庵野秀明、エヴァからゴジラへ創造の裏側~『シン・ゴジラ』を作った男たち - こだわりのビジュアル
『シン・ゴジラ』レア資料公開!
東宝製作による約12年ぶりの日本版『ゴジラ』シリーズ最新作にして、大ヒットアニメ「エヴァンゲリオン」の庵野秀明が脚本・総監督を務めた『シン・ゴジラ』。特撮ファンはもちろん、多くの「エヴァ」ファンからも注目を浴びる話題作に、庵野総監督はどう立ち向かったのか。数々の資料写真や庵野総監督を支えた盟友たちの証言を追いながら、『シン・ゴジラ』の裏側を探っていきます。(取材・文:神武団四郎)
■竹谷隆之(『シン・ゴジラ』雛型造形)
■初代へのリスペクト
『シン・ゴジラ』で要となるゴジラのデザインを担当したのが、造形家の竹谷隆之だ。卓越した造形力とデザインワークで国際的に高く評価されている竹谷は、これまで数多くの映像作品に参加。『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』や『巨神兵東京に現わる 劇場版』のマケット(雛型模型)などを手がけている。そんな竹谷に『シン・ゴジラ』のオファーが舞い込んだのは、2014年の暮れだった。
「まず(監督・特技監督)樋口真嗣さんから電話があり、詳細はまだ言えないけれど背びれのある怪獣のデザインをお願いしますと(笑)。その後に、庵野さんと樋口さん、尾上克郎さんと打ち合わせをしました」
「前田真宏(ゴジラコンセプトデザイン)さんのコンセプトスケッチをもとに、具体的なゴジラの形を図面ではなく立体物として完成させたいということで、その時に庵野さんが持ってきたのが、初代ゴジラのフィギュア。初代へのリスペクトにしたいということでしたが、単に形をなぞるのではなく、初ゴジのいいところを吸収しながらデザインしてほしいということでした」(竹谷)
■“完全生物”誕生
庵野総監督が提示した『シン・ゴジラ』のコンセプトは“完全生物”。地球に住むあらゆる生き物たちで形成された、ピラミッドの頂点に位置する存在だ。その生態に関するあらゆる要素は、全て庵野総監督による設定が出来上がっていた。
「庵野さんが作る物には全て理由があるんです。警戒する必要がないから耳はいらないとか。ですからデザインもそんな法則に乗っ取っています。皮膚の形状で参考にしたのはゴーヤ。庵野さんの“ただれて崩壊しかけたような皮膚”という要望が、縦のラインの中にランダムにイボがあるゴーヤが近いのかなと。うちで植えているゴーヤを型取りしたものを見せたら『これこれ、こんな感じ』と決まったんです(笑)。偶然にできた初ゴジの着ぐるみのしわも生かしていますが、オマージュだけでなくカメラがあおった時にたるみがどう見えるかも考慮しているようでした」(竹谷)
『シン・ゴジラ』の怪獣描写は全てCG。国内の『ゴジラ』シリーズでは初となる、フルCGで制作された。どのように撮影するかは、デザインをする上で特に意識していなかったそうだが、中に人が入れないシルエットにしたいという意向は打合せの段階からあったという。
「どう撮るかの前に、まずゴジラはどうあるべきか意見を出し合って形にしていったんです。ただ足の形状をどうするかの話の時、人が入れない形にしたいという要望はありました。最初のハリウッド版『GODZILLA』(1998)はイグアナで、最近の『GODZILLA ゴジラ』(2014)はグリズリーのようだったりと、ハリウッド版では生物のマナーにのっとってデザインされていました。でも『シン・ゴジラ』では生物として突き抜けた存在で、それをデザインにも生かした方が日本らしいんじゃないかということですね」(竹谷)