くれい響

くれい響

略歴: 1971年、東京都出身。大学在学中、クイズ番組「カルトQ」(B級映画の回)で優勝。その後、バラエティ番組制作、「映画秘宝(洋泉社)」編集部員を経て、フリーとなる。現在は映画評論家として、映画誌・情報誌・ウェブ、劇場プログラムなどに寄稿。また、香港の地元紙「香港ポスト」では20年以上に渡り、カルチャー・コラムを連載するほか、ライターとしても多岐に渡って活動中。

近況: 『インファナル・アフェア4K 3部作』『search #サーチ2』『縁路はるばる』『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』『恋のいばら』『この小さな手』『香港怪奇物語 歪んだ三つの空間』(公式HP)『呪呪呪/死者をあやつるもの』(公式HP)などの劇場パンフにコラム・インタビューを寄稿。そのほか、キネマ旬報ムック「細田守とスタジオ地図の10年」にて細田守監督×ポン・ジュノ監督、「CREA WEB」にてアイナジエンドさん、倉悠貴さん、Evan Callさん、「GetNavi web」にて中井友望さん、武田玲奈さん、北香那さん、浅川梨奈さん、三浦翔平さん、森山みつきさんなどのインタビュー記事も掲載中。

サイト: http://blog.goo.ne.jp/asiareview/

くれい響 さんの映画短評

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  • 劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:
    「劇場版」ならではの編集による心地良い疾走感
    ★★★★

    冒頭から「主人公・ぼっちちゃん(ひとり)がバンドをやる理由」に焦点を絞った文字通りの総集編。TVシリーズ全12話中、第8話分まで網羅していることもあり、駆け足感は否めないが、日常描写をできるだけ排除した編集で「劇場版」ならではの疾走感が心地良い。また、細かい音響設計により、放送時に気づかなかったSEやバンド演奏の迫力がしっかり強化されており、凄まじい没入感を体感できるのは間違いない。そして、活動休止中のthe peggies北澤ゆうほによるエンディング曲「今、僕、アンダーグラウンドから」が、あえてエモい。オープニングなど、新規映像はわずかでも、満足度は高く、後編にも期待!

  • ナイトスイム
    いかにもジェームズ・ワン制作の“呪われたプール”
    ★★★★★

    今や『ソウ』ではなく、『死霊館』『アクアマン』でおなじみのジェームズ・ワン制作として分かりやすい“呪われた+プール”。排水溝だけで怖いのに、プロ野球選手が患った難病が治癒していくミステリー展開に加え、フラットではないプールの構造の使った面白さ。そして、「モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ」だけでなく、ジョン・カーペンター監督作でも父親(カート・ラッセル)と共演してほしいワイアット・ラッセルが演じるアメリカの理想の父親像。近年のブラムハウス作品にしては、そこまで奇をてらっていない家族ドラマといえる王道な作りゆえに、どこか好感度高し。

  • あんのこと
    入江悠監督、ひとつの到達点
    ★★★★★

    社会派ドラマを描こうとすればするほど、ダダ滑り感の強かった入江悠監督だったが、「不適切にもほどがある!」の純子と同一人物とは思えぬ芝居で圧倒する河合優実をミューズに迎え、紛れもない最高傑作を放った。ダルデンヌ兄弟監督作のように現代社会に対する怒りを表現し、佐藤二朗と稲垣吾郎の起用により、『由宇子の天秤』の斜め上を行くような驚きの展開が待ち受ける。ネグレクト、薬物中毒、売春、そして裏切りと、劇中で描かれるのは、目を背けたくなる過酷な現実ばかりで、とにかく辛い。その一方、河合が『ミッシング』の石原さとみとともに、本年度の映画賞における主演女優賞を競い合う姿も想像できる。

  • ライド・オン
    「あぶ刑事」の感触にも近い、ジャッキーなりのスタントマン賛歌
    ★★★★

    『カンフースタントマン 龍虎武師』は欠席だったジャッキー・チェンなりのスタントマン賛歌。バックステージものであり、『ロッキー・ザ・ファイナル』に近い趣もあるドラマパートはかなりユルく、いろいろ問題があるものの、「七小福」から始まる、ちょいちょい散りばめられたジャッキー小ネタ&ウー・ジンやレイ・ルイなど、ゲストキャラの応酬がツボを突く。いわば生粋のジャッキーファン、ラリー・ヤン監督によるファンムービーであり、昔の旧正月映画ノリ。『帰ってきたあぶない刑事』を観たときの感触にも近いこともあり、37年前に一作目と併映された『七福星』を思い出しつつ、劇場にライド・オンすべし!

  • マッドマックス:フュリオサ
    じつは、フュリオサの母ちゃん凄かった伝説
    ★★★★★

    姐御キャラ以前、少女フュリオサの約15年に渡る復讐劇。くまちゃん携えたクリヘム率いるバイカー・ホードVS.イモータン・ジョーが統治するシタデルの抗争劇に巻き込まれたフュリオサという構図は面白く、ブーストをかけるエピソードもあるが、既視感あるドラマを重視したこともあり、エンジンがかかりそうでかからない。そんな歯がゆさの中、マックスの面影を持つ謎の男・ジャックを筆頭に、前作ほど魅力を感じるキャラはなく、結局“フュリオサの母ちゃん凄かった伝説”に留まった感アリ。まさかの『サンダードーム』級の仕上がりのためか、口直しに『怒りのデスロード』を観たくなる衝動に駆られる。

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