略歴: 1971年、東京都出身。大学在学中、クイズ番組「カルトQ」(B級映画の回)で優勝。その後、バラエティ番組制作、「映画秘宝(洋泉社)」編集部員を経て、フリーとなる。現在は映画評論家として、映画誌・情報誌・ウェブ、劇場プログラムなどに寄稿。また、香港の地元紙「香港ポスト」では20年以上に渡り、カルチャー・コラムを連載するほか、ライターとしても多岐に渡って活動中。
近況: 『インファナル・アフェア4K 3部作』『search #サーチ2』『縁路はるばる』『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』『恋のいばら』『この小さな手』『香港怪奇物語 歪んだ三つの空間』(公式HP)『呪呪呪/死者をあやつるもの』(公式HP)などの劇場パンフにコラム・インタビューを寄稿。そのほか、キネマ旬報ムック「細田守とスタジオ地図の10年」にて細田守監督×ポン・ジュノ監督、「CREA WEB」にてアイナジエンドさん、倉悠貴さん、Evan Callさん、「GetNavi web」にて中井友望さん、武田玲奈さん、北香那さん、浅川梨奈さん、三浦翔平さん、森山みつきさんなどのインタビュー記事も掲載中。
押山清高監督以下、スタッフ陣のとてつもない原作リスペクトを感じる。それによって、2人の少女を繋ぐ学級新聞の4コマ漫画がアニメとして動く。漫画制作に没頭する彼女たちの躍動感と四季折々が鮮やかに彩られる。河合優実と吉田美月喜も本人の顔が浮かばないほど、完全に役柄と同化しており、いい仕事っぷりだ。そして、『ソウルメイト』にも通じる2人の距離感や肌触りが絶妙であり、シスターフッドの映画としても胸に迫る。とにかく藤本タツキの「ルックバック」の魅力すべてが凝縮された58分。間違いなく2024年を代表するアニメ映画だけに、入場料の件など、細かいことは気にせず、劇場で体感すべし!
幻のジャパニメーション「行け!虹の世紀末大決戦」の円盤を入手したオタクが世界を救う使命を託されるトンデモSF……ではあるが、仮面ライダーやウルトラマン、ジブリぐらいは、まだまだ序の口。宇宙刑事ギャバンに、「平成ガメラ」金子&樋口監督、ウルフルズ「ガッツだぜ!!」まで、ジャパニーズカルチャーのてんこ盛り状態は、『ターボキッド』の映像制作ユニットRKSSの作品にも近い偏愛だ。極めつけは、空手道場を経営するビリー・ゼインと釈由美子の夫婦。『クロニクル』みたいになりそうでならない牧歌的なユルさなど、作り手の暴走が目立ったりもするが、いろいろ“昔のニチアサ”感覚で楽しめたりもする。
『ゴーストバスターズ』同様、どうしても評価が甘くなってしまう、仕切り直しの新シリーズ第2弾。囚われたマイクの実子・アルマンド、そして彼に殺害されたハワード警部にまつわるエピソードが軸となるため、前作『バッドボーイズ フォー・ライフ』の予習は、ほぼマスト! しかも、前作から一転、理由あって“三途の川”から戻ってきたマーカスがキメまくったように、所帯を持って守りに入ったマイクを振り回す。そんな気が狂った展開に加え、ワニ園バトルやら金網デスマッチやらと、前作よりもサービス満載で、時代遅れのFPS演出も気にならないほど。とりあえず、ひと区切りつきそうな次回作に期待!
原題「IF」が示すように、『屋根裏のラジャー』にも似たイマジナリー・フレンドとパートナーを繋ぐファンタジー。悪人が出てこない、紛れもない“いい話”で、ヤヌス・カミンスキーの撮影が冴えわたり、ラストのオチも効いている。しかも、ブルー役のスティーヴ・カレルや本作が遺作となる老いたクマ役のルイス・ゴセット・ジュニアのほか、オリジナル吹替キャストが豪華すぎるのだが、キャラちょっと多すぎる問題が勃発。芸達者な役者を集める強い人脈はあっても、それをフルに使いこなせないあたり、ジョン・クラシンスキー監督は『最高の家族の見つけかた』の頃から、あまり変わっていない気もする。
ある意味“神の領域”に挑んだ、実話を基にした一風変わった男による大河ドラマ。妻役が菅野美穂ということもあり、『奇跡のリンゴ』を思い起こすが、奇人ギリギリのひたむきキャラを今度は大泉洋が熱演。最初は空気に近かった研究員を演じる松村北斗の美味しさや光石研のキレ芸ほか、リアルに再現された1970年代の風景といった見どころもあるが、感動エピソードの羅列に終わっているのは否めない。どこかカタルシスに欠けるところも含め、いかにも月川翔監督作なのだが、『ラーゲリより愛を込めて』に続き、今回もすべてを丸く収めてしまうMrs. GREEN APPLEによる主題歌の破壊力が凄まじい。