『オペラ座の怪人』監督&プロデューサー独占インタビュー
取材・文・写真:FLiXムービーサイト
1986年の初演から約20年の時を経て、ミュージカル「オペラ座の怪人」がアンドリュー・ロイド=ウェバーのプロデュース、ジョエル・シュマッカー監督の元で完全映画化された。これまで「キャッツ」や「エビータ」を生み出してきた天才作曲家のアンドリュー・ロイド=ウェバー。彼の生み出したミュージカルの中でも最高傑作という呼び名も高い「オペラ座の怪人」。今回の映画化のために新たに作曲も行ったアンドリュー氏とそのアンドリューから直々に映画化を依頼されたジョエル・シュマッカー監督に話を聞いた。
■アンドリュー・ロイド=ウェバー(プロデューサー)
20年前では不可能な映画化
Q:「映画化することで、ミュージカルそのものを残すことができる」ということが、映画化を考えた理由の一つとして挙げられていましたが「一つの形として残したい」という思いは以前からお持ちだったのですか?
ずっと持ち続けていたよ。90年代に映画することは技術的に難しい部分もあったんだ。映画化されてしまったあとでも舞台に足を運んでくれる人がどれだけいるかわからなかったし、経済面から考えても大きな賭けになってしまうからね。だから約20年前に映画化することは不可能だったと言っても過言じゃないね。
16歳の声では舞台は無理
Q:舞台ではどうしても席が遠いため役者の細かい表情まで見ることができないのですが、映画では細かい表情の変化が見えることで、とてもドラマチックになっていたと思いますが、いかがでしょう。クリスティーンを演じたエミー・ロッサムはとても豊かな表情を見せてくれました。
まさに、そのとおりだね。そして今回の映画版では若いクリスティーンを起用することが出来て、本当によかったと思っているよ。原作の中でも舞台の中でもクリスティーンの年齢は16歳ということになっているけど、本当に16歳の女性を舞台に立たせることはできなかった。その年齢では声が成熟していないから、一週間に8公演も歌い切ることができないんだ。でも映画版ではエミー・ロッサムが16歳(撮影中に17歳を迎える)ということで、まさに原作どおりであったし、映画だから出来たことだったと思っているね。
■ジョエル・シュマッカー監督
シャンデリアの落下
Q:舞台ではファントムが、ラウルを愛してしまっているクリスティーンへの怒りから、シャンデリアを彼女に向け落下させるのですが、映画版ではちょっと違っていましたね。
舞台版では第一幕の終わりでシャンデリアが落下する。大きな出来事があって休憩に入るという演出の意図があったんだ。でも映画版ではその必要もなかったので、後半にシャンデリアを落とすことになった。ファントムはクリスティーヌに裏切られたことに腹を立て、オペラ座を火で包むことにした。その火事のきっかけがシャンデリアだったんだ。ファントムは怒りにまかせて、自分自身の世界も壊してしまうんだね。オペラ座は唯一のファントムの世界なのに。
映画ならではの演出
Q:映画では現在と過去が織りまぜられていて、映画ならではのいい作りになっていると思いました。そして舞台にはないエピローグがラストには用意されていましたね。
舞台も映画もオークションのシーンからはじまるよね。オークションでは猿のシンバルのオルゴールが落札されるけど、あれにどんな意味があったのか気になるだろう? 落札された後、どこに行ったのかって気になるだろう。舞台の観客は寛容だったが、ディテールにこだわる映画の観客なら知りたがるだろう。だからちゃんとフォローすることにしたんだ。そして一つの物語として完結させることにしたんだよ。
ファントムの過去
Q:舞台版では描かれないファントムの過去を映画版で描いた狙いは?
やはり、この作品をより楽しんでもらうためには、それぞれのキャラクターの背景がわかっていた方がいいと思ったんだ。キャラクターへの理解が深まれば、物語の理解も深まるしね。だからまずファントムの生い立ちを明らかにし、なぜオペラ座に住み込むようになったのか観客に知らせるようと思った。クリスティーヌが親を亡くしてどうしてオペラ座に来ることになったのか。彼女の初恋の相手とのエピソードやそれらすべてがわかった方が、物語に入りやすくなると思ったんだよ。
ミュージカル未経験
Q:ジェラード・バトラーは主要キャスト3人の中で唯一ミュージカルの経験がなかったということですが、彼の起用は監督にとって一つのチャレンジでしたか。
彼は実は高校生の頃、ロックバンドで歌っていたらしい(笑)。「それで、じゃぁ、アンドリュー・ロイド=ウェバーの前で歌ってみるかい?」とジェラード・バトラーに聞いたら、「うん、歌ってみる」っていうことになって、歌声を披露した。アンドリューはオペラっぽくない、セクシーでハスキーで声量のあるジェラードの歌声を気に入って、彼をファントム役に決めたんだよ。
Q:主要キャスト以外にもオペラ座の舞台にはたくさんの出演者がいました。彼らを束ねて、一つの作品を作り上げるのはとても大変なものだったのではないですか。
大変というより楽しかったね。想像していたよりもずっと楽しかった! どんなに複雑そうに見える映画でも、映画作りというのはシーンごとにワンショットで撮って行くんだ。その積み重ねだからね。むしろ大勢の豊かな経験を持つスタッフやキャストたちと一緒に仕事ができたことが楽しかったし、1870年の華やかな私たちだけのパリのオペラ座を作ることが出来て、それを皆さんに見ていただくことができたんだからね。しかも舞台だけではなく、舞台裏のたくさんの人や動物たちの喧騒(けんそう)を描けて、僕はとてもうれしかったよ。
『オペラ座の怪人』は1月29日より全国東宝洋画系にて公開。