Q |
この有名な古典を題材にした理由はなんですか?
(以下、B=ティム・バートン M=リサ・マリー) |
B |
伝説というのは豊富にある国が多いけれど、アメリカにはとても少ない。この“スリーピー・ホロウ”の伝説は数少ないアメリカの伝説の中でも、最も有名なものだ。あるいは、伝説が少ないからこの話が有名なのかもしれないけれど。とにかくこの物語には、私の好きな要素がたくさん詰まっているんだ。それから個人的に、この伝説の発祥地であるニューヨークの北部は大変に好きな場所。スリーピー・ホロウという名前の町は、実際に存在するんだよ。もちろん、僕達は映画の製作に入る前にそこを訪れてみたけど、スリーピー・ホロウ・スクールがあったり、パトカーには“首なし騎士”のマークがついていたりしてとてもびっくりしたよ(笑) |
Q |
すばらしいビジュアルですが、何か参考にしたものはありますか? |
B |
あらゆるものから、インスピレーションを受けていると思う。僕は子供の頃から怪獣映画やホラー映画、そしてディズニーの作品が大好きだった。だから、皆さんが言うようにディズニーの『スリーピー・ホロウ』のアニメももちろん見ているよ。特に、チェイスシーンが気に入っている。あの動き、デザイン……どれをとってもすばらしい! このシーンのために、僕はアニメの世界に入ったと言っても過言ではないんだ。また、『フランケンシュタイン』からの影響も受けている。僕は今回の映画の脚本を読んだ時に、今までのホラー映画の要素がいろいろと入れられると思った。そして、その通
りにしたんだ。 |
Q |
ジョニー・デップについて。 |
B |
彼のことはとても好きだよ。彼は言葉を使わずに、何かを表現することができるんだ。デップとはこれが3度目の仕事になるけど、彼は自分のキャラクターを、毎回違った形で出してきて、いつも違った面
を見せてくれる。
だから一緒に仕事をするのは、とても楽しいんだ。それに、こういう撮影だと泥の中には入りたくないとか、役者からそういった文句が出ることが多い。でも、彼はあまり文句を言わずにやってくれるから、僕としては仕事がやりやすい相手なんだ。 |
Q |
クリスティーナ・リッチについて。 |
B |
彼女が特にすばらしいのは、言葉を使わずに感情を表現できるところ。それに、彼女の表情は、本音では何を考えているのかわからない感じがするだろう? デップもそうだ。いい人なのか、悪い人なのか、心の中では本当は何を考えているのかわからない。そういったニュアンスが、今回の映画ではどの役にも必要だったんだ。 |
Q |
クリストファー・リーについて。 |
B |
僕は彼のことが、昔からとても好きなんだ。とにかく、憧れの人と仕事ができて嬉しかったよ。リサと二人で彼と最初に会った時、ホテルで2時間ぐらい話しをしたんだ。彼の目に見つめられて、彼の声をきくと、僕はまさにドラキュラの魔法にかかったようだったね。彼が立ち去る後姿を見て、今でも彼はドラキュラを演じることができると思った。映画の冒頭のシーンは、彼にやってもらって本当によかった。まさに“パーフェクト”だよ。 |
Q |
クリストファー・ウォーケンについて。 |
B |
彼のすばらしいところは、やはり言葉を使わずになにかを表現できるところだ。最初にオファーした時に、彼は「この役は頭がないんだろ?それに僕は馬が嫌いだ」と言ってたんだ(笑)。それなのになぜ引き受けたかというと、キス・シーンがあったからなんだよ。彼は映画の中で今まで一度もキス・シーンがなかったんだ。だから僕は「これが最初で最後だよ」って言ったんだよ(笑)。ちなみに、今回の役では何をモデルにしたのか?って聞いたら、“ウルフマン”だと言っていた(笑)。彼の役作りのやり方は、いつもとてもユニークなんだ。 |
Q |
衣装について。 |
B |
作品の中のビジュアルは、全てが登場人物と同じように重要だと考えている。衣装やセット、美術などが、観客に与える印象はとても大事だからね。今回、僕はこの物語を“フェアリーテール”と考え、時代考証よりもそのイメージの方を大切にした。スリーピー・ホロウで着用されていたオランダ系移民の実際の衣装は、正直言ってあまり好きではなかった。もちろん、それがベースにはなっているけどね。 |
Q |
モノクロにしようと考えたことは? |
B |
古い映画のテイストを出したかったので、モノクロにするということは考えたよ。だけどスタジオはそれを好まないんだ(笑)。知ってのとおり、『エド・ウッド』は興行的には失敗したからね。映像だけでなく、この映画では音楽やキャストなど、すべてがサイレントっぽさを出すように意識したよ。 |
Q |
現場とプライベートでは、バートン監督はどう違いますか? |
M |
仕事中の彼は、とても集中力があります。彼と仕事をするのは楽しいし、二人にとってはとても自然なこと。お互いにお互いのことをよく分かり合っているので、言葉では言わなくても、目線でお互いの気持ちを伝えることができるのです。ですから、彼と一緒に仕事をするのは大好きです。 |
B |
仕事中の僕の方が、実際の僕よりもひどいよ(笑)。 |
Q |
最近のホラー映画についてどう思いますか? |
B |
僕は昔の映画の大ファンだ。映像がとても美しいし、ムードがある。残念ながら、最近の映画はムードに欠けているものが多いと思う。だから、余計に古い映画に愛着を感じるのかもしれないね。ホラー映画に対しては、僕は普通
の感覚では観ていないんだ。両親が言うには、僕は歩く前からモンスター映画を観ていたそうだよ。全然怖いとは思わずに。僕にとってはホラー映画を観るよりも、現実の世界の方がずっと怖いことが多い。だけど、ホラーだけじゃなくて、映画はどんなジャンルでも大好きだからなんでも観るよ。
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M |
昔の映画には、私もとても惹かれます。最近の映画には、あまりインスピレーションを受けないですね。もっとも、80年代には『ハロウィン』などのいい作品もありましたが。 |
Q |
この映画のために、どんな映画を参考にしたらいいかというアドバイスを受けましたか? |
M |
特に、というのはありません。私達二人がプライベートでよくすることが、ホラー映画を観ることなので(笑)。 |
Q |
映画を製作することについて。 |
B |
僕にとって、映画を作る時はいつも“enjoy”。映画が傑作になるかどうかとか、そんなことはわかるはずもないし、考えない。いつも楽しんでいる。映画を撮っている時は、あまりにも作品に近くなり過ぎているので、自分ではすばらしいと思っていても、そう思っているのは世界中で自分ひとりだけかもしれない。だけど、僕は自分が楽しいんだから、それでも全然構わないと思ってるよ。 |
M |
この映画を撮影している時に、私はこれは特別
な作品になると思いました。それはスタッフやキャストなど、みんながこの作品に惚れこんでいるということが実感できたからです。みんなが心からこの映画を愛している。現場では、みんながそういうふうに感じていました。そして映画が完成し、私にとってもみんなにとっても、思ったとおりに特別
の作品になったと思います。 |