■伝説的名番組「太陽に吠えろ」の逆張り路線
この映画の基になったTVドラマ「踊る大捜査線」は、あの伝説的名番組「太陽に吠えろ」の逆張り路線で成功したと言われています。
例えば、このドラマに登場する刑事たちは、決してお互いをニックネームで呼びません。拳銃も携帯しません。警察内部には厳然とした階級が存在するし、捜査は本庁主導のチームプレイで行われます。登場する警察官たちは、みんな己の保身に汲々とするサラリーマンばかり……。
■熱いけど暑苦しくない男
しかし、そんな中に一人だけ「太陽に吠えろ」に登場してもおかしくない、熱すぎる男が現れる。それが織田裕二演じる青島刑事なのです!
ちょっと考えてもみてください。
保身のことしか考えないサラリーマン集団の中に、「太陽に吠えろ」の刑事が飛び込んでくるのです。これは浮きます。どうやったって浮いてしまいますよ。そして、そんな“熱さで浮きまくる男”を演じれば、今の日本で織田裕二の右に出る者はいないでしょう。
いや、ただ単に“熱い演技”をするだけの俳優なら、うんざりするほどいます。でも織田裕二のスゴイところは、どんなに熱い演技をしても決して“暑苦しく”はならないところ。常にどこか飄々としたユーモアと、不思議なほど照れくさそうなシャイな雰囲気が漂っているのです。
この『踊る大捜査線 THE MOVIE』でも、そんな織田裕二の“熱い魅力”が最大限に発揮されています。警察といういわば日本でいちばんお堅い組織を、彼が扮する青島刑事が熱い情熱で揺り動かす。無難にサラリーマンをやっていたはずの人々が、青島刑事に引きずられて次々と熱い警察官に変身してしまう。
■回りを変えるパワーを持つ青島刑事
そのクライマックスが、TVシリーズでもおなじみのあのセリフを絶叫するシーン、「事件は会議室で起こるんじゃない。現場で起こってるんだ!!」なのです。
この名セリフの直後、大量出血で病院に搬送される青島刑事を、現場に駆けつけた同僚たちが最敬礼で送り出すシーンがあります。これこそまさに「サラリーマン」→「警察官」へと変身した同僚たちを象徴するシーン。そして、そんな最敬礼の隊列の中で、グーグーといびきをかいている青島刑事……。
う~む。あの真剣なシーンから一転して、トボけたオチをつけてしまう。こういうところが織田裕二の魅力なのです。
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