『吉祥天女』鈴木杏&本仮屋ユイカ 単独インタビュー
少しの危なさを持ちながらも男女の友情はあると思います!
取材・文: 平野敦子 写真:秋山泰彦
17歳の美少女に運命を狂わされていく人々を描いた、吉田秋生の傑作コミックを映画化した『吉祥天女』。その妖艶(ようえん)なヒロインを熱演し、これまでの役のイメージとは違う“大人の女”の顔も見せてくれた鈴木杏と、ヒロインとは対照的な素直な友人役を演じた本仮屋ユイカ。今、最も注目を集める若手実力派女優2人が、切なすぎるヒロインの生き方に対する熱い思いや仕事への情熱、お互いの印象などについて語ってくれた。
吉田先生の原作に興奮!
Q:この映画は吉田秋生さんのコミックを映画化したものですが、原作を読まれた感想を聞かせてください。
鈴木:わたしは台本を読んだ後に原作を読みました。ずいぶん前から「BANANA FISH」や「ラヴァーズ・キス」を読んでいて、その単行本の裏面の案内を見て「吉祥天女」の存在は知っていたんですが、なぜか読んだことはなくて……。お話を聞いた時は「あ、吉田先生の作品だ!」とちょっと興奮しました(笑)。
本仮屋:原作はすごくミステリアスというか、怖いという印象が強かったですね。自分がそのようなテイストの映画に出るということ自体に少し戸惑いました。でも、それと同時に、「わたしがそういう作品に出られるんだ!」という新鮮な驚きもありましたね。
Q:ご自分が“小夜子”の役を演じると思われましたか?
鈴木:最初に“小夜子”という役にちゃんと触れたのは台本だったんですが、まったく自分が演じるということが想像できなかったですね。役が決まったとき、「これはどうしたものか」と思って……(苦笑)。
Q:本人を目の前にして話しにくいと思うのですが、お互いの印象を聞かせてもらえますか?
鈴木:面白い人だなと思いました。わたしが今まで出会ったことがないタイプで、わたしにとってとても刺激的な人です。自分にないものをたくさん持っているし、仕事に対するスタンスとか、突っ走ってる感とか、仕事を大好きだと思っているところとか、似ているところもあるんです。でも、お互いの“色”が違うという感じがして、そういうところがとても面白いです。彼女は白とか水色とか……、黄色も入っているし……。優しい色だと思います。
本仮屋:わたしが「女優になろう」と思ったとき、すでに杏ちゃんはテレビに出て活躍をしていました。自分と同い年の小さな女の子が一生懸命仕事をしたり、進学したりしている姿にあこがれを抱いていたんです。実際に会って、とてもプロフェッショナルな人だなと感じました。また、何でも伸び伸びと軽々こなしているように見えて、実はとてもがんばり屋で、自分に対してすごく厳しい人なんじゃないかと思います。
Q:先ほど本仮屋さんは優しい色とおっしゃいましたが、鈴木さんご自身は何色だと思われますか?
鈴木:赤は好きなんですが、優柔不断だから多分赤じゃないですね。自分では“白”か“透明”でいたいなって思うんですが。居心地のいい色になっていればいいかなと思います(笑)。
同性を魅了する鈴木の色気
Q:魔性の女“小夜子”とご自身との共通点はありますか?
鈴木:まったく!
本仮屋:はいはーい! あります! 杏ちゃんと小夜子の似ているところは“色っぽい”ところ!
鈴木:え~っ、またまた~(笑)。
本仮屋:なかなか女の人が女の人に色気を感じるのは難しいと思うんですよ。たとえば大先輩の30歳とか40歳の方に対しては色気というのは感じやすいと思うんですが、杏ちゃんには異性だけではなく、同性もぞくっとさせる独特の色気があるんです。
鈴木:え~っ!
本仮屋:最初は杏ちゃんが小夜子という役を演じているから、そういう色っぽさが出ているのかなと思っていたんです。でも、この間杏ちゃんの誕生日会に行ったら、まだそれは健在で(笑)。人を引き寄せる色気というのは、鈴木杏と小夜子の共通点なんだと思いました。
鈴木:いやぁ~、自分に色気があるなんてみじんも思っていないので……。だから、小夜子ちゃんの話が来たときに、妖艶(ようえん)でミステリアスで色気もあって、人を翻弄(ほんろう)して……というような人と自分は「どうしよう、まったくかけ離れている!」って思いました。そこがこの役を演じるにあたって、一番の不安要素だったんです……。
本仮屋:わたしは杏ちゃんの色気にドキドキしていました(笑)。
男女間の友情について
Q:この映画の中では男女の友情というものは存在しなかったのですが、実際には男女の友情は存在すると思いますか?
鈴木:少しの危なさを持ちながらもあると思います。ただ、どこでどうなるかというのは誰にも分からないですよね。共演した勝地涼君とはお互いが小学生や中学生のころからの仲で、それこそ何回も共演して、何度も恋人役で共演しているのに、やはり友だち同士という感覚で、心を許せて恋愛話でも何でもできてしまうような相手なんです。
本仮屋:男女の友情はあって欲しい! きっとあるんじゃないかなと思います。わたしにはまだそこまで固いきずなで通じ合える人がいないので、これからが楽しみですね。
Q:最後にこの映画をご覧になる方へのメッセージをお願いします。
鈴木:話が複雑で、ちょっと暗い雰囲気もあるんですが、小夜子ちゃんもこう見えて思春期を生きている子なんです。小夜子ちゃん、由似子ちゃん、涼君という思春期の3人の中でさわやかなものができていればいいなと思ってがんばりました。ぜひ観てください!
本仮屋:すべてのキャラクターがとても魅力的で、小夜子と由似子という2人の女の友情が軸になっています。小夜子の悲しさやつらさというものもあるんですが、高校生が持つすがすがしさとか、いわゆる“青春”というものも感じられる作品になっているので、ぜひ劇場に観に来てください!
普段はあまり話すのが得意ではないという本仮屋ユイカも、大先輩の鈴木杏と一緒だとすっかりリラックスした様子で、2人は仲の良い姉妹のようだった。しっかり者の鈴木杏とおっとりとした本仮屋ユイカは、確かに鈴木が言うように一見“色”が違うように見える。だが、その根底にある純粋さや優しさというものは共通しているように見えた。これから先、この2人が、どのような色に自分を染めていくのか楽しみだ。
『吉祥天女』は6月30日より渋谷Q-AXシネマほかにて公開。