平沢 薫

平沢 薫

略歴: 映画ライター。視覚に訴えかけるビジュアルの派手な映画がお気に入り。「SCREEN」「SCREEN ONLINE」「Movie Walker」「日経エンタテインメント!」「DVD&動画配信でーた」「キネマ旬報」「SFマガジン」「映画.com」等で執筆。他に「キングスマン:ゴールデン・サークル」ノベライズ、「グレートウォール」ノベライズ、「X-ファイル 2016」ノベライズ、「フランケンウィーニー」ノベライズ、「「ターミネーター:新起動/ジェニシス ビジュアルガイド」翻訳など。ウェブで映画やTVドラマのニュースを追いかけ中

近況: 「トゥルー・ディテクティブ」シリーズ第4弾、ジョディ・フォスター出演の「トゥルー・ディテクティブ ナイト・カントリー」@U-NEXTを視聴中。夜が続くアラスカの町。先住民たちの間の言い伝え。超常現象のように見える事件。これまでのシリーズとはまったく違う雰囲気が新鮮。

平沢 薫 さんの映画短評

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  • ドライブアウェイ・ドールズ
    女性コンビのロードムービーは、笑えて痛快な85分
    ★★★★★

     軽くて、痛快で、カラフルで、笑える85分、この尺の短さも快適。バディもので、どちらも若く、優等生ではなく、無茶な行動をしながらヤバいジョークを言ってばかりいる、という映画は、男性バディならよくあるが、女性バディでは珍しいのではないか。

     共同脚本は、コーエン兄弟映画の編集を長年務めてきたトリシア・クック。彼女は同性愛を公表していて、本作のヒロイン2人も同性愛カップルだが、それは映画のテーマではなく、ただそうなだけ、という扱いも新鮮。物語の発端が70年代にあり、映像がときおりサイケデリック風に変化するのも楽しい。ちょっとした役を、ペドロ・パスカルやマット・デイモンが演じるのも豪華。

  • ナイトスイム
    夜、暗い水は、得体の知れないものになる
    ★★★★★

     夜、暗い水に満ちた川や湖を見ると、なんだか落ち着かない気がするのは、水中では生きられない全人類共通の原初的恐怖から生じる感覚なのではないか。この物語の根底には、そんな誰もが思い当たる漠然とした恐怖がある。さらに学校や公共施設のプールが近所にあるなら、この感覚がより身近に感じられるのではないだろうか。

     そこに父と息子の心理ドラマをプラス。幼い息子が自分が願うような存在にならないのではないかと、無意識のうちに失望する父親と、それをどこかで感じ取っている繊細な息子が、それぞれ怪異に遭遇する。まったくの善人でも悪人でもない普通の男である父親役に、ワイアット・ラッセルがよく似合う。

  • チャレンジャーズ
    欲望とコントロールについての物語
    ★★★★

     これがテニスの映画ではないことは、試合の撮り方を見れば一目瞭然。テニスプレイヤーでもある3人の人間を題材に、欲望とコントロールについての物語を描き出す。脚本は『パスト ライブス/再会』の監督・脚本のセリーヌ・ソンの夫、ジャスティン・カリツケス。彼は本作のグァダニーノ監督がウィリアム・バロウズの同名小説を映画化する『Queer』の脚本も手がける注目株。

     現在を起点に、複数の過去に順不同に戻りつつ、人物と関係性の変化を暴き出す。監督とは3度目のマルコ・コスタの編集は、シーン変換が通常より0.1秒早い感触で、トレント・レズナー&アッティカス・ロスの音楽との相互作用で、速度と緊迫感が倍増。

  • デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章
    世界の終末系の光景は一見の価値あり
    ★★★★

     映画終盤の世界の終末系の光景は、そこに流れる歌曲と作用し合って、一見の価値あり。ストーリーは伏線もきっちり回収されて、きれいなまとまり具合が気持ちいい。

     それにつけても前作同様、異質な要素の組合せぶりが見事。美少女ではないギャグマンガ系のキャラ造形に、宇宙人侵略SFを掛け合わせ、そこに高校生のリアルな会話、学生デモ、引きこもり、フェイク動画、LGBTQなどを盛り込んで、現実の社会情勢を反映させたストーリーが描かれていく。

     人類滅亡の危機という大きな物語と並行して、主人公たち各自の初々しい恋も描きつつ、世界の終焉でも恋でもない最優先事項があるのではないかと問う物語も新鮮。

  • マッドマックス:フュリオサ
    アニャ・テイラー=ジョイの眼差しが強い
    ★★★★

     フュリオサを演じるアニャ・テイラー=ジョイの眼差しが激烈。彼女の周囲でさまざまな出来事が起きるが、その目が放つ光は決して緩むことがない。その眼光にシビレる。

     広大な赤い砂漠を、奇怪な風体の無法者たちが、派手に改造した自動車やオートバイで縦横無尽に走り回る光景が何度もスクリーンに溢れて、『マッドマックス』の原点を再確認させつつ、アクションシーンの強度とスピードはアップデート。激闘シーンはそれぞれ長く、ほとんどセリフがなく、複数の人間が何をして何が起きているのかが継ぎ目なく描かれて、気づくと息を止めている。前作から続投のジャンキーXLによる心臓の鼓動のような音楽が、高まる心拍数と同期する。

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