森田まほ
映画が好き!現場で働きたい!その思いがこうじて単身アメリカ、ハリウッドへ渡り、現場でインターンとして日夜現場を飛び回る日々であったが、ある日アメリカ人の青年と結婚。その後予定外の妊娠をするが、無事出産。現在はグリーンカードを取得すべく待機中。 |
今まで、楽しい楽しいハリウッド日記を書いてきたけれど、今回は悲しいハリウッドの話をしなければいけません。
去年のテロ事件から、一年。9月11日が無事静かにすぎて、私は少しホッとしてた。ニューヨークの次に狙われやすいのは、ロスだって話を誰かに聞かされて、内心は心配でたまらなかったから。
ほっとして、またいつもの生活に戻っていた4日後。ロスにすむ友達から、悲しい知らせが届いた。
「マイクが亡くなった」
マイクは私のルームメイトの親友だった男の子。スケーターカメラマンを目指してて、みんなでよくスケートパークへ行ったものだ。自分もスケボーにノリながら、片手にビデオカメラをもって撮影していた彼は本当にサマになってて、スケートパークのキッズからも慕われていた。
私は、スケボーの帰りに必ず彼にでっかいコーンのアイスクリームを買ってもらって、大喜びしていたもんだ。みんなで、うちでプレステしたときも他のねーちゃんたちにはビールがおみやげのくせに私だけやっぱりアイスクリーム。
ほんとは、ひそかに恋心抱いてた時期もあったのに、あまりのガキんちょあつかいに切れまくってたのよね。年なんて2コしか違わないのにさ。
そのマイクが、亡くなった。
私には、その事実が受け入れられなくて、混乱した。もっと悲しいのは、マイクは殺された。ということ。マイクは、顔が変わるくらい暴行された揚げ句、4発も撃たれていた。病気だったとか、事故だったとか。それならもっと自然に受け入れて、悲しむだけだったかもしれない。でも、彼は誰かの手によって、24年間生きてきたその命を奪われた。
マイクは、亡くなる直前友達に電話をした。
「撃たれた。痛い。助けて」
それが最後の言葉だった。
警察が到着したときには、もう脈はなくて、痛みと闘いながら一人で死んでいった彼を思うと、胸が引き裂かれそうになる。日本だったら、きっとニュースになるはずだけど、アメリカではそうじゃない。夜中の2時に、お金もなくて、車も持ってなく、スケボーでハリウッドの裏通りにあるバイト先から帰ってたマイクは、襲われても仕方がないって言われるだけだ。目撃者もいないし、きっと犯人は永久に出てこないだろう。
こういうことが、日常茶飯事で起こるのもロスであって、アメリカの現実。でも、身近な人の死はアメリカ人だろうが日本人だろうが悲しみの大きさは変わらない。
瀕死のマイクから電話をうけた友達は、今でも部屋にこもったきり。スケーターの仲間達も、一人としてショックから抜け出せていない。
9月11日がすぎてすぐ、この事件が起きて、私はたくさん考えさせられた。くやしいし、悲しいし、犯人が憎い。見つけだして、殺してやりたい。それで気が晴れるのかって言われれば、ちょっとは気が晴れると思う。人を、ここまで殺したいほど憎いなんて思ったのは初めてだ。自分でも、怖くなる。この憎しみだけで、復讐して、また、その復讐があって、それの繰り返しが戦争になっていくものなんだよね。
友達の死は、つらい。一人の死でここまで苦しむ。戦争で、命を落としてる人たちが全員友達だったらどんなにつらいだろう。WTCのことも、アフガニスタンのことも、今のマイクを失った悲しみを思うと、私にはまだ他人事だった気がしてならない。
人が、人の命を奪うということがどれだけいけないことか。人が、誰かの家族を奪うということ、誰かの恋人を奪うということ、誰かの友達を奪うということ。その罪は計り知れないくらい大きい。
こんな分かってたようで、分かってなかったことをマイクの死は私に教えてくれた。
こんな暗い話、したくなかったけど、これもロスの一面であり、私たちの現実の一つなのです。
私のこの気持ちが少しでも伝わればいいと思う。マイクの死が無駄にならないためにも。
お知らせ:まほちゃんが、憧れのヴィン・ディーゼルと大変なことに! 詳しくはこちら→
子育て大奮闘中のまほちゃんにファンレターを書こう!
FLiXムービーサイト内「まほのハリウッド日記」
maho@flix.co.jp
|