パラレルワールド・ラブストーリー (2018):映画短評
パラレルワールド・ラブストーリー (2018)ライター2人の平均評価: 3
原作ファンなら満足度高し
24年前に刊行されたパズルのような原作から、壮大で哲学的なテーマを薄くし、『君の名は。』的なラブストーリーを濃厚に、着地は映画オリジナル。それで108分の尺にまとめ上げた脚本家の苦労と功績は、評価に値する。そこに確実に俳優として、怪優・染谷将太と対峙している主演の玉森裕太に、既成曲とは思えないほどハマっている宇多田ヒカルの主題歌がプラス。ただ、ここまでのガチなSFと繊細で丁寧な演出が特徴的な森義隆監督との相性はイマイチであり、後半につれての失速感も目立つ。とはいえ、同じ東野圭吾原作の『ラプラスの魔女』のような惨状になっていないので、ご安心あれ。
振り幅の大きい染谷将太の怪演も要注目
最先端のハイテク企業に勤める研究員が、目覚めるたびに2つの平行世界を行き来する。片方では憧れの女性が親友の恋人、もう片方では彼女が自分の恋人。どちらが現実で、どちらが夢なのか、それとも…?ということで、フィリップ・K・ディック的な印象を受ける東野圭吾原作の映像化。恐らくSFファンであれば、大まかなオチの予想はついてしまうかもしれないが、しかし一歩間違えると混乱しかねない複雑な構造のストーリーを、邦画には珍しく過剰な説明を抜きにしてまとめ上げた森義隆監督の感覚的な演出はなかなか手堅い。いい人からヤバい人への振り幅が大きい染谷将太の怪演も期待通り。