ぺ・ヨンジュン『四月の雪』単独インタビュー
取材・文:FLiXムービーサイト
待望のペ・ヨンジュン主演映画第2作『四月の雪』のテーマは「不倫」。前作では韓国王朝のプレーボーイを見事に演じたが、本作では妻に裏切られ、絶望のふちで芽生えた切ない恋に葛藤(かっとう)する男性を演じている。彼が"ほほ笑み"を封印し、渾身の力で俳優としての新境地を切り開いた本作は、今秋9月にアジア10か国で同時公開される。自身の33歳の誕生日(8月29日)に来日し、連日の記念イベントに多忙を極めている超過密スケジュールの中でも、すべての質問に真摯(しんし)な態度で誠実に答えてくれた。
映画はまだ観られない
Q:韓国で開かれた記者会見では、緊張してまだ映画を観ていないとコメントされていましたが、もう、ご覧になりましたか?
いいえ、まだ観る勇気がないんです。
Q:なぜですか?
今回は今までと違う形で演じたので、観客や家族(ファン)の皆さんの期待にこたえられるのか。怖くて観ることができないのです。
Q:とても素晴らしかったですよ。安心して観てください。
ありがとうございます。帰国したら観客といっしょに観ることにします。
演技のスタイルを変えた
Q:今回の記者会見で「『四月の雪』は今までで一番大変だったと話していましたが……監督の注文で一番大変だったのは?
わたしは今まで、演じる人物をあらかじめ計算し準備してから撮影に入るという形をとっていました。ところが、今回はそんな事前準備を一切しないで、演じる人物になりきるという演技の形をとったのです。つまり、撮影が始まるとわたしは、主人公のインスになりました。インス本人としてすべてを表現しなければならなかったのです。ですから、監督からの注文が特別大変だったというようなことはなく、「演じる人物になりきる」こと自体が大変でした。
Q:映画の中のペ・ヨンジュンさんはまさにインスそのものでしたね。
インスが悲しいとわたしは涙を流し、彼がうれしいとわたしも喜び、彼の痛みはそのままわたしの胸に突き刺さりました。
入院するほどなりきった
Q:あまりみごとにインスになりきっていたので、わたしはペ・ヨンジュンさんが本当に不倫をしてしまったのではないかと錯覚してしまいました。
(笑)ええ、わたしはインスそのものでした。それで、ペ・ヨンジュンに戻っても精神的に苦しくなってしまいました。もちろん撮影中は辛く、撮影が終わってからもインスから抜け出せなくなってしまい、とうとう入院までしてしまいました。
Q:そうだったんですか。失礼な質問をしてもいいですか? 映画を見てどうしても気になって……やつれたインスが出した『鼻血』あれは本物ですよね?
(笑)いいえ、違いますよ。かえって本当の鼻血を出せば楽だったんですが、鼻の中に血糊をつめて首をさげると血が流れる仕組み。これが結構痛かったんですよ(笑)。
情熱的な恋愛は経験済み
Q:映画の途中、ヒロインのソヨンがインスに会うためにおしゃれをします。「あっ!ソヨンは恋に落ちたな」って思いました。でも、この時点ではインスはソヨンに惹かれてはいたけれど、まだ愛には至っていなかったように感じたんですが……。
読みが鋭いですね。インスは妻を信じていたし、とても愛していました。インスはわたしと同じように、不倫というものを許せない人でした。それなのに、ソヨンに惹かれていく自分をどうすることもできない。それでいて、その気持ちを愛だとは認めたくなかったのです。
きっとインスは今まで「情熱的な恋愛」をしてこなかったんだと思いますよ。
Q:ペ・ヨンジュンさんはいかがですか?
わたしは情熱的な恋愛をしましたよ(笑)。 この作品の中で不倫を体験し、愛や人生、裏切りさえも理解できるようになりました。
Q:「不倫の恋」に落ちてしまう役を演じられて、撮影前と今とでは人生観や結婚観、女性観は変わりましたか?
わたしはこれまでいつも自分の中に枠を作って演技をしてきました。そして人生さえその枠の中にはめこもうとしてきました。そんなわたしがこの作品を通してその枠を取り払えた。人生や愛についての理解の幅が広がったのです。だからこそ、今まで以上に『信じられる女性』とめぐり会いたいと思うようになったのです。お互いが信じて一生過ごせる『最後の愛』にめぐり合いたいと。
日韓合作について
Q:日韓合作の作品を家族(ファン)は待っていますが……。
(笑)次のドラマが決まっているので、今すぐとはいかないですが、ぜひ、挑戦したいです。韓国と日本だけでなく、アジア全体の文化交流のため共同作業で作品を作って行くことが、アジアの交流を深める道だと信じています。「アジアの合作」これは必ず実現しなければならないと考えています。
「ほほ笑みの貴公子」と呼ばれるだけあり、ペ・ヨンジュンは笑顔でインタビューに答えてくれた。映画では見せなかったあの笑顔だ。ところが『四月の雪』で演じたインスの話におよぶとその顔から笑顔が消える。まだ不倫の恋に苦しむインスの呪縛から解けていないのかと心配になったが、はにかみながら「愛」を語る姿にインスの影は見えなかった。礼儀正しくスタッフひとりひとりにあいさつを交わすペ・ヨンジュンには大スターでありながら謙虚さを忘れない誠実な人柄がにじみでていた。
『四月の雪』は9月17日より日比谷スカラ座ほか全国で公開。