よほどのことがない限り、こころ動かされることが少なくなってしまった。あ
らゆるものを目にしてきたけれど、果たして物事の本質を見てきたといえるのだ
ろうか。この映画の主人公である目の不自由な少年は、すべてに好奇心を抱き、
手で触れ、生きていく上で本当に必要なものを選び取る。そして彼は目が見えな
いことを神の意志によるものであると悟る。辛いことがあれば試練の意味を知る
ために神の存在を確認する。不幸を他人や環境のせいにする少年の父親とは正反
対。その父の姿を観て、私は鏡を見るような思いがした。スピーディーでスタイ
リッシュでショッキングな展開を映像に求めがちな風潮は、盲目の時代の象徴な
のかもしれない。 (岩淵佳子)
『運動靴と赤い金魚』から 詩情あふれる精神的視界へ
『運動靴と赤い金魚』でイラン映画としては初のアカデミー賞外国語映画賞にノ
ミネートされたマジディ監督。幼い兄妹の視点に立ち、彼らの日常の内面
世界を 描いた作品だったが、ラストでは子供たちを優しく見守る「神」の存在を赤い金
魚に託すシーンが印象的だった。そんなマジディ監督は、最新作『太陽は、ぼく
の瞳』で時としてカメラを人間から遠ざけ、自然の中での点景としての人々の喜
びや不安といった感情を、きらめく太陽、荒ぶる波、そよぐ風といった風物で詩
情豊かに表現する。これは、人々を見守る神の存在が全編にあふれる映画。少年
にとっての数々の体験、父の本能が試される大きな災難……。それらはすべて、
神が人間に与える試練のようだ。
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前作『運動靴と赤い金魚』のために、盲目の父親役を探して視覚障害センター
に行ったことがありました。映画の完成後、僕は目の見えない世界についてもっ
と知りたいと思い、もう一度そこを訪れ、モハマドという少年と出会いました。
この映画は彼との2年間の共同生活から生まれたものです。「光を見て」「監督
の手は白いね」、そんな印象的な彼の言葉はそのまま映画に使っています。しか
し、モハマドの起伏の激しい感情が映画に向かず、途中でモフセンという別
の盲 目の少年を見つけることになりました。イメージしていた役柄の外見とは異なり
ましたが、繊細で感情豊かな彼こそこの役にふさわしかったと、いまでは確信し
ています。モフセンにとって撮影の中で一番の思い出は、初めて走ったことだそ
うです。最初は怖がっていましたが、草原で思いっきり走ることができて、喜び
に満ちていました。実は、この映画を作る以前の私は、差別をしないはずの神
が、なぜ盲目の人間をこの世に作ったのか、疑問に思っていました。しかし、彼
らと過ごしてわかったのです。神は彼らから何かを取り上げたのではなく、私た
ちにはない何かを与えたのだと。
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モハマドは、テヘランにある盲学校に通
う8歳の少年。母は5年前に他界して いた。夏休み、モハマドは、父の故郷で優しい祖母や姉妹たちと楽しい日々を送
る。これからも勉強を続けたいと願うモハマド。だが、父は意中の女性と結婚す
るために、嫌がるモハマドを無理矢理大工のところに修行に出してしまう。
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