森 直人

森 直人

略歴: 映画評論家。1971年和歌山生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『21世紀/シネマX』『シネ・アーティスト伝説』『日本発 映画ゼロ世代』(フィルムアート社)『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「週刊文春」「朝日新聞」「キネマ旬報」「Numero TOKYO 」などでも定期的に執筆中。※illustrated by トチハラユミ画伯。

近況: YouTubeチャンネル『活弁シネマ倶楽部』でMC担当中。11月2日より、ウェストン・ラズーリ監督(『リトル・ワンダーズ』)の回を配信中。ほか、想田和弘監督(『五香宮の猫』)、空音央監督(『HAPPYEND』)、奥山大史監督(『ぼくのお日さま』)、深田晃司監督(『めくらやなぎと眠る女』日本語版演出)、クォン・ヘヒョさん(『WALK UP』主演)の回等々を配信中。アーカイブ動画は全ていつでも観れます。

サイト: https://morinao.blog.so-net.ne.jp/

森 直人 さんの映画短評

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  • エイリアン:ロムルス
    「ちょうどいい面白さ」の見本!
    ★★★★

    これぞ2024年仕様『エイリアン』の最適解だ!というドヤ感が真っ当に窺える優秀なフランチャイズ。まずは1stの構造&要素にシンプル回帰。同時に絶好調のC・スピーニーを始め新進スター陣を揃え、集団でディストピアのサバイバルに乗り出す展開は『メイズ・ランナー』などヤングアダルト系SFの系譜に則った企画でもある。ティーンホラーっぽい趣もあり、実に周到なプロダクト。

    監督は『ドント・ブリーズ』のF・アルバレス。彼の起用も正に適材適所(“あるモチーフ”も共通!)。尺の長さも第1作とほぼ同じだが、速度や物量はめっちゃ上がっている。適度なユルさや遊びも込みでハナから80点狙いをきっちり果たした様な成功例。

  • 本日公休
    正しく「基本を大切に」の心得に則った良質の仕事
    ★★★★

    「基本を大切にすること。細部まで入念に。仕事が丁寧だと信頼される。最高のサービスを」――これは下町で40年も個人経営の理髪店を続ける店主(『客途秋恨』のルー・シャオフェン/大阪アジアン映画祭俳優賞)が、若い時に教えを受けた“仕事の心得”だ。彼女はこうして常連客をつかみ小商いを営んできた。この主人公を定点として、年少世代との価値観の違いを踏まえながら様々な人生交差点が描かれていく。

    オーソドックスなドラマスタイルを貫きつつ、「老い」にも「前進」にも寄り添う姿勢はノスタルジックに見えて未来形。そして芝居、語り、音楽まで、仕立てのサイズがぴったり合っている。主人公は監督の母親がモデルだという。

  • ソウルの春
    全斗煥時代を巡る韓国、政治の季節ユニバースにハズレなし!
    ★★★★★

    『KCIA 南山の部長たち』の続編の如く1979.10.26の朴正照暗殺を起点とし、韓国現代史の転換点となった「12.12軍事反乱」を描く熱作。のちに激動の80年代韓国を牛耳る全斗煥、軍事クーデターに立ちはだかる張泰玩(映像作品では05年のドラマ『第5共和国』以来の登場か)を始め全員別名義だが、むしろ真実を容赦なく抉る為にフィクションを装った格好だ。

    386世代のキム・ソンス監督は張泰玩の実直なヒロイズムを強調しているが、ファン・ジョンミンの芝居が圧巻すぎて独裁を目論む全斗煥の邪悪なカリスマ性の方が際立つのが皮肉か。このあと歴史は『タクシー運転手』や『1987 ある闘いの真実』へ続いていく。

  • ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー
    『TAR/ター』と関連する補助線としても捉えたい
    ★★★★

    数多いファッション系ドキュメンタリーの中でも名声の光と影を描いたものとして、同時代を生きた英国・労働者階級出身のデザイナー、A・マックイーンを追った『マックイーン:モードの反逆児』(18年)と重なる。本作の核は2011年、ガリアーノが放った差別発言による大炎上だが、その裏には心身の激しい疲弊があった。

    キャンセルカルチャーにまつわる問題のひとつに、政治的無知をどう扱うかとのアポリアがある。かつて天才は浮き世離れした無邪気なキャラでOKだったが、今は「知らないでは済まされない」世の中になった。そんな風潮の中で規格外の才能はいかに受容/保護されるべきか。社会派のK・マクドナルド監督らしい視座だ。

  • ナミビアの砂漠
    映画遺産を凶暴に喰らって2024年の最尖鋭に立つ!
    ★★★★★

    潜在能力ヤバすぎの異能、山中瑶子監督(97年生)の決定的な一撃を待ち望んでいた人は数多いはず。『あみこ』『おやすみ、また向こう岸で』『魚座どうし』……焦らされたが申し分のない137分が届いた! 河合優実という最高のタッグパートナーを得て。町田駅前を彼女が歩く、街と群衆の息吹が伝わるオープニングからすでに完全勝利宣言だ。

    ベンチマークは『ママと娼婦』だけではない。「疾走」や「側転」などあらゆる先行の映画的バトンを勝手に奪取しつつ、そこらへんの日常を舞台に人間世界の「戦争」状態を見つめるタフな姿勢が際立つ。筆者にとっては「非戦」の可能性を探究した三宅唱の『夜明けのすべて』と今年双璧の成果だ。

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