一転して、今回はそうした社会風刺的な色合いがグッと薄まった分、良くも悪くもハリウッド的な娯楽アクションに落ち着いてしまったが、それでも冒頭の凄まじいカーチェイスからテンポよく進んでいくストーリー展開は純粋に楽しい。
とりあえず、どこまでも荒唐無稽に徹したマシュー・ヴォーン監督の演出は大正解。チャニング・テイタムやエミリー・ワトソンの扱いは勿体なさ過ぎだが、その代わり(?)にエルトン・ジョンが意表を突くような大活躍。実は一番美味しい役かも。
風刺すべき米国調に引きずられ、英国調「粋」の減退は残念
確かに画づくりはゴージャスになり、バイオレンスは過激になった。超スロー×自在なカメラワークによるシームレスバトルは見応え十分だが…。舞台は英国から米国へ。身内を次々に粛清するジュリアン・ムーア扮するボスは、トランプ時代に甦った悪のパロディのよう。カルチャー衝突の結果、風刺すべき米国調に引きずられ、木乃伊取りが木乃伊になった。前作のムードを醸成する上でコリン・ファースの存在感(持ち時間)が偉大だったことを思い知る。「マナーが人を作る」から「アクションこそが映画を豊かにする」へ。このシフトはキングスマン精神を損ね、洒脱な乗りが影を薄めた。英国調の「粋」が大幅に減退したことが残念でならない。
荒唐無稽なあれこれを楽しむのが勝ちです!
国家に所属せずに正義を貫くスパイ組織という存在からして荒唐無稽なシリーズだけど、007シリーズに負けないド派手アクションや「これ欲しい」となるスパイグッズの数々に目が釘付け。特にペドロ・パスカルのロープ技にうっとり。悪役が50年代カルチャー好きな素敵な主婦風だったり、誘拐されていたエルトン・ジョンが本人役で怪演を見せたりと、とにかく次々と楽しませてくれる。今回はマーリン役のM・ストロングに素敵な見せ場も用意されていて、グッときた。 出演陣が豪華すぎて扱いが軽い役者も登場するが、第3弾での活躍に期待したい。それにしても気になるのがスウェーデン王室。架空の存在とはいえ、プリンセスの描かれ方はOK?
大胆かつ新鮮な驚きに満ちたアクション大作!
まだまだ噛めば充分に味がしそうな設定やキャラクターを惜しげもなく切り捨てていくのは勿体ないような気もするが、次々と世界観を更新していく大胆さは新鮮な面白さに満ちていて、終始飽きさせない。
前作とはまた違ったスタイルのハードなアクションにも挑戦しているし、ブラックな笑いやスケール感もアップ。
特別出演的な役割かと思ったエルトン・ジョンの大活躍も楽しい。
続編の構想もあるようなので、3作目も早く観たい。
背景も事件もキャストも……。すべての広がり方が真っ当な続編
人気作の続編に期待するものは何か? 前作で構築された世界観をしっかり踏襲し、多くの要素がどんなバージョンを見せているか、だろう。その目的はしっかり達成されていると思う。お洒落&ジェントルマンな振る舞いに、やや現実離れしたケレン味たっぷりのアクション場面という。一見、相反する見どころのブレンドを、今回は、驚きながらというより素直に楽しめた。その「素直に」という感覚が、物足りなくもあるが……。
気になったのは、J・ブリッジスやC・テイタムの見せ場が少ない点。これ、明らかに3作目で大活躍させたいんでしょ? そういう商売っ気が感じられたのは残念。今、そこにある映画を熱く盛り上げてほしかった。
いい意味でこちらの予測を裏切ってくれる
この続編は一筋縄ではいかない。前作が大人気だったのだから、普通なら続編は同じワザを増ボリュームでやりそうなところを、あっちもこっちもひとヒネリ。例えば、前作にも登場した人物たちが何人も、意外な展開になるのだ。しかし思えば、そんなふうにこちらの予測をいい意味で裏切ってくれるところが、このシリーズの魅力。前作も、英国製スパイ映画の魅力を継承しつつ、そこに収まらない変格ぶりが魅力だった。アクション演出も前回とは別のパターン。ひとつながりの動きが別の動きへと連動していき、事態が次から次へと変化していく面白さで魅了する。英国が誇るエルトン・ジョンの予想以上の飛び道具ぶりも必見。
前作以上に荒唐無稽で、悪ノリ感満載!
いくらアクション監督がジャッキーの愛弟子(ブラッドリー・アラン)とはいえ、「ハリーが生きていた!」という香港映画ばりに掟破りな展開になるとは! つまり、前作以上に荒唐無稽なうえ、エロもグロも割増。サイコパスな悪役を演じるジュリアン・ムーアや彼女のペット状態なエルトン・ジョンなど、新キャストも楽しそうに暴走芝居を魅せてくれるが、その悪ノリ感が決して下品に見えないのは、前作同様ベースに60'sスパイ映画のリスペクトがあるからこそ。マシュー・ボーン監督の続投は嬉しく、「土曜の夜は僕の生きがい」の使い方は、『ファンダンゴ』好きとしてはヒャッハーもの。それに対して、チャニング・テイタムの使い方は謎すぎ。
コミック調に拍車がかかったノリノリの快作
『トレインスポッティング』風の生意気さと、60's『007』シリーズの軽妙さ。新旧イギリス映画の妙味を併せ持つ前作はアップビートのノリを楽しませてくれたが、今回はその進化を確かに感じさせる。
前作でスパイとなった主人公の成長ぶりは頼もしいが、一方で性交渉を要する任務での悪戦苦闘や、恋人との仲違いなどの青二才ぶりがユーモアと化す。50年代かぶれのヴィランなど個性的キャラも妙味だし、アクションも本格派。それらがリズムを崩すことなく、ハイスピードで連ねられている点に脱帽。
コミックをワクワクしながらめくるような興奮。この劇画調は、『キック・アス』の監督×原作コンビならではだ。快作!
エレガンスと鬼畜、両極のふり幅が倍増!
今年三度目のジョン・デンバー!というネタのカブりっぷり(共時性?)にびびったが、独特の世界像&キレッキレのアクションは前作に引き続き快調。ロイヤルワラント級スーツの英国紳士の世界から、普段はアディダス愛用のエグジー(タロン・エガートン)、そして米カウボーイスタイルと、ファッションまでちゃんと意味を持って組み込まれた映画作りの秩序は格別。
ハリーは前半ポンコツ化、ジュリアン・ムーア扮するサイコ女傑が目立つ形で、ブラックてんこ盛りだが(トランプ&ドゥテルテ風刺も窺える)、結構悪ノリが激しく好みは分かれるかも。ただし、ほぼ「ファック」しか言わないエルトン・ジョンの怪演は文句なしの加算対象!