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『ふぞろいな秘密』石原真理子監督 単独インタビュー

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『ふぞろいな秘密』石原真理子監督 単独インタビュー

自分に合う本当のパートナーは、どこかにちゃんといる

取材・文:福住佐知子 写真:秋山泰彦

50万部を越えるベストセラーとなった自叙伝「ふぞろいな秘密」が、著者の石原真理子、自らの監督によって映画化された。男と女が出会い、愛し合い、そして、別れが訪れる……。本作は世間から大きな注目を浴びているが、マスコミに興味本位で書き立てられ、さまざまな憶測を呼んでいることも事実。自らの過去を潔く告白することで何を伝えたかったのか、石原真理子監督の本音に迫った。

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初監督にかける思いと現場の様子

石原真理子

Q:監督を引き受けることになったいきさつを教えてください。

映画化のお話を聞いたのが、本が出て2週間後のことでした。映画化することにあたっては、“キャスティングの最終決定権を持ちたい”ということと、“脚本はチェックさせていただきたい”と2つのことを申し出ました。わたし自身が女優であるということもあって、どんな物語になっていくかということは一番気になるところでした。制作側から女性の視点から見た映画なので、「監督はどうですか?」とお話があり、最初は「それはできないです」とお断りしました。でも、2人のドラマがどのようにできあがるのかとても不安だったので、自分が監督すれば間違った方向にいくことはないと考え、引き受けさせていただきました。役者さんたちが自分のすべてを出していけるような監督になって、スタッフたちともスムーズに和気あいあいとやっていきたいと思いました。脚本もかなり書かせていただいて、その日その日のカット割りや演技指導も思慮し、やっと出来上がりました。

Q:キャスティングはどのような点を重視されましたか?

映画を作ることに対しての情熱、「この役をぜひやらせてください」という情熱を持った人を、1200人の応募者の中から選びました。

Q:撮られる側だった石原さんが撮る側に回ったことで苦労された点はありますか?

演技をこのようにやって欲しい、という情熱が深くあったので楽しんでやっていました。現場ではいつも動き回って、細かく指示していましたね。自分で動いた方が早いので……。小道具のあり方、作りまでチェックしました(笑)。特に、別れのシーンは重要だったので、音楽にもこだわりました。あのシーンは、脚本の段階からどんな風に監督するかということも考えながら作り上げていきました。カット割りも32カットありました。

Q:この映画を監督したことで何か変化は起きましたか?

現実というのは時間で動いていて、物事も前に進んでいきます。自分がその中にいて、苦しさばかりに気を取られたり、希望を断ったりしてあきらめたりするのは、もったいないんじゃないかと思うんです。物事を解決したり、処理したりして前向きに進んでいけば、物事をまた客観的に進められるんじゃないか、という思いがさらに強くなりましたね。監督業については、またお話があって、本にすごくほれて、その物語を伝えたいと思えばやりたいかも(笑)。

Q:撮る側と撮られる側とではどちらが性に合っていますか?

監督をしてみて女優さんも大変だなと、作品を表現する女優さんって偉いな、って。これからは監督という全体像を見る立場に立ったことで、もともと職人気質なわたしは、さらに全体の仕上がりに深い創作意識が出て、より深い演技をするようになると思います。違う分野の表現で、どちらも性に合っています(笑)。

過去の恋愛を見つめなおして

石原真理子

Q:自分の過去の一部を切り取ったことで、心の痛みなどは感じられませんでしたか?

映画化が決まったときからひとつの物語として客観的に見られるようになりました。自分が描きたかった部分は描き切れたと思います。主役が引き立つための脇役ということで、山置役(河合龍之介)の方にも細かく指示を出しました。

Q:ある恋愛が終わった後にアメリカに旅立ちましたが、アメリカはあなたにとってどういった場所なのでしょう?

魂を救ってくれた場所ですね。80年代はいろんな偏見もいっぱいあって、自分ではない自分を作られてしまい、危機を感じていたのですが、そこから救ってくれました。普通の人の生活をできたことがうれしかったです。

Q:あなたにとっての理想の男性像は変化してきていますか?

昔から、恋愛は知的な部分が合う人がいいですね。感謝し合う、尊敬し合う、というような本当の恋愛は頭でするものだと思っています。

Q:劇中に「欲しい物があったら、今握っているものを離さないと新しいものはつかめない」という印象的なセリフがありますが、あれはご自身の気持ちから出た言葉でしょうか?

前からよく、たとえで言っていたんですけど、1円、5円をつかんで、これしかないと思っていることってありますよね、離しちゃえば次に1億円つかめるかもしれないのに……。離したら、もっといいものがくるよ、っていうポジティブな考え方なんです。

Q:恋をして傷ついたことのある女性はたくさんいると思うのですが、そんな人たちに、人を信じ、傷ついた経験のあるあなたからのアドバイスをお願いします。

そんな経験も人生にとって大切だったからこそ、その人にめぐり合ったんだと思います。自分が悪いとか相手が悪いとかじゃなくて、成長の糧としての出会いだったんだと思うようにしています。パートナーとして将来ずっと一緒にいる人は絶対にいると思うので、希望を持ってほしいですね。独りの時間というのも大切なので、その時間は自分の趣味や向上心を養うために使えばいいと思います。だから、躍起(やっき)になって出会いを待つ必要もないと思いますよ。好きな人がいなくても、自分に余裕ができたときに良い出会いが絶対にあるという気持ちを強く持ってほしいです。

Q:そんな強い気持ちを持てるようになったきっかけは?

“一人の人間として、生きられた”というアメリカでの15年間が、自分の中ですごくプラスになっています。もともと慎重で物事を深く考えるほうなんですが、一度物事を決めると潔ぎ良いんです。そこで得た経験などがすべてプラスになっていると思います。

これからの石原真理子が目指す道

石原真理子

Q:石原真理子としてこれだけは大切にしていきたいと思っていることはなんですか?

わたしも世間の人たちと同じような経験をしているので、観る人が共感できる物語を世の中に出していきたいなと思っています。作っている人も観ている人もみんなが友だちだと思うんですよ。そんな見えないきずなを大事にして、お互いに成長していきたいと思っています。

Q:この映画をどんな人に観て欲しいですか?

すべての人に観て欲しいですね。大事な人が精神のコントロールを失ってしまうと、暴力に走りすべてを失う可能性があるので、「自分の中のコントロールだけはきちんとしてください」というメッセージがあります。また、良い恋愛をしたけれど別れてしまって、それがトラウマになってしまっても、その恋が全部ムダになったわけじゃなくて、前の愛を箱の中に入れてラッピングして、それはそれでよかったという恋愛の終わり方もあるという意味もあります。そして最後に、「自分に合う本当のパートナーは、どこかにちゃんといるからあきらめないで」というメッセージもあります。

Q:今後の活動は?

小説を書き始めています。お酒もあまり飲まないわたしですけどカクテルに絡んだお話です。恋愛も含めた情緒のある、心がほんわかする物語にしようと思っています。


清純派女優としてデビューし、注目を浴びてきた彼女が世間の非難を受けたつらい恋愛を経験した。その現実を受け止め、それを乗り越え、どのように成長してきたかを話してくれた。今まで漠然と抱いていた彼女へのイメージは払拭(ふっしょく)され、一人の女性として、魅力にあふれた素顔に出会うことができた。誰かを愛しく思う気持ちは、何にも変えがたいもの。石原監督渾身の初監督作品『ふぞろいな秘密』は、観る者に純粋な気持ちを思い出させてくれる作品に仕上がっている。

『ふぞろいな秘密』は6月16日より銀座シネパトスほかにて全国公開。

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