平沢 薫

平沢 薫

略歴: 映画ライター。視覚に訴えかけるビジュアルの派手な映画がお気に入り。「SCREEN」「SCREEN ONLINE」「Movie Walker」「日経エンタテインメント!」「DVD&動画配信でーた」「キネマ旬報」「SFマガジン」「映画.com」等で執筆。他に「キングスマン:ゴールデン・サークル」ノベライズ、「グレートウォール」ノベライズ、「X-ファイル 2016」ノベライズ、「フランケンウィーニー」ノベライズ、「「ターミネーター:新起動/ジェニシス ビジュアルガイド」翻訳など。ウェブで映画やTVドラマのニュースを追いかけ中

近況: 全米音楽スーパーバイザー組合賞2025のTV部門の最優秀作曲/録音曲賞(Best Song Written and/or Recorded for Television )を、ドラマ「アガサ・オール・アロング」の挿入歌「魔女の道のバラッド」が受賞してめでたい。古楽風の名曲ですよね~

平沢 薫 さんの映画短評

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  • ロングレッグス
    見えそうで見えないものが恐ろしい
    ★★★★

     冒頭シーンの構図がもたらすインパクトが、絶大。見えそうで見えないものが、恐ろしいものを想像させる。その恐怖感がずっと持続して、画面は怪しげなホラーの定番アイテムのオンパレードになっていくのだが、そこに映し出されていないところで、何か恐ろしいことが起きてしまった、または起きているのではないかと思わせる。そして、物語は予想しなかった方向に転がっていく。時々流れるグラムロックのT・レックスの歌が、ここまでいかがわしいものだったとは。

     オズグッド・パーキンス監督は配信中の『呪われし家に咲く一輪の花』の高密度の静寂もおすすめ。スティーヴン・キング原作の新作映画『The Monkey』も早く見たい。

  • Playground/校庭
    子供視点の映像が、その頃の記憶を刺激する
    ★★★★★

     初登校する7歳の子供の視点で、"集団生活"という未知の世界との遭遇が描かれる。7歳の目に映るものが、記録映像のリアルな手触りで迫り、聞こえてくる音声も生々しく、観客自身のその頃の記憶を刺激する。

     初めて足を踏み入れる、知らない人ばかりがいる校庭、そこに溢れる得体の知れない騒がしい音、それが引き起こす不安と恐怖。そこではよく知っているはずの兄も、自宅にいる時とは別の顔を見せる。その場所で、苦痛をもたらす状況が生じるが、その状況を解決する方法が見つけられないのは、7歳の子供だけでなく、映画を見ているこちらも同じなのではないか。この状況が、さまざまな場所で起きていることに気づかされる。

  • プレゼンス 存在
    その家に棲む"プレゼンス"に同化する
    ★★★★

     "ゴーストの棲む家"は、ホラー映画の定番設定だが、そこで起きる出来事を"その家にいる何か"="プレゼンス 存在"の1人称視点で描くという発想がユニーク。スティーヴン・ソダーバーグ監督自身が撮影と編集も担当し、1シーン1ショットの長回しで、その家の中をあちらこちらへとさまよい歩く存在の、よるべない気持ちを描き出す。こちらもその視点に同化して、まるで透明人間になって、その家に住む人々の生の姿を覗き見しているような気分になる。

     脚本は『エコーズ』でも霊を描いたデヴィッド・コープ。この存在は何なのか、何をしようとしているのかという謎と、家族間のドラマを交錯させて、物語に没入させる。

  • ウィキッド ふたりの魔女
    フィクションの持つ力を見せつける
    ★★★★

     フィクション、虚構の持つ力を見せつける。風景も建造物も衣装も、人物像もストーリーも、ド直球のおとぎ話仕様。いかにもファンタジーらしい華やかな色と形が次から次へと現れて魅了する。原作のミュージカル舞台らしい"作り物感"は維持しつつ、映画ならではの演出がたっぷり。1つの曲を多様なシーンを組み合わせて構成、遠景の向こうにまた別の風景を展開させて世界の広さと奥行きを創出、室内を映す時にもカメラが空間を360度縦横無尽に動き回る。

     物語は普遍的。変わり者扱いされてきたヒロインが、初めて友だちを得る嬉しさ、初めて自分の力を認められる喜び、その力を解放するときの歓喜が、画面から溢れ出る。

  • 名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN
    あの時代の空気が生々しく伝わってくる
    ★★★★

     実在する人物のある時期を写実的に描く映画でありつつ、それが象徴するある時代の空気を、きっとそうだったに違いないと思わせる生々しさで描き出す。その時、起きていた状況はTVやラジオを通しても描かれる。その時代には、誰もが何かを変えたいと思い、それができると思って行動していた。その時代の息吹が伝わってきて、翻って、現在を満たしている空気を照らし出す。

     登場する何人ものミュージシャンたちが、それぞれに自分の歌を歌う姿が、歌詞の字幕と共にたっぷりとした長さで描かれて、曲自体の力で胸を打つ。同時に、その時代に"音楽"がどのようなものであり、どんな力を持っていたのかも伝わってくる。

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