ジャッキー・チェン来日独占インタビュー『香港国際警察/NEW POLICE STORY』
取材・文: 福住佐知子 写真:FLiXムービーサイト
ハリウッドで成功をおさめたジャッキーチェンだが、「ハリウッドでは、思いどうりのアクション映画がつくれない。観客に見せたいアクションは自分でつくる」と香港映画完全復帰に選んだのが『香港国際警察/NEW POLICE STORY』だ。シリーズの最高傑作ともいえる本作品のプロモーションで来日したジャッキー・チェンに単独インタビューをした。
■『タキシード』『メダリオン』は撮ってみるとイマイチ……
Q:大掛かりなアクションで、危険なロケが多かったと思うのですが、撮影中、現場での指揮をどのようにしていたのでしょうか?
現場ではみんな、やる気まんまんでした。現場のコントロールは、長年やってきたので僕は分かっています。どこが危険で、どこが安全だとか……。遊ぶ時は遊んで、遊んじゃいけない時は絶対遊ばせない。映画のことは僕が全部教えているようなものですから(笑)。それでも映画はギャンブルみたいなもので、たとえば『タキシード』なんか、自分では「イイかな」と思っていたのですが、実際撮ってみるとあんまり良くなかった。『メダリオン』もそう。撮る前は「スゴクいいだろう」と思っていたのに、実際撮ってみるとぜんぜん良くなかった。映画は、結果が分からないので難しい。
■丸々2日間、滅入っていた
Q:(ジャッキーが演じる)チャン警部が、部下を目の前で次々に殺されてしまうという印象的なシーンでの苦悩するあなたの演技に感動しました。あなたならではの役へのこだわり、どのような気持で演じられていたのですか?
本当に「そういうこと」が起こったという気持でやりました。僕が一番覚えているのは、撮影したシーンを見た時、涙が出てきてしまった事です。
演技で一番難しかったのは、彼女(チャーリー・ヤン演じるホーイー)のバースデーを祝うシーン。(義兄となるはずの彼女の最愛の弟も死なせてしまったことで)泣くんですが、涙は流せない。我慢しているんだけれども観客には泣いてるなと思わせる。バースデーの歌も歌わなくてはいけない。あのシーンはすごく大変だった。撮る前に色々考えて、ストレートに泣いた方がいいのか、泣かない方がいいのか……丸々2日間、気持ち的にはすごく滅入っていました。
■失敗したわけじゃない。まだ成功していないだけと言いたい
Q:チャン警部は部下を亡くした事で、喪失感に陥り、お酒に溺れてしまいますが、かつてあなたにもそんな経験があったのでしょうか?
長い人生の間には、何度もあります。チャンのようにはなりませんでしたが……子供の頃から父を見ていて、何事も「絶対あきらめちゃダメだ」と、失敗した時は自分に言い聞かせていました。自分は失敗したんじゃない。ただ、まだ成功していないだけだと。
映画業界で成功を収めていなかった時に、いろんな事を勉強して、いろんな事を身につけようとしました。チャンスは誰にもあります。めぐってくる時につかむことが大事です。
今の若者をみていると、親は大変な時代を生きてきたんだけれども今の子供たちはすごく幸福で、昔は行列して食べ物を貰ったりしていたのに、今はそんな事も無い。今の若者は、ちょっと両親や教師に叱られると自殺してしまう。
失敗やプレッシャーをぜんぜん受け入れられない。若い人たちに僕が言いたいのは、「失敗したわけじゃない。まだ成功していないんだよ」って。いい友達をたくさん作ること。そうすれば、友達が手助けしてくれる。僕自身も友達に助けられてきた。
■ジャッキーの弱点は?
Q:いつもパーフェクトなジャッキーですが、“弱点”を一つ教えて欲しえてください。
う~ん(ジャッキーは腕を組んで考え込んでしまった。)
ちょっと横暴なとこがあるかな。現場ではすごく横暴だから(笑)監督を怒鳴ったり、女優さんを叱りつけたり、やりすぎかなと思ったりもするよ。(笑)
今作は、好評を博してきたジャッキーの『ポリス・ストーリー』の中でも一番の出来栄え。アクションだけでなく、その演技力をも見せつけた感動作品に仕上がっている。「パーフェクトなアクションと素晴らしいストーリーで、すごく面白かったです」とジャッキーに伝えると「アクションとストーリー、どっちが良かった?」とジャッキー。「両方ですよ(笑)」共演のダニエル・ウーとニコラス・ツェーの熱演も見逃せない。「若い人たちにチャンスを与えたい」と言うジャッキー。ジャッキーの飾らない性格と笑顔。全身から発せられている“人を幸せにするオーラ”に触れて、インタビュー部屋にいた全員がハッピーな気分になった。
『香港国際警察/NEW POLICE STORY』は3月5日よりシネマメディアーシュほかで公開。