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愛も希望もない…原子力エネルギーに翻弄される家族の物語に製作陣が込めた思い

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出演者の黒田耕平は「震災の時、何かしたいが、何をしたらいいのかわからなかった」と当時を振り返った
出演者の黒田耕平は「震災の時、何かしたいが、何をしたらいいのかわからなかった」と当時を振り返った - 写真:中山治美

 原子力エネルギーに翻弄(ほんろう)される福島の家族を描いた映画『あいときぼうのまち』が先ごろ行われた第9回大阪アジアン映画祭の特集企画「東日本大震災から3年~『メモリアル3.11』」内で上映された。上映会場のシネ・ヌーヴォでは菅乃廣監督、脚本の井上淳一、俳優・黒田耕平が舞台あいさつを行った。

 同作品は福島出身の菅乃監督が、3.11後に故郷の物語を作りたいと企画したもの。当初は作家・堀江邦夫の体験ルポ「原発ジプシー」の映画化を考えていたという。しかし福島第一原子力発電所事故が風化されつつある現状を見据え、1945年に旧制私立石川中の生徒が勤労動員でウラン採掘をさせられていた史実を皮切りに、原発建設における反対運動、東日本大震災、そして現在と、今につながる4世代家族のドラマにしたという。

 そしてタイトルは、井上が敬愛する故・大島渚監督のデビュー作『愛と希望の街』(1959)を平仮名にした。階級差別を描いた同作品は当初『鳩を売る少年』のタイトルだったが、会社に反対された大島監督が反語的な意味に変えたという、いわくがある。井上は「震災に伴う全国の避難者はいまだ26万人以上に及ぶ。実際は愛も希望もない。だから、このタイトル以外に思いつかなかった」と語った。

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 撮影は2012年冬に行われ、津波被害を受けたいわき市の薄磯地区でも行われた。菅乃監督は「許可を得て、家屋の土台だけが残された場所で撮影していたとき、偶然、草刈りに来たご家族とお会いしました。『ここで実際に人が死んでいるんだよ』と聞かされ、なおさら、きちんとした作品を作らなければという思いにかられました」と作品に込めた思いを明かした。

 この日は山形や名古屋など各都市から観客が訪れ、「改めて福島と原子力エネルギーがここまでかかわりがあるのかと思い知らされた」と感想を述べるなど、おのおのが福島が背負ってきた歴史を考えさせられたようだった。(取材・文:中山治美)

映画『あいときぼうのまち』は6月21日よりテアトル新宿ほか全国順次公開

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