2016年 第73回ベネチア国際映画祭コンペティション部門20作品紹介(5/6)
第73回ベネチア国際映画祭
摩訶不思議なストーリーテリングに酔う
作品名:『ザ・ブラインド・キリスト(英題)/ The Blind Christ』
製作国:チリ、フランス
監督:クリストファー・マーレイ
キャスト:ミカエル・シルヴァ、バスティアン・イノストローザ
ストーリー:
整備工のミカエルは砂漠で神の啓示を受けたと話すが、狂人扱いされてしまう。ある日、幼なじみが事故に遭うと、ミカエルは全てを捨てて裸足で巡礼を行い、奇跡を起こして友人を治そうとする。そんなミカエルの行いは鉱山経営者に搾取されている貧しい人々を惹き付け、苦しい現実から救う新たなるキリストとして迎えられる。
ここに注目:
クリストファー・マーレイはチリ映画のニューウェイブを代表する監督。共同監督として発表した『マニュエル・ド・リベラ / Manuel De Ribera(原題)』(2010)がスプリト・インターナショナル・フェスティバル・オブ・ニュー・フィルムで特別賞を受賞し、本作は3作目となる。砂漠の貧しい人々に救世主として歓迎される主人公は、イタリア・ベネチアに衝撃を与えそう。
銀獅子賞(最優秀監督賞)
作品名:『ラ・レヒオン・サルヴァヘ(英題)/La Region Salvaje』
製作国:メキシコ
監督:アマト・エスカランテ
キャスト:ルート・ラモス、ヘスス・メサ
ストーリー:
ある日、隕石が落下したことにより、メキシコの地方都市で暮らすアンヘルとアレハンドラ夫妻の運命が大きく変化する。結婚生活の危機にあった若い夫婦と二人の子どもたちは逆境にさらされることにより、意思の力が試される。
ここに注目:
『エリ』で2013年カンヌ国際映画祭監督賞を受賞した、スペイン・バルセロナ生まれの俊英アマト・エスカランテ監督によるSFドラマ。いまだ古い因習が残るメキシコの地方都市で暮らす男女の愛憎の物語が次第に浮き彫りにされる。長編デビュー作『サングレ(原題) / Sangre』以来、市井の人々に寄り添ってきたリアリストの監督が導く意外なストーリーのてん末に期待が高まる。
作品名:『スピーラ・ミラビリス(原題)/Spira Mirabilis』
製作国:イタリア、スイス
監督:マッシモ・D・アーノルフィ、マルティナ・パレンティ
キャスト:ブレット・ブリングス・プレンティ、モー・ブリングス・プレンティ
ストーリー:
ミラノ大聖堂の修復工事は永遠に続くかのように思われ、日本人科学者のクボタは不老不死のクラゲの研究に没頭している。一方、アメリカ北部に暮らすネイティブ・アメリカンのスー族は、コミュニティーの危機に瀕していた。
ここに注目:
マッシモ・D・アーノルフィ&マルティナ・パレンティ夫妻が、ヨーロッパ、アジア、アメリカなど世界各国を舞台に、限りあるものや永遠なるものへの渇望を映し出したドキュメンタリー。修復工事中のミラノ大聖堂や奇妙なクラゲ、ネイティブ・アメリカン居留地などのさまざまな視覚的要素が巧みに混じり合い、えも言われぬ不思議な効果を生み出している。
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