ようこそ映画音響の世界へ (2019):映画短評
ようこそ映画音響の世界へ (2019)ライター6人の平均評価: 4.2
日本の映画賞にもぜひとも、「音響編集賞」を!
音響を通して辿ってゆく映画の歴史──な〜んてお堅いものではなく、数々の傑作、ヒット作のあのシーンこの場面のサウンドデザイン=「魔法の裏側」を明かしてくれる、楽しくて尊い逸品! フレームの中だけでなく、外側の空間や登場人物の意識内、さらには実在しないけれども存在する“音色”を創り出してきた匠たちに拍手を贈りたい。
当然言及されている一本、長編として世界初のトーキー作品『ジャズ・シンガー』の有名なセリフを借りてこのドキュメンタリーの効能を言うならば、「お楽しみはこれからだ!」。つまりは映画の聴き方、受け取り方が変わるということ。我らが“シネマッド”の和田誠さんにも観ていただきたかった。
映画を耳で楽しむ方法を教えてもらいました
映画ファン必見のドキュメンタリー! 無声映画からトーキーへ移行し、音響が重要視されるに至った歴史や音響を支えてきた専門スタッフの体験談は、映画の見方を変えてくれる。映画会社のストック音響の時代を経て、ルーカスやコッポラのような音響にこだわる監督世代の誕生で構築された音響システムがいかに映画に深みをもたらしたのか? 様々な映像を使っての明快な解説を聞き、まさに目から鱗が落ちる思い。音の作り方やトレンドの影響、無音のパワー、さらには巨匠の音響観も興味深い。次回、映画館に行く時はまずはストーリーや演技を楽しみ、二度目は音響に注目しながら鑑賞するという楽しみ方にトライしたい。
映画の魅力の“半分”を、きっちり解説
映画における音響表現の発展史と、サウンドを構成する要素を解説。そんなわかりやすい構成に好感を覚える。
『ナッシュビル』や『普通の人々』『ブロークバック・マウンテン』などの音響面での革新性にも触れており、これらの名作を改めて見直したくなってしまった。いずれにしても、これを見た後では映画の見方が変わる。
映画は映像と音からなる。劇中で語られるとおり、前者は絶賛されることが多いが、後者が取りざたされるのは稀。そんな音響スタッフの本音も聞けて、とにかく映画ファンは必見。アカデミー賞の音響賞と音響編集賞の違いに、いつも戸惑ってしまう方にもおすすめ。
映画音響の各分野がよく分かるありがたい1作
これはありがたい。映画音響に関連する2つの大きな項目、「映画における"音"の歴史」と「現在、映画の"音"にはどのような分野と仕事があるのか」をとても分かりやすく解説してくれるのだ。例えば、音響編集とはどのような行為なのか、その実際をこの映画が見せてくれる。しかも、例として実在の映画のシーンが登場するのでよく分かる。
有名な映画監督たちも多数登場するが、より興味深いのは、実際に音響を手掛けている人たちが多数登場して、自分がどのような意識で音を創り出しているのかを語ってくれること。『スター・ウォーズ』のベン・バートや『デッドプール』のアイ=リン・リーら、新旧の名手たちが熱弁する姿に感動。
映画の見方を変えてくれる、映画ファン必見の1本
映画のビジュアルや脚本について語られることはあっても、音響が語られることはほとんどない。オスカーでも、それらの部門に関して、普通の人はもとより、業界人ですら無関心だ。そんな自分たちの無知さに一撃を加えるのが、このドキュメンタリー。ストーリーを語る上で、音響がいかに大切なのか、具体例を見せながら説明してくれる今作を見れば、映画の見方が変わるはず。それらの“具体例”は、「スター・ウォーズ」や「地獄の黙示録」からピクサーのアニメーション、つい最近の「ROMA/ローマ」まで、多岐にわたっている。この世界で優秀な女性がたくさん活躍しているのだと知ることができるのもプラス。
誰もが知る作品をテキストにした、究極の職人映画
映画音響を3つのカテゴリー(音楽・効果音・音声)に分け、さらに9つまで細分化したものを徹底解説するだけに、『すばらしき映画音楽たち』から、さらに突っ込んだ究極の職人映画といえるだろう。とはいえ、本作でもテキストとなる作品がブロックバスター大作中心(かと思いきや、『イレイザーヘッド』を挟んでくる!)ということで、映画ファンならずともニヤニヤの連続。おまけに、トーキーの誕生からコッポラ&ルーカス率いる「アメリカン・ゾエトロープ社」の功績、ドルビーの参入、近年のデジタルとアナログの使い分けなど、同時に映画史も学べる有難い構成。もちろん、今後の映画の観方が変わる一本でもある。