略歴: 編集者を経てライターに。映画、ドラマ、アニメなどについて各メディアに寄稿。「文春野球」中日ドラゴンズ監督を務める。
近況: YouTube「ダブルダイナマイトのおしゃべり映画館2022」をほぼ週1回のペースで更新中です。
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ドウェイン・ジョンソン=ロック様がDC映画に降臨! 善も悪も関係ない“破壊神”ブラックアダムが誕生するオリジンストーリーだが、ウジウジした悩みは一切なし。即断即決で行動して暴れまくる(だけど子どもは絶対守る)のが爽快この上ない。ブラックアダムとヒーローチーム・JSAとの熾烈なバトルもたっぷり描かれるし、最後にオッとなるサプライズも用意されていて、「DCエクステンデット・ユニバース」を再起動させる一作としても申し分なし。ブラックアダムとJSAと人々の関係を、アメリカと中東をめぐる国際情勢と重ねて見るのも面白いだろう。オールド映画ファンは意外な作品とのリンクに歓声をあげるかも。
とにかくカメラがぐるんぐるんと動き回り「こんなの見たことない!」というアクション映像が134分間、ほぼワンカットで続く。ゲーム的な想像力と最新の撮影技術、スカイダイビングをはじめとしたほとんどのシーンをチュウォン自らが演じた体当たりぶりに韓国バイオレンス映画特有の容赦のなさが加わって、阿鼻叫喚のアクション絵巻が繰り広げられる(人体破壊描写もあり)。ストーリーは雑で、長尺のためアクションがインフレを起こしているきらいがあるが、スタントマン出身のチョン・ビョンギル監督がやりたいことを徹底的に実写化した映像が凄まじいのは間違いなく、アクション映画は「カーター以前/以後」と言われるのでは。
エンターテイメント性を押し出した「FILM」シリーズらしく、前半はAdoの歌唱シーンでグイグイ押しまくる。音楽中田ヤスタカ、振り付けMIKIKOによる圧巻のライブシーンを堪能するなら、ぜひ巨大スクリーン、音響の良い劇場で。これまでほとんど姿を見せなかったシャンクスと赤髪海賊団の登場など、来るべき本編の最終章への伏線にもなっており、『ONE PIECE』ファンなら見逃せない。ストーリーはシンプルなれど、これまでの劇場版のようにわかりやすい悪役が登場せず、構成は少し複雑。ハイカロリーなクライマックスのアクションはド迫力だが、ルフィたち麦わらの一味の爽快な活躍を楽しみたかった人は少し消化不良かも。
月が地球に落ちてくる! 『インディペンデンス・デイ』でおなじみローランド・エメリッヒ監督の最新作は、お得意のSFディザスタームービー。ストーリー的にも科学的にもツッコミどころが多すぎて頭が痛くなる。あるシーンで電力が問題になってスマホを壊すんだけど、それより宇宙船の照明を消せよ! とか、一事が万事こんな調子。絵づくりのハッタリは素晴らしいのに、ドラマや描写の積み重ねがないので、数億人レベルで死者が出ていても悲愴感がまるでないし、主人公たちのアクションもハラハラしない。広げすぎた風呂敷を真面目に畳むつもりがないエメリッヒ節を堪能しよう。これぞ2022年の底抜け超大作。
結婚を控えた超マジメな黒人カップルとマッチョで無計画だけど悪意が1ミリもない破天荒な白人カップルがバケーション先で知り合って、いろいろあるけれど親友になるというコメディ。知り合ったばかりの相手に平気でコカインまみれのカクテルを振る舞うマッチョ男をWWEのスーパースターでドラマ『ピースメーカー』主演のジョン・シナが好演。真面目男のリル・レル・ハウリーもハマり役。ハメを外した末、頭に瓶を乗せて撃ってみろと銃を渡した次のカットで頭から血をダラダラ流して「大丈夫大丈夫」と言っているジョン・シナに爆笑。とにかく省略のテンポがいい。大笑いした後、異なるカルチャーの相手に心を開くことが大切だと教えてくれる。