『逆境ナイン』玉山鉄二独占インタビュー
取材・文・写真:FLiXムービーサイト
島本和彦の人気コミック「逆境ナイン」が、『海猿』の羽住英一郎監督により映画化された。主人公の野球部キャプテン・不屈闘志を演じたのは、『天国の本屋~恋火』の玉山鉄二。廃部に追い込まれた弱小野球部を甲子園に出場させるために、どんな逆境ももろともしない不屈闘志を熱演した玉山鉄二に話を聞いた。
■24歳の高校生
Q:これまでとは一味違うコミカルなキャラクターを演じてみていかがでしたか?
撮影に入る前は不屈闘志のキャラクターに違和感がありました。でも実際に演じてみると、とっつきにくくもなく、思った以上にやりやすかったですね。不屈闘志というキャラクターを愛することができました。自分と似ているかと言われると、根本的な部分で共感できましたね。自分は筋を通したいタイプ。だから「しょうがない」という言葉は大嫌い。卑怯(ひきょうな)な言葉だと思っています。あきらめを意味しているじゃないですか。そんな部分が不屈と自分の共通点だと思いましたね。
Q:撮影当時24歳でしたよね。制服を着て高校生を演じるのは懐かしい感じでしたか?
7年ぶりなのかなぁ。
高校の時、僕はブレザーでした。中学は学らんだったから10年ぶりですね。
懐かしいけど、ふと我にかえると「なんで俺、学らんなんだろう」って(笑)。
■中学の時は陸上部
Q:玉山さんは野球部のキャプテンを演じられましたが、学生時代、部活はなにかやっていましたか?
中学生の頃は陸上をやっていました。10代の自分を振り返ると、今よりずっと冷めていましたね(笑)。いろいろな物事に疑ってかかっていたし、「青春」を経験していませんでした。だからこの映画で合宿生活をして、ある意味遅いけど、24歳で青春しちゃいましたね(笑)。だからこの映画の企画やスタッフの皆さんに感謝しています。貴重な体験をさせていただき、ありがとうございました!
Q:その合宿生活はどんな感じだったのですか?
僕が演じた不屈は野球部のキャプテン。自分がみんなをひっぱらないといけない、芝居をやりやすい環境を作らなきゃいけないと思っていました。周りと距離感を縮めたいと思ったし、ひっぱるとまでいかなくても、きっかけを作りたいなと。だからみんなで過ごすようにしたし、食事を一緒にとったり、会話をするようにしましたね。おかげで心の底から楽しみながら過ごすことができました。
■ロケで避難勧告がでる台風が……
Q:ロケは秋に三重県で行われたそうですが、映画は夏の甲子園を描いています。撮影中に苦労したことはありますか?
台風が……。3つぐらいきて、現場に避難勧告がでるぐらいデカイものもありました。でも撮影を中止するわけにもいかなくて、大変でしたね。日の出商がマイクロバスで乗り込んでくるシーンの雨は本物です。でも雨ってなかなかカメラに写らないから、ポンプ車でさらに水を降らせていました。夏は終わっているし、寒かったですねぇ。だから撮影が終わったらみんなで温泉に行きました。
Q:不屈闘志はとんでもない逆境に遭遇していますが、玉山さん自身、これまでの人生を振り返って、逆境に陥った経験はありますか?
僕って基本的にプラス志向なので、あまり逆境を感じたことがないですね。逆境でも逆境と思わないようにしているし、だから気づかないでまっただ中にいることも(笑)。「考えて足踏みするよりも、どうにかなるさ」って感じですね(笑)。
■「野球」or「かけがえのない女」
Q:クライマックスで「野球」or「かけがえのない女」の選択を不屈は迫られます。もし玉山さんが、「俳優」or「かけがえのない女」の選択を迫られたら、どちらを選びますか?
あまりハカリにかけることではないですよね(笑)。でも僕は……「俳優」かな。役者であることは自分にとってなくてはならないものになっていますからね。知らず知らずに体に役者であることが染み付いてしまっているというのかなぁ。普通に生活していて、誰かの発言や動作に「これは芝居で使えるかも」と思っている自分がいるぐらいですから(笑)。
Q:ラストの展開からすると、続編も期待できます。もし『逆境ナイン2』を作る話があったら、また不屈を演じてみたいと思いますか?
もちろん! また演じたいですね。不屈の愛嬌(あいきょう)のある部分が気に入っています。愛嬌(あいきょう)というのは、不屈がいないとある雰囲気が消えてしまう、なんか物足りないと思わせるところで、演じる上でもこの点に注意していました。
■女性の目線
Q:エンディング・ソングは岡村孝子の「夢をあきらめないで」ですね。
意外ですよね。僕はもっとコテコテの熱い曲なのかなと思っていました(笑)。でもあれだけ男たちが好き勝手やっているので、女性の目線で終わらせたいと思い、「夢をあきらめないで」にしたと監督は言っていましたよ。
Q:それでは最後に映画の公開を楽しみにしているファンの皆さんへメッセージをどうぞ。
ひとつの物事に対してがんばることがくすぐったかったり、恥ずかしかったり、一歩踏み出せないことってあると思います。でも、あるチャンスはその時にしかこないから、それを逃さないでほしいし、ひたむきにがんばってほしいと思います。そんな想いを込めた作品なので、10代の方には特に見てもらいたいですね! 自分が何をやりたいのか、わからずに悩んでいたり、やりたいことが見つからないような時、アクティブに動いて、アンテナを張って努力することを大切にしてもらいたいと思います。
記者の質問に言葉を選びながら、しっかりと落ち着いた口調で答えてくれた玉山鉄二。若々しい雰囲気を持ちながらも、じっくり考える姿は年齢以上の重みがあり、俳優としてこれから大成するに違いないと思われた。今後も公開作品が目白押しの玉山鉄二のさらなる活躍を期待したい。
『逆境ナイン』は7月2日より渋谷シネ・アミューズCQNにて公開。