略歴: キネマ旬報社に約20年所属し、映画雑誌「キネマ旬報」やムック本および単行本などの編集に携わった後、シネマトゥデイに所属。同社退社後にフリーの編集者&ライターとなり、本の企画・編集や各種記事の取材・執筆などを行っています。
近況: 編集を担当させていただいた、全国巡回の展覧会『富野由悠季の世界』の図録が、キネマ旬報社にて好評発売中です。展覧会『富野由悠季の世界』は、延期された2会場の新たな日程も決まり、次回は静岡県立美術館にて9月19日から開催です。なお、図録は、会場以外でも、キネマ旬報社のオンラインショップや書店注文にて、購入可能です。
美人で仕事ができるらしいこと以外には人としての魅力がなさそうな“嫌な女”を演じた長澤まさみ、繊細な芝居で謎の男を存在感豊かに演じた高橋一生、さらには、芸達者な吉田鋼太郎や川栄李奈など、少数精鋭のキャストが好演。
コンテストのグランプリをとった企画とはいえ、新人監督によるオリジナル脚本にも関わらず、潤沢とはいえないだろうがきちんと予算をかけて丁寧に撮られているし、一組の男女の愛の所在を解き明かすものすごく小さな話だが、ラブミステリー+ロードムービーといった趣向で、最後まで飽きさせない。
松たか子&坂元裕二によるエンドロールの曲と共に、いい余韻を残してくれる作品。
まだまだ噛めば充分に味がしそうな設定やキャラクターを惜しげもなく切り捨てていくのは勿体ないような気もするが、次々と世界観を更新していく大胆さは新鮮な面白さに満ちていて、終始飽きさせない。
前作とはまた違ったスタイルのハードなアクションにも挑戦しているし、ブラックな笑いやスケール感もアップ。
特別出演的な役割かと思ったエルトン・ジョンの大活躍も楽しい。
続編の構想もあるようなので、3作目も早く観たい。
キャスト陣の好演もあって貴重な和製ファンタジーとして楽しめたし、原作ファンとしても、松雪泰子が演じたラストなどホムンクルスの3人はイメージとも特に合っていて大健闘の出来だと思って観た一方、原作の要素を詰め込み過ぎず、まずはもっと世界観やキャラクターの魅力などを活劇として楽しませる作品を観たかったとも思う。また、架空の世界なので、日本人だけしかいないのもよいとは思うのだが、イタリアでの撮影がテーマパークで撮ったかのように見えてしまったり、冒頭の少年時代の子役の芝居が残念なことなどの違和感をどれだけ早く納得して受け入れられるかが、本作を楽しめるかどうかの分かれ目になりそう。
現在の日本の漫画原作の実写化は、良くも悪くもまず原作のビジュアルに近づけることを無視できないが、その点でのキャスティングは大成功。しかしながら本作は、ヒロインが「一度聴いたら忘れられない人を虜にする歌声」という設定も重要。中条あやみの歌声は悪くはないのだが、作品全体を牽引していくには若干物足りない。音楽が題材の場合、歌唱力を重視してミュージシャンをキャスティングする場合もあるが、その判断は難しいところ。本人が歌うリアルさや劇中バンドをデビューさせる話題性もあったと思うが、MAN WITH A MISSIONによる曲がいいだけに、いっそ歌声はプロのミュージシャンによる吹替でも良かったのでは…。
いわずとしれた又吉直樹による芥川賞受賞作の映画化で、それぞれ別のコンビを組む二人の若手漫才師の約10年に及ぶ交流を描く。Netflixのドラマ版では全10話で原作の余白を埋めて膨らませていたのを、今回の映画版では原作を削ぎ落して密度をあげており、時間経過に関しては映画版では伝わりにくいところもあるものの、双方ともに成功していると思う。独特の世界観を持つ板尾創路らしさは影を潜め、職人的な演出に徹しているが、今回はリアルな芸人を描くという点で、らしさが活かされていた(太鼓のお兄さんと馬のシーンも板尾らしかったが)。また、クライマックスの菅田将暉がコンビを組むスパークスの漫才は感動必至!