猿渡 由紀

猿渡 由紀

略歴: 東京の出版社にて、月刊女性誌の映画担当編集者を務めた後、渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスターのインタビュー、撮影現場レポート、ハリウッド業界コラムなどを、日本の雑誌、新聞、ウェブサイトに寄稿する映画ジャーナリスト。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。

猿渡 由紀 さんの映画短評

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  • セイント・フランシス
    笑わせながらシリアスなトピックに触れていく
    ★★★★

    設定から、子供と心を通わせる中で何かを発見するというありがちな話かと思ったら、嬉しい形で裏切られた。まず主人公のブリジットがとてもリアル。フェミニストを自認する彼女はモダンな生き方をしているが、褒められない行動を取るし、間違いもおかす。中絶という決意もあっさりと下すが(今のアメリカで中絶をこんなふうに取り扱うのもあっぱれ)、だからといって何も感じていないわけではないのだ。ほかにも、産後うつや避妊、人前での授乳など、現代の女性が直面する問題を、観客を笑わせつつ触れていくやり方は、実にうまい。すごく共感でき、感動できる映画。今作で脚本家デビューしたオサリヴァンの次回作が今から楽しみ。

  • 2つの人生が教えてくれること
    どちらに転んでもインスピレーションは見つけられる
    ★★★★

    もしあの時こうなっていたら人生はどうなっていたのか。そう考えることは誰にでもあるだろうが、ファンタジー的要素のある今作は、どっちになっていたとしてもインスピレーションや愛を見つけられるのだというポジティブなメッセージを送る。ふたつのパターンの人生を同時進行で見せていくやり方は実にスムーズ。主人公の女性がアニメーション業界でのキャリアを目指すというのも、映画ではあまり見ない設定で新鮮。アメリカで中絶の権利が脅かされている時だけに、その選択肢について触れられないことへの批判は出るかもしれないが、それだとこの話は成立しないので、害のないラブコメということでそこは見過ごすことにする。

  • ブロークン・ジェネレーション
    80年代にこんな映画を女性が撮っていたのは興味深い
    ★★★★★

    家でも学校でも不幸で、将来に何の希望も持てないふたりのティーンが暴走する物語。「The Boys Next Door」(隣に住む少年たち)という原題が、一見普通に見える少年も実は心の中にどんな鬱憤を抱えているかわからないということを示唆する。そういった社会的な視点から作られたのだろうが、彼らの行動の先に建設的なものが何もなく(まあ、そんなことを考えない愚かなふたりなのだが)、ひたすら暗い。バイオレンスも強烈。これでもR指定に収めるために10回も編集し直したというから、元はどれだけ残酷だったのか。ただ、80年代こういう映画を女性の監督が作っていたという事実は、非常に興味深い。

  • デイ・シフト
    デイヴ・フランコが笑わせてくれる
    ★★★★★

    今作で監督デビューを果たすJ・J・ペリーは、「ジョン・ウィック」や「ワイルド・スピード」シリーズでスタントコーディネーターを務めてきた人で、お得意のアクションがてんこ盛り。それらのシーンにはバイオレンス、コメディ、コミックブック的雰囲気が混ぜ込まれていてやたらと忙しいものの、新鮮なインパクトには欠ける。ストーリーももっと面白くなれたのではという気がしなくはない。それでも、ジェイミー・フォックス、スヌープ・ドッグ、デイヴ・フランコら魅力的なキャストが引っ張る。とくにフランコのコメディの力量には感心させられた。お気楽なエスケープ映画だが、かなり残酷でもあるのでそこはご注意を。

  • スワンソング
    失われていくコミュニティへの思い
    ★★★★

    トッド・スティーブンスの自伝的映画「Edge of Seventeen」を米国公開時に劇場で見たので、とりわけぐっとくる。今作の主人公ミスター・パットのモデルは、高校生だったスティーヴンスにゲイコミュニティの魅力を教えてくれた人物。同じ街が舞台で、フィルムメーカーとして成長したスティーヴンスが一周して戻ってきた感じ。ミスター・パットと同世代の人たちの多くはAIDSで死んでしまった。そんな彼が昔よりずっとオープンになった世の中を見て「もうどうやってゲイをやればいいかわからない」と言うのも興味深い。失われていくコミュニティへの思い、愛、友情、孤独などの感情をユーモアを含めて語る、美しい1本。

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