森田まほ
映画が好き!現場で働きたい!その思いがこうじて単身アメリカ、ハリウッドへ渡り、現場でインターンとして日夜現場を飛び回る日々であったが、ある日アメリカ人の青年と結婚。その後予定外の妊娠をするが、無事出産。現在はグリーンカードを取得すべく待機中。 |
アイスでべとべと、汗でベちょベちょ、日射病でバテバテの状態でMOAをなんとか見学した私は疲れ切っていた。も、もうだめだ。しかも冷房で極楽なMOAをでちまったら外は地獄の灼熱地獄。ウアーーー死んじまうだー!
なんとしてでも、もう外は嫌な私は作戦を立てだした。メトロまで走るか? いや。走る途中で死ぬ。つうか駅から遠いしうちのホテル。マジ死ぬぜ。
てことは……。
これはタクシーしかない! だってここはNY! NYはタクシーの街! 私は根っからの貧乏性なのでタクシーってなんだか金持ちの乗る乗り物って先入観がありすぎてこっちに来てから乗ってなかったんだけど仕方ねえ。
もうそれくらい具合悪かったのよ。ほんっっとに。もうMOAついた時点で結構限界だったんだけどもったいないし、せっかくだからかなり我慢してて。
でもホントつらい。これは確実に日射病だ。こっちで出来た友達に忠告されたのを思い出す。「水分ちゃんととりなさいよ。20分以上歩いたら必ず休みなさいね」思いっきり2時間歩いちまったっつうの。これは早くホテルに帰って寝なくては。明日は撮影だし。ぜってえ休めないし。
意を決した私は、こないだ見かけたニューヨーカーみたいに右手をすでに挙げつつ、MOAから走り出した。(わかる? なんかアメリカ人っぽい絵でしょ? グフフ)
「ヘーイタクシー!」
かーっこいいー! なんかニューヨークって感じだぜー。とちょっと上がってたらやったねさすがニューヨーク。速攻でタクシーがつかまった。倒れるように乗り込んで行き先を告げてひと息ついて私は異変を感じた。
なんか、極楽って感じがしないんすけど、、。なんなんだこの息苦しさは。この…外とおんなじ蒸し暑さは…。そう。まさかなのじゃ。このタクシー冷房が効いてない!! ぎえー!!
「エ、エクスキューズミー」
たどたどしい英語で冷房入れて下さいと頼むとおっちゃんはなぜか首を振る。
「ノーノー」
なんだよ。壊れてんのかよ。壊れてんだったら私は降りるわよ!
「ブ、ブロークン?」
「ノーノー」
なにい?! じゃあとっとと冷房入れやがれー!! ちょっと怒りながらも根っからへたれ日本人の私は、「あー。プリーズ エアコンディショナー。プリース アイムホット!! ディジー! 」
とありとあらゆる単語を駆使して自分の気持ちを伝えてみた。しかしおっちゃんは断固ノー!
「ヘルシー! ヘルシーライフ! ナチュラル! エアコンディショナバーーーッド!」
どうやらおっさん健康オタクらしく窓で十分だと思ってるらしい。アホだね。こんなあちいのになんでクーラー入れねえんだよー! いれろーカバー! おらー!
と軽く怒鳴ってみたところ売り言葉に買い言葉で朝まで生テレビ状態に。
そして、あまりの暑さに私はぶちきれた。
「降ろせジジイ! こんなタクシーのってられっかー!! ナチュラルライフファックだぜー!!」と怒鳴り散らすと
「うるせー!おろすかー!! エンボイ(私の泊まってたホテルね)まで絶対行ってやるわいー!」
とロックかけやがった!なんか、昔こんな映画があったよね。NYタクシーの運転手さんが連続殺人するやつ。でも今は真っ昼間! なんでこんな具合悪いときに灼熱タクシーに閉じこめられなきゃ行けねーんだ。きもちわりい~。
「ぎゃーおろせーおろせー!!」
「バカやろー! おろすかこの小娘!」
怒鳴っていると酸素が無くなる+暑い+日射病の最悪条件で私の具合はピークに達した。ううえええ。もうなんでもいいから早くホテルまで連れてけー。
突然静かになった私がさすがに心配になったのかおっちゃんが「あーユーオーケー?」とか言いやがる。
「アーユーオーケー」じゃーねー!! じゃエアコン入れろー! なんて声すら出ず。ひたすら耐える森田。
「おらーお客さんついたよー」
オヤジに20ドルを投げつけて「釣りなんていらねえよ」吐き捨てて降車した瞬間に全てが噴火した。
ゲロゲロ……。
地獄とはまさに…このことだったのでありました。あのオヤジは一生許さん!
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