清水 節

清水 節

略歴: 映画評論家/クリエイティブディレクター●ニッポン放送「八木亜希子LOVE&MELODY」出演●映画.com、シネマトゥデイ、FLIX●「PREMIERE」「STARLOG」等で執筆・執筆、「Dramatic!」編集長、海外TVシリーズ「GALACTICA/ギャラクティカ」DVD企画制作●著書: 「いつかギラギラする日 角川春樹の映画革命」「新潮新書 スター・ウォーズ学」●映像制作: WOWOW「ノンフィクションW 撮影監督ハリー三村のヒロシマ」企画・構成・取材で国際エミー賞(芸術番組部門)、ギャラクシー賞(奨励賞)、民放連最優秀賞(テレビ教養番組部門)受賞

近況: ●「シン・ウルトラマン」劇場パンフ執筆●ほぼ日の學校「ほぼ初めての人のためのウルトラマン学」講師●「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」劇場パンフ取材執筆●特別版プログラム「るろうに剣心 X EDITION」取材執筆●「ULTRAMAN ARCHIVES」クリエイティブディレクター●「TSUBURAYA IMAGINATION」編集執筆

清水 節 さんの映画短評

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  • ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅
    移動すらままならぬ老いた父と中年息子は、荒野をめざす
    ★★★★

     アメリカがくたびれている。アレクサンダー・ペイン監督お得意のペーソスに飛んだ家族ドラマではあるのだが、様相が異なる。泣き笑いよりも悲哀の色が濃いのだ。
     
     モノクロのシネスコ画面の中で、父が旅へ出ようともがく。60~70年代アメリカ映画のスタイルは、なかなか作動しない。目的は幻の懸賞金。『アバウト・シュミット』の老後にはまだ活力が漲っていたが、本作の残酷な老いは、移動すらままならない。息子が手を差し延べ、ようやく景色が流れ出し、老人と中年のロード・ムービーが始まる。
     
     さびれた中西部の荒漠とした風景を彷徨う、父ブルース・ダーンの佇まいに映画史が重なる。これは生きる尊厳についての名画だ。

  • ホビット 竜に奪われた王国
    欲望が渦巻き始め『指輪物語』の匂いが立ち込めてきた
    ★★★★

     あまりにもスピンオフ感が強かった前作に比して、『ロード・オブ・ザ・リング』の匂いが立ち込めてきた。「欲望」が渦巻き始め、心の闇が全編を覆い始めるからだ。
     
     巨大蜘蛛との激しい攻防と、邪竜スマウグとの腹の探り合いが、さらなる緊張感を与える。邪竜をパフォーマンス・キャプチャーと吹替えによって体現したベネディクト・カンバーバッチが、マーティン・フリーマン扮するビルボと対峙する場面は本作の白眉だ。
     
     前作から導入された映像HFR(ハイ・フレーム・レート)の生々しい画質は、新たな“コク”を表現しつつある。しかし人物やキャメラが素早く動くとき、未だ異様な軽さを感じさせてしまう瞬間は残存する。

  • ダラス・バイヤーズクラブ
    体重の増減によるダイナミズムがVFX万能の世に実に映画的
    ★★★★

     難病映画の概念を覆す実話だ。酒と薬と女に生きる典型的なレイシストがエイズに罹っても、悲壮な展開に陥らない。生き延びる力が漲っている。抗エイズ薬の密輸組織を興し、治療薬を認可しない80年代米国の権力を向こうに回して闘う反骨精神の行方がスリリング。マシュー・マコノヒーとジャレッド・レトが体重の増減で表す肉体的ダイナミズムは、VFX万能の世にあってデ・ニーロ全盛の時代以上の意味を持ち、実に映画的だ。
     
     今年のオスカー主要候補作は、身体性を強烈に意識させる。宇宙を漂う女性飛行士、奴隷生活に耐える黒人男性…。身体に訪れる危機を体を張って表現した本作の男優2人こそが、最もオスカー級の演技である。

  • ウルフ・オブ・ウォールストリート
    強欲資本主義の本性を晒すスコセッシ×ディカプリオの最高傑作!
    ★★★★★

     吹っ切れてる。スコセッシ映画としては、『レイジング・ブル』より破滅的で、『カジノ』より背徳感に溢れ、『グッドフェローズ』よりも笑いが黒い。スコセッシ×ディカプリオのコラボは、90年代ウォール街の恥部を暴き、5度目にして最高傑作となった。
     
     カネとセックスとドラッグにまみれた日々。金融ギャングによるアメリカンドリームのなれの果て。加速度的にジャック・ニコルソン化するディカプリオの怪演が、社会の表層をひん剥いて強欲資本主義の本性を晒す。とことん醜悪ゆえに痛快で魅せられもする。デカダンを極めた“スコセッシ版『カリギュラ』”は、未だに狂気の経済サイクルの渦中を生きる我ら現代人のはらわたでもある。

  • ラッシュ/プライドと友情
    狂気に満ちた70年代の欲望とスピードに魅せられて
    ★★★★

     F1に関心なき者もグイグイと引きずり込む、スクリーンを切り裂く悪魔のような映像。欲望とスピードと勝利に魅せられた人生。クレイジーな70年代を走り抜けた伝説的ライバル同士の苛烈をきわめる対決。破天荒な熱き実話に対し、演出も演技も負けていない。
     
     “壊し屋ハント”と“走るコンピュータ”。敵対関係にあった彼らの距離が接近する過程に真実味が宿る。70年代に『バニシング IN TURBO』で監督デビューしたロン・ハワードは、水を得た魚のように技巧に走りまくる。過剰に思える編集と音楽も、劇的すぎる運命を前にしては、程よい加減だ。惜しむらくは、富士スピードウェイにおける最終決戦の描写が淡泊なことか。

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