2024年 第81回ベネチア国際映画祭コンペティション部門21作品紹介
第81回ベネチア国際映画祭
8月28日~9月7日(現地時間)に開催される第81回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門21作品を紹介(コンペティション外を除く)。今年の審査員長は、フランスの名女優イザベル・ユペールが務め、『ニュー・シネマ・パラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレ監督や『異人たち』のアンドリュー・ヘイ監督、中国人女優チャン・ツィイーらが審査員に名を連ねる。ラインナップの目玉は何といっても、大ヒット映画『ジョーカー』の続編『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』(10月11日公開)。また、ダニエル・クレイグと鬼才ルカ・グァダニーノ監督がタッグを組んだ『クィア(原題) / Queer』や、アンジェリーナ・ジョリーが20世紀を代表するオペラ歌手マリア・カラスを演じるパブロ・ラライン監督による伝記映画『マリア(原題) / Maria』など注目作がそろった。金獅子賞の行方はいかに!(文:岩永めぐみ/平野敦子/本間綾香)
<金獅子賞(最優秀作品賞)>『ザ・ルーム・ネクスト・ドア(原題) / The Room Next Door』
製作国:スペイン
監督:ペドロ・アルモドバル
キャスト:ティルダ・スウィントン、ジュリアン・ムーア
110分
【ここに注目】
『オール・アバウト・マイ・マザー』『ペイン・アンド・グローリー』ほか数々の代表作を持つスペインの巨匠、ペドロ・アルモドバルによる初の長編英語作品。ティルダ・スウィントンとジュリアン・ムーアのオスカー女優2人を主演に迎えた本作は、戦場ジャーナリストのマーサと、彼女の友人で作家のイングリッドを通じて、断絶した母と娘の物語を描く。アルモドバル監督は2021年の『パラレル・マザーズ』が第78回ベネチア国際映画祭コンペティション部門に選出され、主演のペネロペ・クルスが女優賞を受賞し、アカデミー賞主演女優賞にもノミネートされた。2大女優が競演する新作も、ベネチアをきっかけに今後のオスカーレースに絡む可能性が高そうだ。
<銀獅子賞(審査員大賞)>『ヴェルミーリオ(原題) / Vermiglio』
製作国:イタリア、フランス、ベルギー
監督:マウラ・デルペロ
キャスト:トンマーゾ・ラーニョ、ジュゼッペ・デ・ドミニコ
119分
【ここに注目】
初の長編劇映画監督作『マターナル(原題) / Maternal』がロカルノ映画祭でスペシャルメンションなどを受賞したイタリアの女性監督、マウラ・デルペロ監督の2作目の劇映画となる戦争ドラマ。第2次世界大戦末期の1944年、イタリア北東部にある山村ヴェルミーリオ。戦争とは無縁の山あいの村に、脱走兵のピエトロが現れ、校長一家の3姉妹の長女ルチアと結婚。しかし、それが予想外の運命をもたらす。本作は戦争を背景にしながら、古い世界から新しい世界への移行、子供と大人、生と死といったあらゆるテーマを含んだ物語だという。ピエトロをドラマ「ZeroZeroZero 宿命の麻薬航路」などのジュゼッペ・デ・ドミニコが演じている。
<銀獅子賞(最優秀監督賞)>ブラディ・コーベット監督『ザ・ブルータリスト(原題) / The Brutalist』
製作国:イギリス
監督:ブラディ・コーベット
キャスト:エイドリアン・ブロディ、フェリシティ・ジョーンズ
215分
【ここに注目】
『戦場のピアニスト』のエイドリアン・ブロディ、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のフェリシティ・ジョーンズが主演。215分という長尺の本作は、ホロコーストを生きのびた建築家と妻が終戦後、アメリカで新生活を築こうとするが、謎めいた裕福なクライアントとの出会いが彼らの人生を一変させる、というストーリーだ。監督は、『シークレット・オブ・モンスター』が、第72回ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門の監督賞と初長編作品賞を受賞したブラディ・コーベット。ナタリー・ポートマンが主演した長編第2作『ポップスター』が第75回ベネチア国際映画祭コンペティション部門に選出されるなど、ベネチアとは相性のいい監督だけに受賞が大いに期待される。
<最優秀女優賞>ニコール・キッドマン『ベイビーガール(原題) / Babygirl』
製作国:アメリカ
監督:ハリナ・ライン
キャスト:ニコール・キッドマン、ハリス・ディキンソン
114分
【ここに注目】
ニコール・キッドマンと、『逆転のトライアングル』『アイアンクロー』など注目度上昇中のハリス・ディキンソンが主演。女性CEOが若いインターンの男性と不倫関係になり、キャリアも家庭も崩壊の危機に直面するというA24製作のエロティックスリラーだ。監督・脚本をスラッシャー映画『BODIES BODIES BODIES/ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』が批評家から絶賛されたオランダ出身のハリナ・ラインが務めた。ほかに、アントニオ・バンデラス、ジャン・レノ、大ヒットホラー『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』でブレイクしたソフィー・ワイルド、ユアン・マクレガーの娘エスター・マクレガーが共演している。
<最優秀男優賞>ヴァンサン・ランドン『ジュエ・アベック・ル・フー(原題) / Jouer avec le feu』
製作国:フランス
監督:デルフィーヌ・クラン、ミュリエル・クラン
キャスト:ヴァンサン・ランドン、バンジャマン・ヴォワザン
110分
【ここに注目】
『ティエリー・トグルドーの憂鬱』で第68回カンヌ国際映画祭男優賞を獲得したヴァンサン・ランドンが、極右グループに入った息子を憂慮するシングルファーザーを演じるドラマ。男手ひとつで2人の息子を育ててきた50歳のピエール。次男は大学進学が決まった一方で、道を踏み外した長男が極右グループに接近し、やがて悲劇が起こる。『ヴォワ・ドュ・ペイ(原題) / Voir Du Pays』が第69回カンヌ国際映画祭の「ある視点部門」脚本賞を受賞したデルフィーヌ・クランとミュリエル・クランの姉妹が、ローラン・プティマンジャンの小説「夜の少年」を映画化。極右グループに入る長男を、『Summer of 85』や『幻滅』で印象的な演技をみせたバンジャマン・ヴォワザンが演じる。
<最優秀脚本賞>ムリロ・ハウザー、ヘイター・ロレガ『アイム・スティル・ヒア(英題) / I’m Still Here』
製作国:ブラジル、フランス
監督:ウォルター・サレス
キャスト:フェルナンダ・トーレス、セルトン・メロ
135分
【ここに注目】
1971年のブラジルを背景に、マルセロ・ルーベンス・パイヴァが母親のユーニス・パイヴァについて執筆した回顧録を基に描く歴史ドラマ。軍事政権に反対して捕らえられた夫・元ブラジル労働党議員ルーベンス・パイヴァの失踪により一変したユーニスと5人の子供たちの姿を映し出す。『セントラル・ステーション』などのフェルナンダ・モンテネグロ、彼女の娘で『リオ、ミレニアム』などのフェルナンダ・トーレスらが共演。『モーターサイクル・ダイアリーズ』が第57回カンヌ国際映画祭エキュメニカル審査員賞、『セントラル・ステーション』が第48回ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞するなど、国際的に高い評価を得ている監督が、ベネチアでの栄誉を目指す。
<審査員特別賞>『エイプリル(英題) / April』
製作国:ジョージア、フランス、イタリア
監督:デア・クルムベガスヴィリ
キャスト:イャ・スキタシュヴィリ、メラーブ・ニニッゼ
134分
【ここに注目】
ジョージア出身のデア・クルムベガスヴィリは、長編デビュー作『ビギニング(英題) / Beginning』が、サン・セバスチャン国際映画祭で作品賞、監督賞、脚本賞を受賞した女性監督。本作は、村にある唯一の病院で産婦人科医として働く女性が主人公。多くのリスクがあるにもかかわらず違法な中絶手術を行う彼女は、医師としてヒポクラテスの誓いに身をささげ、誰もやらないことを行うと決心していた。クルムベガスヴィリ監督は「この映画は、人間の不可解な面だけではなく、人生についての現実的な側面をも掘り下げています」と語っている。『独裁者と小さな孫』などのイャ・スキタシュヴィリや『クーリエ:最高機密の運び屋』などのメラーブ・ニニッゼが出演する。
<マルチェロ・マストロヤンニ賞(最優秀新人賞)>ポール・キルシェ『ルー・アンファン・アプレ・ウー(原題) / Leurs enfants apres eux』
製作国:フランス
監督:ゾラン・ブケルマ、リュドヴィック・ブケルマ
キャスト:ポール・キルシェ、アンジェリーナ・ヴォレス
146分
【ここに注目】
1992年8月、フランス東部の町。14歳のアンソニーはステファニーに一目で恋をする。その夜、彼はこっそり父親のバイクを借り、彼女に会えることを期待してパーティーへと出かける。しかし翌朝、バイクが消え、彼の人生が一変する。原作はフランスで最も権威ある文学賞の1つ、ゴンクール賞を受賞したニコラ・マチューの小説。『ウィリー・プルミエール(原題) / Willy 1er』や『シャーク・ド・フランス』などジャンル映画を得意とするゾラン・ブケルマとリュドヴィック・ブケルマの双子の兄弟監督が、少年から大人への通過儀礼を鮮烈に描いた作品に挑戦。『Winter boy』のポール・キルシェが主人公を演じ、ジル・ルルーシュやリュディヴィーヌ・サニエなどが共演する。
『カンポ・ディ・バッタリア(原題) / Campo di battaglia』
製作国:イタリア
監督:ジャンニ・アメリオ
キャスト:アレッサンドロ・ボルギ、ガブリエル・モンテシ
104分
【ここに注目】
前線から重傷者が運び込まれる第1次世界大戦中の軍病院で働く、軍医のステファノとジュリオ、そしてボランティアに従事する学生時代からの友人アンナ。重傷者の多くは戦場から何としても逃れようと自傷行為を繰り返す兵士たちだったが、彼女は、その患者たちの間で奇妙なことが起きていることに気付く。だが、紛争の終結間際、スペイン風邪が蔓延し、やがてそれは民間人にも及び……。第55回の本映画祭で『いつかきた道』が金獅子賞に輝き、第79回には『蟻の王』がコンペティション部門に出品されるなど、ベネチア国際映画祭と縁の深いイタリアの名匠ジャンニ・アメリオが、自国での受賞を再び目指す。
『シチリアン・レターズ(英題) / Sicilian Letters』
製作国:イタリア、フランス
監督:ファビオ・グラッサドニア、アントニオ・ピアッツァ
キャスト:トニ・セルヴィッロ、エリオ・ジェルマーノ
122分
【ここに注目】
シチリアを拠点とするマフィア「コーザ・ノストラ」のボス、マッテオ・メッシーナ・デナーロが、30年もの間逃亡生活を送りながら権力を握り、悪の頂点に立っていた時代を描く犯罪ドラマ。シチリアのマフィアが高官との連絡に使う小さな紙切れ“ピッツィーニ”を題材に、<最後のゴッドファーザー>と呼ばれ、30年の逃亡の後に逮捕され、刑務所で死亡したメッシーナ・デナーロの数奇な人生を映し出す。『ローマに消えた男』などのトニ・セルヴィッロ、『見つめる女』などのバルボラ・ボブローヴァら実力派俳優が顔をそろえ、イタリアの暗部をえぐる作品で最高賞を狙う。
『クィア(原題) / Queer』
製作国:イタリア、アメリカ
監督:ルカ・グァダニーノ
キャスト:ダニエル・クレイグ、ドリュー・スターキー
135分
【ここに注目】
『君の名前で僕を呼んで』『チャレンジャーズ』のルカ・グァダニーノ監督が、ビートニク世代を代表する作家ウィリアム・S・バロウズの自伝的小説「おかま クィーア」を映画化。1950年のメキシコシティを舞台に、50代前半の同性愛者ウィリアム・リーがドラッグと年下の青年に溺れていくさまを描く。主人公リーをダニエル・クレイグが演じ、年下の青年役として『ヘル・レイザー』のドリュー・スターキーが出演。脚本のジャスティン・カリツケス、音楽のトレント・レズナー&アッティカス・ロス、撮影監督のサヨムプー・ムックディプローム、衣装デザインのジョナサン・アンダーソンと、『チャレンジャーズ』チームが再集結している。
『ラブ(英題) / Love』
製作国:ノルウェー
監督:ダーグ・ヨハン・ハウゲルード
キャスト:アンドレア・ブライン・ホヴィグ、タヨ・チッタデッラ・ジェイコブセン
119分
【ここに注目】
『アイ・ビロング』などのノルウェーのダーグ・ヨハン・ハウゲルード監督による『セックス』『ラブ』『ドリームス』3部作の2作目となる愛にまつわるドラマ。3部作を通して、現代の北欧社会におけるセクシュアリティ、憧れ、そして罪について掘り下げていく中で、本作では相手との深い関係を望まない40代の医師マリアンヌが、同僚の看護師トルからその場限りの気軽な関係について聞き、これまでの固定観念に疑問を持ち始めるさまを描く。自国イタリアの名匠や新鋭たち、そして各国の有名監督たちがしのぎを削る中、今回コンペティション部門に北欧から唯一選ばれたハウゲルード監督の評価が楽しみだ。
『ジ・オーダー(原題) / The Order』
製作国:カナダ
監督:ジャスティン・カーゼル
キャスト:ジュード・ロウ、ニコラス・ホルト
120分
【ここに注目】
ジュード・ロウ、ニコラス・ホルト主演、『アサシン クリード』のジャスティン・カーゼルが監督した本作は、実際の事件に着想を得たクライムスリラー。米太平洋岸北西部で銀行強盗や現金輸送車強奪事件が相次いでいた1983年、アイダホ州の田舎町に配属されたFBI捜査官は、一連の犯行が金目的ではなく、過激なカリスマ的指導者による米政府へのテロ行為だと確信する。実録犯罪ものを得意とするカーゼル監督は、豪タスマニア島で起きた無差別銃乱射事件を題材にした前作『ニトラム/NITRAM』が第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出され、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズが男優賞を受賞している。
『マリア(原題) / Maria』
製作国:イタリア、ドイツ、アメリカ
監督:パブロ・ラライン
キャスト:アンジェリーナ・ジョリー、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ
124分
【ここに注目】
実話に基に、伝説のオペラ歌手マリア・カラスが1970年代のパリで過ごした最後の日々を追い、彼女の波乱万丈な生涯を描く伝記ドラマ。『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』ではジョン・ F・ケネディ大統領夫人のジャクリーン・ケネディを、『スペンサー ダイアナの決意』ではダイアナ元英国皇太子妃を描いた本映画祭の常連監督パブロ・ララインが、今回はマリア・カラスの人生に焦点を絞る。俳優選びのセンスが抜群で、実在の人物を描かせたら右に出るものはいないラライン監督と、カラスを演じたオスカー俳優のアンジェリーナ・ジョリーの強力タッグにより、賞レースのトップをひた走る。
『トロワ・アミ(原題) / Trois amies』
製作国:フランス
監督:エマニュエル・ムレ
キャスト:カミーユ・コッタン、サラ・フォレスティエ
117分
【ここに注目】
友人関係にある3人の中年女性たちを描いたフランスの恋愛コメディー。パートナーへの愛が失せたことに悩むジョアン。パートナーへの情熱は冷めたものの、良好な関係を続けるアリス。そんなアリスのパートナーと密かに交際するレベッカ。ジョアンがパートナーと別れたことから3人の人生も一変する。ドラマシリーズ「エージェント物語」などのカミーユ・コッタン、『戦争より愛のカンケイ』などのサラ・フォレスティエ、『カミーユ、恋はふたたび』などのインディア・エールらが出演。監督を『ラヴ・アフェアズ』がフランスの映画賞<セザール賞>で13部門にノミネートされたエマニュエル・ムレが務めている。
『キル・ザ・ジョッキー(英題) / Kill the Jockey』
製作国:アルゼンチン、スペイン
監督:ルイス・オルテガ
キャスト:ナウエル・ペレス・ビスカヤール、ウルスラ・コルベロ
96分
【ここに注目】
ギャングのボスであるシレーナへの借金返済の重要なレースの日に事故に遭い、病院から姿を消した伝説の騎手レモ・マンフレディーニと、彼を取り巻く人々を描く人間ドラマ。レモの子供を宿した騎手仲間のアブリルもまた子供を生むか、レースを続けるかの決断を迫られる。『ペルシャン・レッスン 戦場の教室』などのナウエル・ペレス・ビスカヤール、「ペーパーハウス」のウルスラ・コルベロらが共演。第71回カンヌ国際映画祭「ある視点部門」に出品された『永遠に僕のもの』などのアルゼンチンの鬼才ルイス・オルテガ監督が、最高賞の金獅子賞を取りに行く。
『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』
製作国:アメリカ
監督:トッド・フィリップス
キャスト:ホアキン・フェニックス、レディー・ガガ
138分
【ここに注目】
トッド・フィリップス監督、ホアキン・フェニックス主演のDC映画『ジョーカー』の続編。前作でジョーカーを演じアカデミー賞主演男優賞を受賞したホアキンに加え、『アリー/スター誕生』『ハウス・オブ・グッチ』のレディー・ガガがハーレイ・クイン役で出演。続編は、アーカム州立病院で出会う2人の物語を描くミュージカル映画に仕上がっているよう。音楽は、前作でアカデミー賞作曲賞を受賞したほか、ケイト・ブランシェット主演の『TAR/ター』も手掛けたヒルドゥル・グーナドッティル。製作発表時から話題沸騰の本作は、ホアキンの狂気の演技だけでなく、ハーレイ・クインになりきっていつもとは違う発声をしているという、ガガの歌声も見どころと言えそうだ。
『ディーバ・フトゥーラ(原題) / Diva Futura』
製作国:イタリア
監督:ジュリア・ルイーズ・スタイガーヴァルト
キャスト:ピエトロ・カステリット、バルバラ・ロンキ
128分
【ここに注目】
デボラ・アタナシオの回想録を原作に、1980年代から1990年代のイタリア風俗界にポルノで革命を起こしたプロダクション「ディーバ・フトゥーラ」を立ち上げたリカルド・スキッチと、彼のプロダクションに所属する女性たちを秘書の視点で描く。『ムッソリーニの財宝を狙え』などのピエトロ・カステリット、『僕の人生に追いつくとき』などのバルバラ・ロンキらが共演。『セッテンブレ(原題) / Settembre』でイタリアの映画賞ダヴィッド・デ・ドナテッロ賞の新人監督賞に輝いたジュリア・ルイーズ・スタイガーヴァルト監督が、長編2作目で有名監督たちに勝負を挑む。
『ハーベスト(原題) / Harvest』
製作国:イギリス、ドイツ、ギリシャ、フランス、アメリカ
監督:アティナ・ラヒル・ツァンガリ
キャスト:ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、ハリー・メリング
131分
【ここに注目】
『ニトラム/NITRAM』『スリー・ビルボード』のケイレブ・ランドリー・ジョーンズが主演。作家ジム・クレイスの小説を映画化した本作は、侵入してきた3人のよそ者によって平穏な村が脅威にさらされるというサスペンスで、ギリシャ出身のアティナ・ラヒル・ツァンガリが監督を務めた。共演は『ほの蒼き瞳』やドラマ「クイーンズ・ギャンビット」のハリー・メリング。ツァンガリ監督は、『アッテンバーグ(原題) / Attenberg』が第67回ベネチア国際映画祭コンペ部門に選出され、『ストロングマン』は第89回アカデミー賞外国語映画賞のギリシャ代表作品に選ばれた。ケイレブは、昨年の『DOGMAN ドッグマン』に続き、主演作が2年連続でベネチア国際映画祭コンペ入りを果たしている。
『ユース ホームカミング(英題) / Youth: Homecoming』
製作国:フランス、ルクセンブルク、オランダ
監督:ワン・ビン
152分
【ここに注目】
『鉄西区』や『苦い銭』などの中国のドキュメンタリー作家ワン・ビンが、上海周辺の工業地帯にある衣料品工場を舞台に若い出稼ぎ労働者たちの日常を捉えた3部作の最終章。第76回カンヌ国際映画祭に出品され、日本でも2024年に公開された『青春』、ロカルノ映画祭で披露された『ユース ハード・タイム(英題) / Youth: Hard Times』の続編となる。大みそかを迎えた衣料品工場。山のようにある仕事や給与の未払いなど、労働者を取り巻く厳しい環境は変わらないながらも、結婚式や新年の祝賀会などが催される。
『ストレンジャー・アイズ(英題) / Stranger Eyes』
製作国:シンガポール、台湾、フランス、アメリカ
監督:ヨー・シュウホァ
キャスト:ウー・チエンホー、リー・カンション
125分
【ここに注目】
『幻土(げんど)』がロカルノ映画祭の最高賞にあたる金豹賞を受賞したヨー・シュウホァ監督の新作で、ベネチア国際映画祭のコンペティション部門にシンガポール映画として初のノミネートを果たしたスリラー。生まれて間もない娘の姿が消えた夫婦のもとに、2人のプライベートな瞬間までもが記録されたビデオが届く。盗撮犯を捕らえようと警察が監視カメラを仕掛けるが、それにより秘密が露わになり、夫婦の危機を迎える。『共犯』のウー・チエンホーやツァイ・ミンリャン監督作品の常連であるリー・カンションなど台湾映画の俳優たちが出演。『幻土』に続いて浦田秀穂が撮影を担当する。