加瀬亮、デニス・ホッパーの息子ヘンリーと新作で共演、彼の明かした父への思いに心を寄せる
ガス・ヴァン・サント監督の最新作『永遠の僕たち』で、主人公イーノックにしか見ることができない日本兵の幽霊ヒロシを演じた加瀬亮が、イーノックを演じた、故デニス・ホッパーを父に持つヘンリー・ホッパーとの交流、そして死がもたらす喪失感について語った。
もともと本作撮影前から、ガス・ヴァン・サント監督と交流があったという加瀬。サント監督からオーディションの誘いを受け、見事ヒロシ役を射止めた加瀬は、撮影を振り返り「ちょうど向こうで誕生日を迎えたんですけど、ガス監督がレストランを用意して祝ってくれました。みんなのチケットを取ってくれて、スタッフも含めてみんなでオーケストラの演奏を聴きに行ったりとか、とにかくよくしてくれました。みんな垣根がなくて、キャストも、スタッフも、泊まっていたホテルのホテルマンたちも一緒に、よく飲みに行っていましたね」と非常にアットホームだった撮影の様子を語る。
だからこそ、共演者との距離も非常に近くなったそうで、共演者のヘンリー・ホッパーは、撮影当時、末期がんの闘病生活を送っていた父デニス・ホッパーのことも話してくれたという。撮影の合間に寄った古本屋にあったデニス・ホッパーの写真集を二人で眺めながら「すごく影響を受けているし、尊敬している。俳優としては悪役を演じることが多いけど、全然そんな人じゃない。本当はすごく優しい父親なんだ」と語ったというヘンリーは、図らずも本作で、不治の病に侵された少女と出会い、その最期に寄り添う少年・イーノックを演じた。そして、残念ながら、デニス・ホッパーは撮影が終わったわずか1か月後に亡くなった。そんなヘンリーと多くの時間を共に過ごし、お互いの好きな音楽、映画、本について語り明かしたという加瀬は、実生活と重なる役柄を演じたヘンリーの心情を「お父さんの病気がすごく悪くなっていた時期だったので、本人もいろいろなことを感じていたと思います」とおもんぱかった。
そして、本作で描かれている死による喪失感や心の穴について、「僕は祖父母を亡くしてるんですけど、そういうポカーンとした感じって、埋まらないものなんじゃないかなと思います。でも、確かにこの世には姿がないけど、同時に自分にとっては存在している。埋められない穴をなんとかしたいと思った時期もあったけど、誰もがいつかは死んでしまう。この映画も生と死を同じ次元でとらえていると思うんです」と優しく語ると、「ガス監督の映画(のキャラクター)はいつも絶望的にひどい状況に置かれているけど、それを包み込む軽やかな優しさというか、前に続いていく感じがある。この映画もそういうところが好きです」と続けた。深刻なはずの物語が、どこかおとぎ話のように感じられるのは、そのサント監督作品特有の優しさのためなのかもしれない。死を身近に感じながらも恋をする若き二人の限りなく純粋でいとおしい姿を、ヒロシのように温かく見守ってほしい。(写真・文:小島弥央)
スタイリスト:梶雄太 ヘアメイク:宮田靖士(VaSO)
映画『永遠の僕たち』は、12月23日よりTOHOシネマズ シャンテ、シネマライズほか全国順次公開