清水 節

清水 節

略歴: 映画評論家/クリエイティブディレクター●ニッポン放送「八木亜希子LOVE&MELODY」出演●映画.com、シネマトゥデイ、FLIX●「PREMIERE」「STARLOG」等で執筆・執筆、「Dramatic!」編集長、海外TVシリーズ「GALACTICA/ギャラクティカ」DVD企画制作●著書: 「いつかギラギラする日 角川春樹の映画革命」「新潮新書 スター・ウォーズ学」●映像制作: WOWOW「ノンフィクションW 撮影監督ハリー三村のヒロシマ」企画・構成・取材で国際エミー賞(芸術番組部門)、ギャラクシー賞(奨励賞)、民放連最優秀賞(テレビ教養番組部門)受賞

近況: ●「シン・ウルトラマン」劇場パンフ執筆●ほぼ日の學校「ほぼ初めての人のためのウルトラマン学」講師●「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」劇場パンフ取材執筆●特別版プログラム「るろうに剣心 X EDITION」取材執筆●「ULTRAMAN ARCHIVES」クリエイティブディレクター●「TSUBURAYA IMAGINATION」編集執筆

清水 節 さんの映画短評

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  • アメリカン・ハッスル
    壊れた連中が右往左往する絶対すべらない詐欺話
    ★★★★

     愛おしき70年代アメリカ。ビミョーな風俗やアブナイ生き様が発散する空気は、60年代より重くて80年代より濃い。そんな時代を体現する、頭髪と体型がダサすぎる詐欺師クリスチャン・ベイルと、万華鏡のように多面的な相棒エイミー・アダムス。そして、2人を囮捜査に巻き込むクレイジーな捜査官ブラッドリー・クーパー。ベイルの妻役ジェニファー・ローレンスのキレまくる言動が周囲を掻き回す。
     
     用意周到な作戦で騙したのが『アルゴ』ならば、本作は、いかがわしき面々が“いっちょカモる”ために右往左往しながら人間臭さを爆発させる。快進撃を続けるデヴィッド・O・ラッセルによる壊れた連中への讃歌は、愉快痛快奇々怪々!

  • 小さいおうち
    『永遠の0』への大いなるアンチテーゼ
    ★★★★

     今を生きる若者が老人の追憶を通し、戦争へと向かった時代の真実を知る。骨格は『永遠の0』に似ているが、テーマは対照的だ。主役は、坂の上に建つモダンな家屋に住む小市民。排外的なナショナリズムが強まった昭和初期に、密かに咲いた道ならぬ恋。“小さな家”のささやかな秘密も罪も希望も、全ては“大きな歴史”に踏み潰されていく。
     
     あの頃の日本に美しき幻影を追い求め、やさしい言葉で勇ましく叫ぶ輩がのさばる危うい時代に、山田洋次は「長く生き過ぎた」と嘆息しながらも、いつか来た道を辿ってはいけないと厳かに警鐘を鳴らす。戦時下の営みに想像力を刺激され、悔恨の念にかられた者だけが、さめざめと泣くであろう。

  • 永遠の0
    結果的に「日本を取り戻す」意識の強化に奉仕する感動の大安売り
    ★★★★★

     三丁目、ヤマト、そして零戦…日本人が愛おしむ過去をCGで情緒過多に再現するVFXマン・山崎貴監督作品として一貫している。愁嘆場のつるべ打ち。感動映画製造職人が「戦争」と結び付いた今、流した涙の意味に慎重であらねばならない。
     
     トラウマを与えなければ戦争映画としては不十分な趨勢から逆行している。「特攻」を否定するなら、家族や戦友との絆を美しく描くだけでなく、なぜ主人公の酷たらしい死体すら見せないのか。表面的に反戦を唱えながらも、結果的に「日本を取り戻す」民族意識の強化に奉仕する巧みなプロパガンダだ。若者の曖昧な生に輪郭を与えるために、この国の空に再び戦闘機が舞う時代が来ないことを願う。

  • ウォーキング with ダイナソー
    リアルな造形とは裏腹に擬人化された“喋る”恐竜
    ★★★★★

     3Dメガネを装着して現れる7000万年前の世界。英国BBCのドキュメンタリースタッフの想像力によって、精緻なCGで再現された白亜紀と恐竜たちの存在感は申し分ない。
     
     草食恐竜のファミリーが肉食恐竜の魔の手からサバイバルを繰り広げる。子供たちに生きる厳しさを伝えようという主旨はいい。ただ、彼らが喋るのだ。リアルな造形とは裏腹の擬人化されたキャラクター。その違和感は最後までぬぐい去ることが出来なかった。デフォルメされた造形の方が、感動を呼んだのではないだろうか。
     
     ネイチャードキュメンタリーとはあらゆる意味で対照的。無言の生きものたちの生き様のほうが雄弁であることを、逆説的に教えられる。

  • ゼロ・グラビティ
    「映画」以上の体験へいざなう極限状況の旅
    ★★★★★

     「映画」の概念が変わる。ほぼ全編にわたり宇宙空間。主な登場人物は2人。無駄なドラマは無い。生き延びようとする人間を臨場感たっぷりに描く。
     
     ドキュメンタリータッチ×VFX×3D大画面。アルフォンソ・キュアロン作品の長回しが凄まじいのは、凝視させるカットの中に、生と死が激しくせめぎ合っているからだ。実人生で喪失感にさいなまれた宇宙飛行士サンドラ・ブロックの、それでも生きたいと願う“心の漂流”に同化させるドラマが、サバイバル・ロードムービーを貫く。
     
     デジタル端末で容易に映画鑑賞が可能な今、劇場で観なければならない必然性がここにある。映画の進化形は、身体機能を拡張させる極限状況の旅だ。

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