「先生はオカマなの?」同性愛の教師描き、上映禁止の国もあった30年前の衝撃作!
第23回ロンドン・レズビアン&ゲイ映画祭で、映画『ナイトホークス』30周年記念上映とトークショーが行われた。昼は学校で教え、夜には“ミスター・ライト”を探し求めてゲイバーをはいかいする同性愛の男性教師を描いた『ナイトホークス』は1978年製作でイギリスでは1979年に公開された映画。公開当時は上映禁止の国もあったという衝撃作だ。「先生はオカマなの?」という質問をきっかけに生徒にカミングアウトする場面など、30年を経た今もショッキングな内容だ。
「シルヴェスター・スタローンが出る方を期待してきた人はいない?」(1981年製作の同名映画で、シルヴェスター・スタローン主演作)と笑わせたのはトークの司会として登場したイギリスの人気コメディアン、マット・ルーカス。デヴィッド・ウィリアムズとコンビを組んだBBCのコメディスケッチショー「リトル・ブリテン」は大ヒットシリーズとなり、アメリカ進出も果たしている。ティム・バートン監督の映画『不思議の国のアリス』にも出演するなど俳優としても活躍中だ。ゲイとしても知られ、シビル・パートナー制度で結ばれた男性と別れた際には、セレブのゲイ離婚第一号と騒がれたりもしている。
そのルーカスを相手に「教師のような職業の者がカミングアウトすることが、この30年前の映画と同じように、今だに難しい国もある。そういった意味では状況は変わっていないとも言える」と話すのは、脚本のポール・ハラム。
古さを感じさせないのは内容だけではなく、映画の手法も。主人公の孤独、焦燥感をあぶりだして見せる、お相手を探してせわしなく動く瞳のアップを長回しで撮ったショットや、ドキュメンタリー風に撮られた当時のロンドンのシーンなど、今も新鮮さを失っていない。
同映画祭の主催を務めるブリティッシュ・フィルム・インスティテュート(以下BFI)に対してハラムは「この映画が語られるのは、いつもその内容についてばかりで、ロン(・ペック監督)が気の毒だった。30周年記念としてBFIが出すDVDにはギネスブックにも載りそうなくらい厚い小冊子がついていて、映画としての『ナイトホークス』についてきちんと評価してある」と感謝を述べた。
BFIは映画とテレビの振興を目的とする団体で、ロンドン映画祭なども運営している。困難を極めた同映画製作、公開までを描いた『ナイトホークス2』との2枚セットとなる『ナイトホークス』30周年記念DVDはBFIから発売中。(取材・文:山口ゆかり / Yukari Yamaguchi)