ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結 (2021):映画短評
ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結 (2021)ライター7人の平均評価: 4.6
DCエクステンデッド・ユニバースが調子良い!
トロマからMCUを制覇した奇才ジェームズ・ガンを大胆スカウトしたDC最新作は彼の本領発揮。ジョニー・キャッシュの「フォルサム刑務所のブルース」から始まり、アルドリッチ監督『特攻大作戦』(67年)を下敷きに、本当にトロマ味をそのまま大作仕様に拡張(結果的に少年ジャンプ的にも見える)。「カイジュウ」の出現まで突っ走る!
あとマーゴット・ロビーが製作も兼ねたシスターフッドの快作『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』(監督は中国系のキャシー・ヤン。言わばクロエ・ジャオに先駆けた存在)の重要性を再確認。『プロミシング・ヤング・ウーマン』の医大中退キャシーは元・精神科医ハーレイのアナザーVer.だからね!
はみ出し者たちの、そして下層の底力を見よ!
ジェームズ・ガンがDCを撮るとなれば見ないわけにはいかない。そして期待通り、いや、期待以上の快作で嬉しくなる。
基本的には、ガンの『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』と同様に勇気・友情・勝利のジャンプ的なドラマ。ブラックユーモアも健在であるばかりか、同作ではディズニーの足枷ゆえに鳴りをひそめていたグロいバイオレンスや、メンヘラキャラの暴走も狂い咲く。
R15+指定も納得だが、過激さだけが見どころではない。クライマックスでは格差の現実を見据えながら、観客の下層意識にも訴えかける。そういう意味では痛快版『ジョーカー』か。いずれにしても見逃せない!
ハーレイ・クインは過去最高に魅力的!
あえてR指定を避けたデヴィッド・エアー監督版に対する、ジェームズ・ガン監督からの回答。常連マイケル・ルーカーがパツキンでカマすオープニングから飛ばしまくるなか、監督お得意のブラックな笑いと悪趣味入ったヴァイオレンス描写が、ほどよいタイミングで注入。ハーレイ・クインのキャラも、過去最高に魅力的で、『宇宙人東京にあらわる』のバイラ人にしか見えないスターロとの“カイジュウ”バトルまで、予算をかけたスケールのデカい『スーパー!』に仕上がっており、ガン信者にとっては歓喜の一本に。スライ吹替え(日本語版は玄田哲章)によるキングシャークも、“ナナめウエ”を行くキュートさだ!
究極の悪ノリ
ジェームズ・ガンがまさかのDC参戦を果たしたR15作品。もともと、ならず者が危険なミッションに向かう様を強烈なブラックジョークとどぎついバイオレンスで描くという普通では予算が下りない企画を、コミックヒーローが主人公であることで成り立たせてみせたという荒業的な一本です。
結果、人気者からクセモノまでずらりと揃えたうえでの究極の悪ノリ映画を仕上げてきました。これはまぁ作っている側、演じている側は楽しくてしようがなかったでしょうね。それが伝わってくる痛快作品です。ジョン・シナはこれで一気にA級スターの仲間入りですね。
炸裂しまくり。自信に満ちたクレイジーワールド
妙な自信に満ちたカオスとでも言うのだろうか。スタローンは「脳みそは家に置いて見に来るように」と言っていたが、まさにその通りだった。ジェームズ・ガンが思う存分やりたいことをやる今作は、とにかくはちゃめちゃ。中途半端にまじめだった2016年版より、ある意味、筋が通っていて痛快だ。ただバイオレンスも容赦なく、「普通に殺すのはもったいない」とでも言わんかのように残酷で、それを楽しめるのか目を覆いたくなるのかは観る人次第。筆者自身は後者だが、それでも、ばりばりR指定の映画にこれだけのお金をかけるというメジャースタジオが絶対やらないことを許したワーナーは、あっぱれで感心する。
これがジェームズ・ガン監督の本流! ひれ伏すしかない
サイコー! いろんな意味でジェームズ・ガン監督らしさが大爆裂! この監督の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』と"はみだし者たちがいやいやながら大活躍"という設定も、B級キャラの大集合も共通なのだが、テイストはちょっと違う。大増量の爆笑は悪趣味スレスレでたまに引き攣り、良識派は眉をしかめそうだが、これがガン監督の本流。彼の単独脚本なので、はみだし者たちの描き方も彼の本心に近く、やはりはみだし者の実体とはこういうものであり、こういう扱いをされ、こういう結果を迎えるものだという物語には、きっちり一本筋が通っている。それなのに、不覚にも感動までさせられてしまうとは。もう、ひれ伏すしかない。
刺激強すぎるのに楽しくスカッとする、アクション映画の理想型
「新生」ということで、歩くサメとか「水玉攻撃」とか、ちょっと奇抜に振り切れたキャラ新登場に観る前は不安もよぎったが、冒頭で史上最高のフェイント攻撃に唖然とさせられ、その後、メインのドラマに突入するや、15歳未満鑑賞不可のドギツさ乱れ打ち。刺激とテンションが、ここまで途切れないとは! サメくんもどんどん愛おしく見えてくる不思議。ディズニーの某映画をこっそりパロってしまう余裕も楽しい。
監督・キャスト、全員ノリノリで挑んでる感覚が伝わるが、アクションの説得力は意外にきっちり押さえ、見せきることで、荒唐無稽さは回避された。だから最後はアンチヒーローのプライドにこちらも同化。全身が熱くなるのである。