森田まほ
映画が好き!現場で働きたい!その思いがこうじて単身アメリカ、ハリウッドへ渡り、現場でインターンとして日夜現場を飛び回る日々であったが、ある日アメリカ人の青年と結婚。その後予定外の妊娠をするが、無事出産。現在はグリーンカードを取得すべく待機中。 |
私がまだバス人間だったころ。バスってマジで嫌いなのが、居眠り一つ出来ないところ。…のはずだったのが、ある夜あまりのハードワークに疲れ切った私は大爆睡しちまった。
くうくうくうくう、はっと気付けば見知らぬガスステーション。いかんっと思って無理やりバスを降りたはいいけど。こ、ここどこやねん!
しかも、超暗い! 死ぬ、殺される、犯される。きゃー誰か助けてー!!
こんなとき、タクシーでも拾えればバンバンザイなんだけどさ、なんせ、金がねえのよ旦那。
仕方がない、歩いて帰るか。まずは、ガスステーションの兄ちゃんに、お家までの帰り方を聞いてみた。兄ちゃんが言うには、通りに沿ってまっすぐ歩きゃあ、ハリウッドにつくそうな。は、よかった。ホッとして、店を出る私の背中に兄ちゃんの思い一言が突き刺さった。
「気をつけろよ。強盗、よく出るから」
ひ、ひいっ。ちょうどその頃、私はブラザーのプリプロダクションで働いていて、脚本とかをちょこっと読んだりしていたので、とりあえず、気合いを入れるために気分はやくざになってみた。
「おらおらおらああ。おらあ。」
言ってることは威勢よく聞こえるけど、全然無理。車一つ通らぬこのくらい夜道で、こんなかよわい女が一人。だめだ、ダメだ歩いてちゃ。走れ、ハシレーッ。
あまりの恐怖に、発狂寸前の私はとにもかくにも脱兎のごとく走り出した。目指すはネオン。ハリウッドー。
でも、5分もしないうちにくたばった。呼吸がつらい。わき腹が痛い。ああ、Qちゃんみたいな強じんな体になりたいよお。うえーん。
走って、ダメージを受けたせいで息はぜいぜい、歩くスピードまで落ちちまった。 こんなときに、襲われたら私はきっと。ああ、明日には町の娼婦としてこの路頭でさまようのだろうか。薬漬けの森田。
成田空港で、お母ちゃんに言われた言葉が身にしみる。
「マホ。もし誘拐されて身を売るハメになったら、高級娼婦になりなさい」
親としてあり得ないこの助言が、このときの私には大いに役立った。そうだ。もし誘拐されて娼婦になっちまったとしても、頑張って超人気娼婦になって、リチャード・ギアみたいなおっさん捕まえて、金持ちになるぞ。
そんな、妄想を描きながら一人とぼとぼ歩く私。
と、向かいから黒人のガキンチョが2人あるいてきた。日本だったら、ひねって潰せるくらいのガキンチョなのに、こんなとこだとかなりコワイ。小学生くらいとはいえ、お尻に銃とかナイフとか持ってるかも。最近のわけえのはコワイからのう。
ああ、神さまこの子達に何もされませんように。とりあえず、ドキドキしながらすれ違ったけど、結局何もなかった。
また一人、とぼとぼ歩き出そうとした、その時!!! 私の横にある人影が見えたのだった…。きゃあー。
次週につづく
お知らせ:月刊フリックスでまほちゃんが、「好き勝手クロスレビュー」の連載を始めました。ハリウッドのカリスマビデオ店員マイケルのちょっと辛口レビューも要注目!
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