『ストロベリーショートケイクス』池脇千鶴 単独インタビュー
死ぬほどつらい大失恋をしても生きていけます
取材・文:福住佐知子 写真:シネマトゥデイ
魚喃キリコの同名コミックを映画化し、4人のヒロインが恋愛や人生に思い悩む姿を描いた『ストロベリーショートケイクス』。大失恋を乗り越え、恋に恋する里子役に池脇千鶴、一途なデリヘル嬢の秋代役に中村優子、過食と嘔吐を繰り返す塔子役に岩瀬塔子、結婚に執着するちひろ役に中越典子がふんし、それぞれのヒロインを演じた。等身大のラブストーリーに挑戦した池脇千鶴に、役作りや自身の恋愛感などについて話を聞いた。
毎晩1人で晩酌
Q:どんなところに引かれて出演を決められたのですか?
脚本が送られてきて、読ませていただいて、「この映画を観たいな」と思えたので出演を決めました。
Q:原作と映画の違いはありますか?
原作は脚本を読んだ後に読んだのですが、とっても面白かったです。映画は原作の世界観を崩さずに、うまくエピソードが膨らんでいると思います。
Q:里子との共通点や相違点はどんなところですか?
似ているなと思うのは、里子は彼にフラレてしまって、「もう生きていけない、死のう」と思うんですが、それでも生きているんです。わたしも同じだなって思います。「大好きだから離れないで欲しいな。離れたらもう死んじゃう」と思うような相手に失恋しても、ぜんぜん生きてます(笑)。毎晩1人で晩酌(ばんしゃく)しているところも一緒ですね。里子は1人で生きていて、悩みがあっても、凛として生きているところがかっこよくて憧れますね。
恋愛に悩むヒロインたちに共感
Q:ご自身が演じられた里子以外のヒロインについてはどんな印象を持ちましたか?
秋代さんは切なすぎる。気持ちは分かるんですが、「楽しいって大切なことですか?」という秋代のセリフを聞いたとき、「楽しいことって大切だよ!」とわたしが教えてあげたくなりました。でも、自分で稼いできたお金をスーツケースにぽんと入れたり、彼のためだけに生きたりしているところはかっこいいですよね。塔子は1人で一生懸命プライドを持って、プレッシャーやストレスを抱えながら仕事をしていて、とても共感できます。女優という仕事も最終的には1人で仕事をしている職業なので、どこかで気持ちをすり減らしている部分は一緒ですね。ちひろの恋にすがって生きるというのも分かるんです。わたしも押し付ける恋愛をしたことがあるから、見ていて痛々しいと思いましたね。
Q:里子以外で演じるとしたら誰がいいですか?
里子はわたしを想定して書いてくださったと撮影後に聞きました。最初は、「里子とちひろ、どっちをやりたいですか?」と聞かれたんです。4人とも魅力的ですが、一番魅力を感じたのは塔子ですね。
本物のデリヘル嬢に話を聞いた
Q:映画の最初に里子が元彼にしがみついて引きずられていく衝撃シーンがありましたが、どのように撮影されたのでしょうか?
そのまんま、本当に引きずられました。めったに無い経験でした(笑)。引きずられて服が破けてしまうので、衣装さんが気を配ってくれました。
Q:里子は最初デリヘル(デリバリー・ヘルス)でアルバイトをしていますが、役作りで何かリサーチしたことはありますか?
実際にデリヘル嬢の方とお会いする機会があって、そのときお話を聞きました。役柄としては、ただ電話を受けるだけだったので、意外と簡単でした。あと、脚本に書いてあった通り“ちょっと甘い営業用の声”で演じました。
Q:実際にアルバイトをした経験はありますか?
一度もないんです。
急きょ小型免許をとった
Q:監督の印象について教えてください。
監督は4人のヒロインを抱きしめてあげたくなったとおっしゃっていましたが、わたしも同じ気持ちです。現場には監督の持っている独特の柔らかい雰囲気が満ちていて、信頼感を持って仕事ができました。監督も「好きに里子をやってくれてかまわないんだよ」と言ってくださったので、その言葉のまま自分なりの里子を演じました。
Q:ベスパ(スクーター)に乗るシーンのために免許をとられたんですか?
小型免許を取りました。50ccの原付でもよかったのですが、秋代さんを後ろに乗せるシーンで練習をしているとき、50ccより125ccのほうがしっくりしたので、撮影の1週間前に急きょ小型免許を取りに行きました。
女の子はみんな一切れのショートケーキ
Q:好きなシーンはどこですか?
ヒロインの4人が出ているラストの海辺のシーンです。「恋でもしたいっすね」って里子が言って、歌が流れるシーンが、鳥肌が立つというか……「ああ、いい映画だな」と思いました。
Q:『ストロベリーショートケイクス』というタイトルから受ける印象は?
女の子は甘くてもろくてみたいな意味もあるんですが、ショートケイクスっていうのはホールじゃなくて一切れずつなので、ひとりひとりが生きているという意味があると思います。
Q:この映画を観客にどんな風に観てもらいたいですか?
ここを観て欲しいと押し付けるつもりはまったくなくて、この映画をそのまんま感じてもらいたいですね。
「気負わないで生きることを大切にしています」と自身のモットーを語る池脇は、ヒロインの恋愛話に絡めて自分の恋愛についてもさらりと語ってくれた。さらに、「夜は1人で晩酌(ばんしゃく)してるんです……」と意外なプライベートも告白。キュートな笑顔が印象的なだけに、幼い印象を受けがちだが、実際はしっかりと自分の意思を持った大人の女性であることがうかがえた。女優としての存在感や演技力も抜きん出ている上に、気取らず自然体な素顔を持った彼女の今後の活躍からは目が離せない。
『ストロベリーショートケイクス』は9月23日より渋谷シネ・アミューズほかにて公開。