『トラフィック』特集
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『トラフィック』を観ながら、大量の麻薬を扱う巨大な犯罪ルートに戦いを挑む刑事の活躍を描いた名作『フレンチ・コネクション』を彷彿とした人も多い違いない。スティーブン・ソダーバーグ監督自身、『トラフィック』の撮影に先駆けて「『ナッシュビル』と『フレンチ・コネクション』を合わせたような映画になるんだ」と語っている。そこで麻薬が登場する映画を紹介してみよう。といっても古今東西、あまりにもたくさんあり過ぎるのでまずは新作から。
6月に公開予定の『レクイエム・フォー・ドリーム』は、母と息子、その恋人が麻薬にハマって落ちて落ちて奈落の底まで落ちていってしまうという恐ろしい映画。ヤクにハマるといえば若者の特権のようだが、この映画ではエレン・バースティン扮する初老の母親も無自覚のうちに中毒になってしまう。ダイエットをしようと思って医者から処方された薬により、アンフェタミン中毒になってしまうのだ。アカデミー賞主演女優賞候補にもなったバースティンの鬼気迫る演技は圧巻! ジェニファー・コネリーがヤクのためにそんなことまで……と、とてもここには書けないすごいシーンにもぞっとさせられる。ジャレット・レトの転落ぶりも見事な麻薬づくしの1作だ。同じく6月に公開予定の『g:mt』は、かの大ヒット・ジャンキー映画
『トレイン・スポッティング』と同じくUK生まれの青春ドラマ。高校時代の仲間たちが社会に出てからさまざまな問題に直面するという話なのだが、そのうちのひとりがヤクの売人となり転落人生をたどってしまう。音楽の才能もあって未来は明るかったはずなのに、ちょっとした心の隙間に忍び込んできてしまうのが麻薬の恐ろしいところ。目がうつろになり目の下には隈ができ、頬はげっそりとこけていく。どうにもならない状態に陥って初めて自分の置かれた状況に気づくのだが時既に遅し、というのはよくある話。自業自得とはいえ、一歩間違えば誰にでも可能性がある……と思うとやるせない。
1973年の音楽業界を舞台にした『あの頃ペニー・レインと』でも、ケイト・ハドソンを初め皆で集まってはスパスパ吸っていた。 今でもハリウッド・スターの中には、マリファナやLSDの常用を否定しない人が多い。ブラッド・ピット&ジェニファー・アニストンやキアヌ・リーヴスetc。日本人とは違って、アメリカでは麻薬はもっともっと身近なものなのだ。『アメリカン・ビューティー』ではウェス・ベントレー扮する高校生が小遣い稼ぎにヤクをさばいていたし、マーチン・スコセッシ監督の『救命士』では麻薬に汚染されたニューヨークの夜の街が、美しい映像と共に浮き彫りにされる。とまあ、挙げていけばキリがないが、映画と麻薬は切っても切れない関係なのだ。 |
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