森田まほ
映画が好き!現場で働きたい!その思いがこうじて単身アメリカ、ハリウッドへ渡り、現場でインターンとして日夜現場を飛び回る日々であったが、ある日アメリカ人の青年と結婚。その後予定外の妊娠をするが、無事出産。現在はグリーンカードを取得すべく待機中。 |
私の住んでたハリウッドのお家の隣には、ジミーくんという4歳のかわいい男の子がパパと2人で住んでいました。
パパは日本では、結構珍しいシングルファーザー。一見すると、こ、これが父親かいっってくらいのおっそろしいおっちゃん(失礼)。ジミーパパは、ヘビメタ大好き。髪の毛は腰まであるし、全身はタトゥーだらけ。どう考えても怖い!!怖い!!
しかも、日曜日はガンガンでヘビメタをかけまくり。
どんな父親じゃい。って始めはかなり不審だったんだけど、だんだんとその考えも変わってきた。毎週日曜の朝は、必ずパンケーキのおいしい香りが隣からただよってくるし。ハロウィンには夜中に玄関先でコツコツとカボチャのおばけを彫ってジミーをびっくりさせてあげてたり、一緒にスケボーを教えてあげたり、ホントに片時もそばを離れないんだよね。
ジミーは午前中だけ幼稚園に行ってるからジミーパパの自由時間はその間だけなわけさ。でも、別に遊ぶんじゃなくって、洗濯したりブーンと掃除機の音がしてたり、私は彼らの生活の音を壁を隔てて聞きながら何となくホッとしたものです。
この親子何がスゴイってね。お父ちゃんが大っきい声で、「こらあ!!」って怒ることが全然ないわけだ。で、ジミーはジミーで他の子みたいにギャーー!!!ってだだっ子な大泣きしないの。絶対。1歳半のカムイにさえも「ぐおらー!!」なんつって怒り狂ってる私には奇跡に近いよ。ホントに。
ジミーパパとよく玄関先で、井戸端会議をしていた私は、彼に子育ての極意たるものをそうとう教えていただきやした。
彼曰く、自分は頭が悪いから子供の言うことを人の10倍注意深く聞いてあげているんだって。
よく考えてみれば、ジミーがちょっとふくれたときは、ジミパパは隣でぼそぼそといかちい体を丸めていてるんだよね。それでゆっくりお話しして、納得させるんだ。ママはいなくても、パパ一人で十分立派に子育てをしている姿に、ルームメイトともども心から尊敬していたのであります。
さて、ジミーにはご近所に仲よしの男の子がいて、なんとその子がうちの旦那の同居人の息子だったのさ。だんなの同居人は、メルローズにあるパンクなお店の店長さん夫婦。お母ちゃんは髪の毛がピンク色。父ちゃんはこれまた、タトゥーだらけのこわもてオヤジ。お母ちゃんは星の数ほど、ピアスが空いてるんだけど子供の方はいたって普通。
この母ちゃんスゴイのが、自分が麻薬にはまってたときの生々しい話をおとぎ話のように子供にするんだよね。私も初めて聞いたときはオイオイって感じだったんだけど、それが彼女なりの教育法らしい。確かに、お母ちゃんのラリってた話聞いて僕もやりたいなんて思わないわな。
どっちのファミリーも、ハリウッドっていうものすごい町で仲よく楽しく暮らしているのさ。
でも、ジミパパもピアス母ちゃんも一番の悩みは小学校。日本だったら、家の近くの公立で、友達もいっぱい作って。ってスゴク楽しみでしょう?
それが、ハリウッドの小学校となるとちと違う。やっぱりすんでる地区がミドルよりは少し下の方になるわけさ。しかも、公立だと、それこそいろんな子供たちがやってくるわけだ。
うちの近くにあった小学校は、ギャングに入ってる不良の上級生が、麻薬を塗り込んだお菓子を勝手に下級生に売りさばいて、本人の知らないうちにヤクチュウにしちゃったりとか。それにやっぱり銃や、ナイフを持ってたりするから、子供同士のケンカでも悲しい事件が結構あったらしい。
かといって、私立の小学校なんて高くて入れられないし。と、日本のお受験以上に大変な世界がここにはあるわけです。お受験もいいかも知れんけど、公立の小学校で気楽に育った私にしてみりゃ、給食食って、地元の友達つくって、取っ組み合いのケンカして。そんな当たり前のことが出来るだけでもすっばらしいじゃあないの。
最近の私は、ワイドショーで日本のマダムな母ちゃんと、ブルジョワな子供のあほくさい特集を見るたびに、ハリウッドでたくましく生きるあのかっこいい親子のことを思い出しているのでありました。
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