略歴: アクションとスリラーが大好物のフリーライター。『DVD&ブルーレイでーた』『SCREEN』『Audition』『SPA!』等の雑誌や、ネット媒体、劇場パンフレット等でお仕事中。
近況: 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』『探偵マーロウ』『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』他の劇場パンフレットに寄稿。「シネマスクエア」誌にて、正門良規さんに映画とその音楽について話を聞く連載を開始。
日本ではNetflixで配信公開された『ヒットマンズ・ボディガード』は弾けたアクションコメディで存分に楽しめたが、その続編であるこちらは、ますますノリノリ。
凄腕の殺し屋に、キレると怖いその妻も加わって、ボディガードである主人公の受難は倍増。三者のやりとりがユーモアとして機能し、風光明媚なイタリアの風景を破壊しかねない銃撃戦やカーチェイスを展開させ、豪快に押し切る。
サミュエル&サルマ演じる夫婦の暴走に対して、それを受け止める主演のR・レイノルズの妙演がイイ。車にはねられたり、撃たれたりの状況はヘビーだが、それをギャグに転化してしまう軽やかさ。コメディ演技のセンスの良さを再認識した。
“エドガー・ライトの創作の感性は僕らのそれと波長が合った”と、ラッセルは振り返るが、それも納得。
スパークスの音楽と同様に、本作もユーモア満点であることは特筆すべき点。根底には奇才トッド・ラングレンにさえ“ヘンテコな音楽”と言われるものを作り、アートワークにもこだわる、スパークスの面白さがある。そして何より、スパークスの大ファンであるライトの愛情が宿り、異端の兄弟を輝かせる。
主観に基づいて作りこまれているので、いわゆるドキュメンタリーとは異質。スパークスとライトのアーティスティックな感性が融合したエンタテインメント……という方がしっくりくる。笑って、泣けた。必見!
主人公がイライラしている姿から、何やら不穏なムードが漂う。なぜ一家の大黒柱である彼を神経質な、ムカつく男に設定したのか? そこに注目しながら見ると納得の構造。
シティスリッカーを主人公にしたことで、まず野生の世界でのサバイバルがスリリングになる。ヒョウの不意の襲撃場面のスプラッター性などジャンル映画に目配せしつつ、スリラーを構築させた点が巧い。
開始早々の無茶ぶりやラッキー過ぎる展開など唐突な描写もあるし、環境保護の訴えも強引な気がしないでもない。が、それを差し引いても高濃度の緊迫感は買い。ジェンダー的メッセージを込めたような結末にも考えさせられた。
マーベル映画としては久しぶりにユーモアよりシリアスに振れた作品。友情から始まる物語は、その亀裂へと展開していく。
難病を抱えた者同士が友となり、超人化した後に、価値観の違いが明確になって敵対。そこに切なさを見ることもできるうえに、邪心と格闘する主人公の内面のドラマは『ヴェノム』の真面目なバージョンというべきテイストで、こちらも見応えがある。
そして主演のJ・レト。今回も肉体改造を含めての大熱演で、スゴい役者であることを再確認。コミック好きのエスピノーザ監督らしいスピード感のある語り口も光り、一気に楽しめる。NYが舞台なのに撮影のほとんどを英国で行なっていたことに驚いた。
もっとも論議を呼ぶのは、“この映画にグレムリンというバケモノが必要だったのか?”ということだろう。
ドックファイトはスリリングだし、銃座に閉じ込められているヒロインのひとりぼっちの奮闘に、ただただ目を見張る。が、戦争ドラマの渦中にバケモノが出てくると、途端にリアルな緊張感が減退する。
視点を変え、グレムリンが何かのメタファーであるとしたら? 通信機越しにセクハラ的な嫌がらせを受けるヒロインの姿を見れば、そこに注目したくなるはず。いずれにしても、ほとんど独り芝居で前半を引っ張り、後半ではヒットガールと化す、クロエの熱演は必見。