『プレステージ』クリスチャン・ベイル 単独インタビュー
達成したいことがある人間にとって執念は必要なんだ
文・構成:シネマトゥデイ
子役から着実にキャリアを築き、『バットマン ビギンズ』では新バットマンに抜てきされたクリスチャン・ベイルは、若手実力派俳優として確かな地位を築いている。最新作『プレステージ』では、無骨(ぶこつな)天才マジシャンにふんし、ヒュー・ジャックマン演じる、同じく天才的な才能を持つマジシャンと華麗なトリックを仕掛け合う。劇中に描かれている人間の執念や最高のライバルを演じた共演者のヒュー・ジャックマンについて、クリスチャン・ベイルに話を聞いた。
執念は人生における原動力
Q:最初に脚本を読まれたときの感想を教えてください。
最高の脚本だった。こういう映画はしばらく観ていないと思う。とてもユニークだと思ったよ。駆け引きがあって、予断を許さない展開がある。好奇心をかきたてられる、すばらしいキャラクターたち。そして究極は、大がかりな仕掛けを持つ最高のマジックが堪能できることだね。
Q:役作りはどのようにされたのでしょうか?
僕が演じるボーデンも、ヒューが演じるアンジャーも、お互いに引き付けられているというふうにしたかったんだ。でも、いつもと同じで、監督と十分に話し合い、脚本を読み、セットでは何も考えずに演じたよ。人物の背景を脚本から読み取っていれば、感情は自然に出てくるんだ。基本的に僕が演じた男は執着心が強い。厄介なほどにね。本当に人を愛すけど、その愛も執念なんだ。
Q:彼の執念はご自分と共通するものがありますか?
人間なら、ある程度の執念はあるよね。でも、自分とキャラクターを比較したりはせず、彼の中に自分を投入しただけ。執念というのは、とても魅力的だということに気付いたよ。あらゆる形で人生の動力源となるものだ。達成したいことがある人間には特に必要だよね。それと同時に、危険なものでもある。特に、このボーデンという男が持つ執念はね。
自分とは正反対のヒュー・ジャックマンについて
Q:映画では究極のライバルを演じたヒュー・ジャックマンとの共演はいかがでしたか?
ヒューと初めて会ったのはディナーの席だった。食事をしながら、脚本に目を通して話し合ったよ。僕は脚本を読んだ後すぐにボーデンを演じたくなったし、ヒューはすぐにアンジャーを演じたくなった。だから、お互いの役にすぐになりきることができたんだ。それぞれが役柄に、はまったということだけでなく、僕たちは、お互いに意見が一致しないという点で、パーフェクトなキャスティングだったと思う。
Q:それは今も同じですか?
そうだね。一致する必要がないんだ。それがこの映画のポイントだしね。だからといって僕たちの間にライバル意識があるわけじゃないんだ。ヒューは歌って踊れる素晴らしいショー・マンだ。僕にはできないことができる。それにとても穏やかで、いいやつだったから、一緒に仕事ができて楽しかったよ。劇中ではライバル同士だったけど、仕事が終わっても競争意識を燃やし続けるなんてことはできないよ。
Q:どのように撮影の準備をしましたか? 今まで役作りのために、体重を増やしたり減らしたりとずいぶん努力してきたようですが。
今回は体重コントロールをする必要がなかったから、ラッキーだった。もちろん、手の動きや身のこなし方なんか、マジシャンが何年もかけて身に付けることを数か月かけて勉強しなければならなかったけどね。
Q:今回『バットマン ビギンズ』のスタッフが再結成したわけですが、難しかったですか?それとも楽だったですか?
ノーラン監督のスタッフとまた仕事ができたことは楽だったよ。みんな、お互いの働き方を知っていたし、何より、信頼できる相手なんだってことを知っていたからね。その方が早く動けるから、そういう意味でも良かった。この映画にはそういう勢いが必要だったからね。
寡黙(かもく)でどこか陰のある神秘的なアルフレッド・ボーデンの役柄は、まじめでもの静かな印象のクリスチャン・ベイルにとって、はまり役だ。自身も「僕はボーデン役に合っていると思う。落ち着いて演じられたよ」と認め、この役柄をのびのびと演じきったようだ。そんなクリスチャン・ベイルが仕掛ける、解読不可能なトリックと魅惑のイリュージョンを堪能してほしい。
『プレステージ』は6月9日より日比谷スカラ座ほかにて公開。