私たちの青春、台湾 (2017):映画短評
私たちの青春、台湾 (2017)ライター4人の平均評価: 4
社会を変えようとした若者の夢と挫折が切ない
ひまわり運動が起こっていたとき、台湾で数日間を過ごしたので学生や市民の熱狂に圧倒されていた身にとって、運動の高まりや背景が興味深かった。リーダー格の青年が香港の民主を維持しようと頑張るJ・ウォンやA・チョウとも連帯していた点に若者らしいパワーを感じる。そういう盛り上がりに賛同した中国人留学生ブロガーが「もしかして中国も?」と淡い期待を抱く姿は、習近平の独裁化が進む現状とかけ離れすぎていて切ない。傅楡監督が彼らに託した夢がうち砕かれる過程はほろ苦い。が、監督が2年間の自問自答を経た結果、大人になった彼女自身の冷静な視点による青春の回顧録となった。国家礼讃に走る中国映画と比較しながら見て欲しい。
それでも人生は続く、の見本のようなドキュメンタリー
結末を決めてカメラを回すドキュメンタリーはつまらない。その意味では本作は、成り行き具合が激しく、(不謹慎な言い方だが)とても面白い。'11年より台湾にて撮影を開始、被写体のメインは'14年に国民的デモを巻き起こした「ひまわり運動」の学生リーダーと、それに賛同した中国人留学生ブロガーだ。
作り手に邪気がない分、明け透けと色んなことが見えてくる。「ひまわり運動」の裏側、ナショナリズムの問題、そして青春の熱狂と苦い挫折(創作の袋小路に嵌ってゆく監督も!)。'17年、顔つきの変わった2人との直接対話がエモい。「英雄のいない国が不幸なのではない。英雄を必要とする国が不幸なのだ」という言葉を思い出した。
社会運動で世界は変えられるのか?
今やアジアで最も民主的かつ進歩的な社会を形成している台湾。これはその重要な転機となった「ひまわり学生運動」に身を投じた若者たちの姿を記録したドキュメンタリーだ。社会運動で世界を変えられると純粋に信じ、’14年のひまわり運動によって大きな成功を収めたかに思えた彼らだが、しかし本当の苦難はその後に待ち受けている。露呈する若さゆえの未熟さ、立ちはだかる不安定な東アジア情勢。その中で社会運動に失望しかけた監督は、それでもなお邁進する元学生たちを見て、民主主義の実現に必要不可欠なのは救世主的な指導者ではなく、市民一人一人の不断の努力であると気付く。我々日本人が彼らに学ぶことはあまりにも多い。
社会派だけど「青春の日々」という苦さと爽やかさの後味
2014年、台湾で学生らが起こした「ひまわり運動」を背景に一応、社会派ドキュメンタリーなのだが、タイトルの響きがぴったりな、青春の1ページの記録と受け止める人が多いかと。デモのリーダーで、政治家をめざす陳為廷の「そのへんにいそうな兄ちゃん」感と、彼に賛同しつつ微妙な立場を強いられる中国(大陸)からの留学生、蔡博芸の素直でまっすぐな言動に、じんわり共感させる作りなのだ。とくに後半、野心と挫折がゴチャゴチャになるくやるせなさに、監督の気持ちがシンクロしたのは明らか。香港のデモで有名になった周庭らとの交流に胸が熱くなりつつ、いくら対抗心を燃やしても中国共産党に無力という現実で、後味はホロ苦い。