略歴: 編集者を経てライターに。映画、ドラマ、アニメなどについて各メディアに寄稿。「文春野球」中日ドラゴンズ監督を務める。
近況: YouTube「ダブルダイナマイトのおしゃべり映画館2022」をほぼ週1回のペースで更新中です。
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不屈の精神を持つ暗殺者シックス(ライアン・ゴズリング)とCIAに雇われたソシオパスの暗殺者(クリス・エヴァンス)らとの死闘をド派手に描く。Netflixで最大級の予算をぶっこんだ作品という触れ込みは、バンコク、ベルリン、ウィーン、プラハなどの美しいロケーションで繰り広げられる激しいアクションの様子で一目瞭然。まさに殺しの旅サラダ。恩人の姪である少女を守ろうとする主人公と卑劣な手を辞さない追手との戦いという筋立ては非常にシンプルなのに、主人公の性格が控えめなせいか、今ひとつ抜けが悪いのが気になった。シリーズ化されるなら、東京で警視庁の警官隊を巻き込んで戦うシックスの姿が見たい。
塔の一室に囚われた純白ドレス姿のお姫様。ならず者の敵兵たちが顔を近づけると頭突きを一閃! 手近なものを武器にして男たちをブッ殺す! 占領された城の中で、ドレス姿のお姫様が敵を片っ端から血祭りにあげていくノンストップアクション。躊躇のない殺しっぷりは『風の谷のナウシカ』の無双モードのナウシカが90分続くような感じ。大男に「身の程をわきまえろ」と言われると「よく言われる」と言い返して飛びかかっていくお姫様がカッコいい。R15指定なので「ディズニー(プラス)のプリンセスもの」だからといってお子さんに見せないよう注意。監督はベトナムアクションの傑作『ハイ・フォン:ママは元ギャング』のレ・ヴァン・キエ。
『search/サーチ』の父親役やNetflix版『カウボーイ・ビバップ』などでおなじみ、ジョン・チョー主演の父娘ロードムービー。脳の悪性腫瘍で余命1年を宣告された生真面目なシングルファーザーが、思春期の娘と車で思い出づくりの旅に出る。旅先でケンカしながらも、車の運転やカジノ、ダンス、男の選び方などを教える父と娘の姿に胸が熱くなる。難病ものとはいえ、重くなりすぎないところが良い。重要な場面で流れるイギー・ポップの「ザ・パッセンジャー」をはじめ、全編を覆うポップ&ロックもグッド。ラストは賛否分かれると思うが、「人生にはこういうこともある」と思えば、懸命に生きたくなるというもの。
中世ヨーロッパを彷彿とさせる世界で、巨大な怪物と海賊のようなモンスターハンターたちとの壮絶なバトルを描く海洋アドベンチャー映画。とにかく怪物の巨大感が圧倒的で、怪獣映画好きは満足すること必至。海戦の描写も迫力たっぷり。怪物への復讐に取り憑かれた船長クロウ、クロウに育てられた勇猛果敢な戦士ジェイコブ、ハンターに憧れる少女メイジー、そして巨大な怪物レッドとの関係もじっくり描かれている。戦争をどうやって終わらせるか、戦いを基盤にした“男らしさ”の行方、史実は本当に正しいのかなど、現代的なテーマも。夏休みに親子で観るのに最適。これは巨大スクリーンで観たい! あとブルーのぬいぐるみが欲しい。
『ザ・ファブル』シリーズや『ベイビーわるきゅーれ』など、近年なぜか日本映画で流行している殺し屋映画の最新作。ピンク髪でゆるふわだけど理屈抜きに強い殺し屋の橋本環奈がヤクザたちを殺して殺して殺しまくる。とにかくクルクル動き回る橋本環奈の魅力がすごい。これぞアイドル。血は激しく飛び散るものの、痛みはほとんど感じさせないので、生々しい暴力(バイオレンス)というよりも、ポップでカラフルなアクションを楽しもう。美化された竹内力のように見えるミソジニストの殺し屋、城田優のキャラクターが秀逸。いつか原作と映画会社を超えたファブル=岡田准一とケイ=橋本環奈が対決するような殺し屋映画が観たい。